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【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期最終_No.6】必ず良化できる!小劇場界の成長が停滞している各要因と、その改善策の再まとめ


(1) はじめに_小劇場界の現状には、成長リミッターを解ける要素がたくさんある

◇私共【小劇場演劇製作の在り方改革 草の根PROJECT】は、当発信を持ちまして第1.5期プロジェクトを終了いたします。今後も引き続きプロジェクト第2期以降という形で、準備のうえ小劇場業界改善の提言を展開してまいる予定です。当PTはまだまだ課題は多いと自覚しておりますが、小劇場界ひいては演劇界の環境良化・成長の一助となるべく、粘り強く小劇場界~演劇界改革を提言していきたいと思っております。

◇当まとめは1.5期Projectの締めくくりとして、今期発信させていただいた内容のうち、

★小劇場界の成長のリミッターとなっている現状の課題・現況分析で見えてきた問題点
★上記個々に対し、当プロジェクトが考える改善策(改善に有用な分析含め)


につきましてピックアップのうえ再掲いたします。
まだまだ至らぬ我々ですが、小劇場演劇製作に携わる方をはじめ、すべての演劇関係者の方に少しなりともお役に立ちましたら幸いの極みと思い、まとめるものです。

(2) 取り組む前から「小劇場改革なんて無理だよ」と決め込むのは最大級の悪手

○課題:小劇場界・演劇界の在り方改革は客観的にも有用であるところ、取り組む前から「いや変えるなんて無理だよ」と漠然としたあきらめのムード・風潮があること。

◎改善策:小劇場界・演劇界も必ず変わりうるんだという意識を持つこと、漠然とした諦めの心境を持たないこと


◇筆者は生活費の便宜上、演劇活動をしながら長らく事務系派遣職に従事していますが、広く知られるとおりオフィスワークの働き方改革はこの15年で大いに推進されました (勤務時間帯の融通拡大、在宅勤務の普及等々、成果は多大なものがあります)。

◇しかし記憶にありますのが、約15年ほど前「在宅勤務なんて無理だよ」「オフィスワークの労働環境の悪さはみんな一緒だよ(つまり何も取り組まない前提)」といった声が聞かれた点です。実現したかどうかは、その結果が雄弁に物語っており、上記の発言は「愚痴」や「(実行しない)言い訳」の部類でしかなかったと言えます。

◇状況は全く同じで、もし小劇場界において演劇製作の過程に改善の余地を感じるも「そんなのできないよ」と最初から決め込んでしまいますと、何の変化も見込めない事となります。

(3) 抜本的に考える時期では ‐ 小劇場界で常態化した役者をはじめとする人材不足

○課題:小劇場界で常態化している、役者をはじめとする創り手の不足

◎改善策:一にも二にも、業界の創り手の増加を図ること。つまり、すそ野拡大の実践

▽創り手不足解消に向けての「障壁」と思われる現況:役者・演出者ほか、演劇製作者として稽古に参加するためのハードルが実は結構高く、参加できる方が限定的である点(本番直前の昼夜拘束期間の長さ 等々)

◇当プロジェクトは発足当初、『稽古の仕方改革 草の根プロジェクト』という名称で活動していましたが、筆者としては稽古改革は、小劇場演劇界ひいては演劇界の衰退防止~維持~成長のために、業界全体是非ともよく考えるべき問題だと捉えております。
昼夜連続の稽古期間の長さや平日日中からの稽古等々、稽古に参加できる条件のハードルを高く設定してしまうことは、ほぼイコールで創り手の増加を妨げてしまっていると当プロジェクトはかねてより考えております。

◇下記の発信(note)にて、問題点の分析や具体的改善提案等々、包括的にまとめております。
【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期_No.2】小劇場界~演劇界の成長のためには、創り手の増加が間違いなく不可欠

(4)各劇団・座組のリーダーの行動・選択が小劇場界(演劇界)の未来を決める

○小劇場界において普通に起きている様態の一つ:それまで複数のメンバーがいる劇団・ユニットとして活動していたが、リーダーの発意でリーダー単独のユニットに移行。それ自体はもちろん自由としても、その際それまで所属していたメンバーに、リターンになる事を何も提供することなく、所属を解除する。

◎改善策:労働市場に置き換えると、上記は「保障のない解雇」にも近い状態ですので、一定期間前もって告知を行う、あるいは元所属メンバーに出演機会の提供を一定期間継続する、等々の業界内で元所属メンバー救済のルールを設ける


