【ワットコッ】憧れのあの寺院へ!ユニークな壁画が残るアユタヤ後期の古寺
タイ国内の寺院について、いつも詳しくブログで紹介してくださっている「siam_manao」さんが絶賛されていて、古寺好き・壁画好きとしては見に行かねばならん!と思いながらなかなか機会に恵まれなかった寺院です。
🔽manaoさんのブログはこちら🔽
今回、ナンヤイのためにペッチャブリーへ行くことにしたのでやっと訪問することができました。
壁画のうち、釈尊に関することはmanaoさんが詳しく書いてくださっているので、このブログで触れていない部分を中心に書いてみようと思います。
「島の寺院」
正式な名前はワット・コ・ケーオ・スッタラームと呼びます。
manaoさんが書いてらっしゃるように、グーグルマップ上ではワットコッと書いてあるのでそれに合わせます。
水利が良く、海の近くにあるペッチャブリーはアユタヤ時代には重要な港湾都市で、西洋・東洋の色んな国の人々がやってきていたことが壁画を見るとよくわかります。
ラチャブリーを中心として交易が盛んだった、ドヴァラヴァティ時代から続いていたと考えられます。
ワットコッの壁画には1734 年に描かれたことが示されていて、アユタヤ時代後期・第二次アユタヤ陥落直前に建てられた古い寺院であることが分かっています。
この寺院は昔、周囲を川に囲まれており「島の寺院」と呼ばれていました。
古い地図(予想図)で見ると丸く囲ってあるところがワット・コッです。
寺院には王族から寄贈された船があって、そのことからも川を使って移動したり、仏事が行われていたことが分かります。
今はこの寺院はペッチャブリーに住む人もあまり訪れないくらいなのですが、昔はとても栄えていたのでしょうね。
壁画に描かれた星座
多くのタイの寺院では仏教の宇宙観【トライプーム】は本尊の後ろに描かれることが多いですが、このワットコッでは本尊の正面に描かれています。
ちなみにこちらでは降魔成道図が本尊の後ろに描かれています。
トライプームの頂点にはインドラとブラフマーを左右においた仏陀がいます。
その周りには美しい宇宙が広がっているのですが、注目したいのが星座が描かれていることです。
写真を見ていただくと分かると思いますが、トライプーム上部に丸が線でつながれて描かれています。
実はこの寺院は敷地内に野良犬がたくさんいて吠えてくるので、入り口付近で木陰で涼んでいたおじさんに助けを求めたところ、一緒に回って色々説明してくれたんです。
あれが馬で、竜でと言うのですがグーグル翻訳では限界がありきちんと理解ができなかったのが悔やまれます。
月のうさぎと太陽の孔雀
トライプームを中心に、左側にはうさぎの描いた月。
その下には月と太陽を飲み込んで吐き出すラーフの絵。
右側には太陽があり、くじゃくが描かれています。
「月のうさぎ」の話は、仏陀の前世物語「ジャータカ物語」の中でもとても有名な話で、児童書にもなっていますし、日本では今昔物語にも書かれています。
”森で仲良く暮らしていたうさぎ・猿・犬・カワウソが相談してバラモンに施しをしようと決めた時に、帝釈天がバラモンの姿となって地上に現れ、差し出せるものが何も無かった信心深いうさぎが、どうぞ自分の体を焼いて食べてくださいと火に飛びこみます。
そして、この行為を讃えた帝釈天が月にうさぎの姿を描き、天へと帰って行きました。”
というあらすじです。
太陽と孔雀の組み合わせは、ジャータカ物語では金色の孔雀のお話しの中で、孔雀が毎朝太陽がのぼると自分の身を守るために、太陽礼讃と仏礼讃の呪文を唱えるというシーンがあるくらいで、詳細は分かりません。
こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、ジャータカ物語は帝釈天が相手の菩薩心を試すために死に至らしめる話が多くて「そこまでする!?」って思ってしまうんですよね…
「命の天秤」っていうお話しもなかなかヘビーですので、気になる方は図書館で岩波少年文庫のジャータカ物語や、もっと詳しく知りたいという方は中村元先生のジャータカ全集を読んでみてください。
個人的には、誰かが菩薩心を起こした合図が「帝釈天の座が熱くなる」と表現されているのが、どういうところから来ているのかも気になります。
漆喰職人の街
ワットコッの切妻部分や入口には、とても緻密に作り上げられた美しい漆喰の装飾があります。
ペッチャブリーは昔から優秀な漆喰職人が多く、現在でもペッチャブリーだけでなくバンコクを始めタイ全土の寺院修復に携わっているそうです。
ナンヤイ博物館の旧ヴィハーンも漆喰仕上げでした。
ワットコッは少しわかりにくいですが、破風部分も漆喰なんですねー!すごい!
人間国宝的な人もペッチャブリーにはたくさんいらっしゃるそう。
交易が盛んだった場所には芸術が花開くといいますが、それが現代にも受け継がれているのが素晴らしい。
もっと後継者が増えればいいですね。
窓のない礼拝堂
この礼拝堂は窓がひとつもありません。
これは「マハーウッド」と呼ばれるアユタヤ時代の特殊なタイプの造りです。
この密閉された空間が、儀式において魔法の力を生み出すのに役立つとされています。
(詳細が分かれば追記します)
正面の入口には結界石とふたつのドア。
結界石の後ろにある、うっすらと残った絵がどんなものだったか知りたいです。
裏側にもふたつドアがあり、こちらには最近修復したのであろう絵が描いてあります。
窓が無いから、内部の壁画もこのように保存状態が良いのでしょう。
噂に違わずとても素晴らしい寺院でした。
朝夕のお勤めの時間に、この神秘的な空間で一緒に聞きたい!
ぜひペッチャブリー観光のひとつに加えて欲しい歴史的に重要な寺院です。
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