【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期_No.3】各劇団・座組のリーダーの行動・選択が演劇界の未来を決める
(1) まず紹介したい、『三方よし』の精神
◇読者の皆さんは、『三方よし』(さんぽうよし) という考え方/哲学をご存じでしょうか。これは元々、江戸中期から明治時代に栄えた近江商人が大切にした精神で、すなわち、
買い手よし (お客さんに喜んでもらう)
世間よし (商売によって、世の中をより良くする)
売り手よし (そして、自分にも利益がある)
という、商売にあたって自分だけではなく、相手や世の中も良くしようという精神です。
◇この精神は非常に意義深いものだと思っています。そしてこれは何も商売限定の精神ではなく、どの分野・どの物事においても、『相手よし、世間よし、そして自分よし※』を意図して行動した結果というものは、非常に多くの人が笑顔で居られるものになると思われます。
※三方よしは一般には『売り手よし、買い手よし、世間よし』と言われますが、意味をより明確化するため順番を変えました。
(2) 各劇団・座組が下した決断~行動の集積が演劇界を形成する
◇各劇団・座組がいかなる表現をめざすのか、またそのためいかに行動していくかは基本的には徹頭徹尾自由です。しかしその一方で、個々の劇団・座組が選択した結果、行動した結果の集積が小劇場界~演劇界を形成し、歴史が形成されていく事も紛れもない事実です。
◇ふまえると、ここで一つの結論が導き出されます。
各劇団・座組が活動の様々な局面でおこなう選択・行動について、もし各局面でとりうる選択肢が複数あるならば、(あるいは単一の選択肢であったとしても)、小劇場界~演劇界全体の事も考えた選択をとったならば、演劇界全体にとってもプラスになるという事です。
まさに前ページでふれた、『相手よし(お客さんや演劇界などすべての他者)、世間よし(演劇界)、自分よし』の構造です。
(3) 豊かな演劇界形成のためには、劇団・座組のリーダーの行動が重要
◇各劇団・座組の決断~行動の集積が演劇界を形成するのだとすれば、これはより具体的に言えば、各劇団・座組のリーダーがいかに行動するかが重要なことは言うまでもありません。リーダーの責任の大きさを強調するようで辛辣かもしれませんが、紛れもない事実です。
◇【1.5期発信_No.2】でふれましたが、物事の改善に取り組むには『プラス材料の増加』と『マイナス材料の低減』の2つの方向性が有用だと当プロジェクトは考えます。そこで『マイナス材料の低減』からの観点として、少々耳の痛いお話に聞こえるかもしれませんが、筆者が見聞きしてきた劇団・座組のリーダーによる行動の中で、演劇界全体のためにプラスにははならないのでは・・と感じる事例を次の項目で二つほど紹介したいと思います。
あわせて、当言及は批判を目的としてはいませんので、プラスアルファどんな行動があると演劇界にとってプラスになりそうか、の考察も加えています。
(4) おそらく演劇界にプラスでない、劇団・座組のリーダーの行動例
◇事例1:それまで複数のメンバーがいる劇団・ユニットとして活動していたが、リーダーの発意でリーダー単独の演劇ユニットに移行する。それ自体は自由としても、その際それまで所属していたメンバーに、リターンになる事を何も提供することなく所属を解除する。
⇒ 先行ページで紹介した『三方よし』の精神と照らし合わせると、これはやはり座組のリーダーの “一方よし” の状態です。報恩という意味合いだけでなく、元所属メンバーに出演機会の提供をする等々を行えば、演劇界にとって『三方よし』となるかと思われます。
◇事例2:公演参加者募集にあたり、稽古予定をよく精査することなく、ざっくりとしたしかし拘束度が高い稽古スケジュールを参加資格として提示する。
⇒ 少々判断が分かれる微妙な事例かもしれません。しかし、該当の公演に出演したいと思う方は、「参加資格」として提示された(でも実はざっくりの)稽古スケジュールに繰り合わせるべく、個人的な生活活動を調整する事でしょう。その調整の中には、当面の生活費のための仕事を処断する事も含まれるかもです。事前に精緻な稽古日程組みをしたうえで募集すれば、必要分だけ予定提示すればよく、募集者に好影響です。
(5) 人材を大事にすることが小劇場界~演劇界全体の成長・発展につながる
◇先述のとおり、各座組の活動は全く自由ですが、その結果として起こる事の中には、演劇界にプラスに働かないものもあります。今後の発信予定のテーマの一つですが、小劇場界全体を守備範囲として良化を目指すような組織だった存在が必要かも、と考えています。
◇一方で、各劇団・座組のリーダーの選択次第では、小劇場界~演劇界全体にとってもプラスになる要素を与えることも可能です。劇団・座組の行動選択の際に主軸となる精神は、やはり人材を大事にするという事だと思います。他の多くの業界で、ごく当然の位置づけとして人材の大切さが訴えられていることは見聞経験ありかと思いますが、これは業界の成長・発展と直結しているからに他なりません。
◇人材を大事にすることで、『相手よし(お客さんや演劇界などすべての他者)、世間よし(演劇界)、自分よし』という、演劇界の『三方よし』が実現すると当プロジェクトは考えます。
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