◇上記は座組の活動形態の変更時に起こりうる、懸念がある様態の一例ですが、小劇場の歴史を形成しているのは、実は各劇団・座組が活動において選択・決断した一つ一つの事柄の集積です。これまでの小劇場界は、自身の活動における決断と、それが小劇場界全体に与える影響、という視点で考える経験があまりなかったように?思われます。
持続可能性のある演劇活動という意味で、自身の演劇的活動の選択が、小劇場界~演劇界にプラスとなっているかを考えあわせたうえ活動すべきでは、と当プロジェクトは考えます。

(5) 小劇場は商業演劇に進むための「前段」でなく、小劇場演劇独自の創作成果がある事を自覚・追及する

◇課題と改善要素:かなり多くの小劇場の座組・表現者の方はプロ志向で活動されていますので、ご自身の活動をやがて商業演劇や、映画・テレビなどのマスメディアへ展開していきたい方が多い事は十分理解できます。しかし一方、小劇場演劇には、このジャンルでしか出せない魅力があることを改めて再発見すべきだと思っております。
そうする事で、小劇場での活動をただの腰掛け的なものではなく、創る側にも観る側にも唯一無二の魅力ある表現形態だと再認知して活動することが可能だと考えています。

(6) 個々人の努力は業界に「足し算」で、業界全体の成長は業界に「掛け算」で寄与する点を(再)自覚する

◇課題と改善要素:個々がよい芝居を創り、より多く観客を呼べるよう働きかけることは、地道ですが不可欠な努力な事は言うまでもありません。言うなれば「足し算」的な努力です。しかし一方、業界全体を成長させることは 「掛け算」的効果があり、上記「足し算」的成果を倍掛けで増大することができます。小劇場界はここに刮目すべきと考えます。ビジュアル的につかんでいただけるよう、下記にて図解いたします。

【図解】個々人の努力は小劇場界に「足し算」で、業界全体の成長は「掛け算」で寄与する
※クリック/タップで拡大表示できます

(7) 追記:演劇業界の方々にとっても、デジタルスキルの習得は必ず有用

◇演劇活動や自身の座組の活動の一環として、ExcelやWord等々のデジタルツールを駆使する必要が生じた際、手こずってしまうというお話をなかなか耳にします。例として、コロナ禍において助成金申請が必要だった際、提出物として求められたExcelベースの書類に対し、「この作成スキルは表現者には必要ない」とおっしゃる方もおられました。

◇しかしずばり申しますと、デジタルツールを活用するナレッジやスキルは自身の表現活動にとって相当に有用な武器となると当プロジェクトは考えます。むしろ必須のスキルであるとさえ思っております。

◇その有用性は広範ですのでごく一例だけ利点を取り上げますと、もしExcelを駆使するスキルがあれば、ご自身や所属劇団・座組の見込み収支や実績収支を明示的に計算することが可能です。それにより、次なる方針や行動が何か客観的根拠に裏打ちされた選択をとる事が可能ともなります (行動選択のためのデジタルツールによる情報整理は、当然金銭面検討のフェーズだけではありません)。今後のプロジェクトで深く掘り下げる予定です。

(8) 第1.5期プロジェクトのおわりに

◇当プロジェクトは今後も、小劇場界~ひいては演劇界改革のため、今後も提言を続けてまいります。折にふれお伝えしておりますが、当プロジェクトは既存の小劇場界の否定や単なる批判を目的とはしておりません。新たな選択肢を増やし、小劇場界が成長拡大するあり方を追及する事を目的としております。

◇しかし、僭越ながらやや強いメッセージとしてお伝えさせていただきますと、現在小劇場界でご活躍されている方々から、小劇場製作改革について提言的な発信があまり見られない所は残念です(自分の認知不足かもですが) 。成長の見込みにくい小さなパイで活動を継続するのか、成長が見込める在り方を模索するのか、自分には一択と思えてなりません。

◇元々SNSベースの発信力がない身でしたので(汗)、当プロジェクトの活動は発信力の面はじめまだまだ課題が多いものですが、小劇場界全体のため尽力を継続してまいるつもりです。程なく「第2期プロジェクト」として、自分なりに面白いのではと思っている腹案を用意しております。

【小劇場演劇製作の在り方改革 草の根プロジェクト】森 将和


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