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梅雨到来!どこよりも詳しく東京六大学野球2021春季リーグを振り返ります!

こんにちは、シュバルベです✌︎('ω'✌︎ )

もう7月で暑い日が続きますね。東京六大学野球は5月29日・30日の早慶戦で春季リーグを終えました。早いものです。

開幕前、こんなnoteを投稿しました。

多くの方に読んでいただき、2,000以上のPVをいただきました。イイネも50個!ありがとうございます!!

開幕前の予想展望を書いたのなら、閉幕後の総括もないとやっぱり締まらんですよね。ということで総括編です。

まずは順位から。

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Big6.tv公式Twitterより

慶應大学、優勝おめでとうございます!!昨秋は早慶戦でまさかの連敗を喫し優勝を逃しましたが、今年は早慶戦前に優勝を決める圧巻の強さでした!

東京大学も悲願の勝利で連敗を64でストップさせました。嬉しい(泣)

続いて、投打の代表的な数値を見ていきましょう。と言ってもbig6さんの素晴らしいサイトに知りたい情報は全て載っているのでこちらをご覧ください!笑

最もチーム打率が良かったのは明治大学の.328、チーム防御率のトップは法政大学の2.28。意外にも優勝した慶應大学は打率.257で3位、防御率は2.33と2位でした。

参考として、投手ではK%とBB%、野手では出塁率と長打率をそれぞれ縦横の軸としたマッピングをこちらに貼り付けておきます。

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さて、各大学の戦いを振り返って行きましょう。

1.慶應大学

本当に優勝おめでとうございます!思えば開幕の法大戦で三浦銀二投手相手にノーヒットワンランされ最悪の立ち上がりでしたがよくそこから立て直しましたね。以降、8勝1敗で引き分けもなしですから如何に勝ち切れていたかが分かります。キャプテンシーの鬼こと福井章吾選手の元、チームとしての一体感は群を抜いていました。

リーグ戦後の大学野球日本選手権でもその強さは遺憾無く発揮され、見事優勝を果たしました。終始にわたり「陸の王者」の試合を展開していたように見えます。

以下、投打別に見ていきましょう。

1-1.慶大投手陣

エースの4年生右腕森田晃介投手と、2戦目先発の3年生左腕増居翔太投手の二人で7勝1敗。防御率ランキングでワンツーを取ったこの先発2投手の力が大きかったですね。

森田投手の特筆すべきはその制球力。打者139人に対して与えた四死球はわずかに4つ、2.8BB%は昨秋の9.8BB%から大きく良化しました。パワーアップした140km/h台中盤のストレートに加えカットやツーシームで的を外し、カーブをアクセントにする投球は現代NPB投手のトレンドとも近しいものがあります。

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2018年10月以来の被弾を明大戦で喫しましたが、6試合34イニングを投げて被本塁打は1本のみ。昨年は失点が少なくても早いイニングで継投をさせられるシーンが目立ちましたが、今年は先発した5試合中4試合で6回以上投げるなど監督からも厚く信頼されるエースとなりましたね。

左のエース増居投手が優れているのは奪三振能力

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この春は30イニングで30奪三振。171cm/68kgと小柄ながら、出所の見えづらい投球フォームから繰り出される140km/h台前半のストレートの伸びは素晴らしく、制球力の高さもあってマネーピッチとなっています。昨年までは1試合しか先発登板をしていませんでしたが、今春は5試合5先発しリーグ最多勝の4勝。最終戦の慶早戦2回戦以外は全て1失点以内とゲームを作りました。

リリーフでは新クローザーに就任した3年生右腕の橋本達弥投手の台頭がありました。

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リーグ戦直前の増居投手・生井投手のインタビューで二人揃って注目選手に挙げていましたが、伸びのある140km/h台中盤のストレートと鋭く落ちるフォークボールを軸に13イニングで14奪三振を奪いました。8回にマウンドに上がり、9回まで2イニングをクローズするイニング跨ぎも5度あり全て成功。メンタル面の強さも伺えます。全日本でも最後のマウンドにいたのは橋本投手でした。秋だけでなく来年に向けてとても良い経験を積めたシーズンだったでしょう。

昨年のクローザーで3年生左腕の生井惇己投手はストレートの球速が増し、慶早戦では150km/hの大台に乗りました。しかしシーズン通して制球に苦しみ、打者34人に6四死球。5試合の登板で0に抑えたのは2試合で決して納得のいくリーグ戦ではなかったと思います。それでも最終戦の慶早戦では満塁のピンチを抑えリードを守り抜くなど、昨秋のリベンジを果たした精神力は今後の糧になるのではないでしょうか。

3年生左腕の渡部淳一投手が慶早戦3イニングのロングリリーフを4奪三振の無失点で切り抜けるなど、開幕前に想定された先発2本柱+ストレートゴリ押しの強力リリーバーsで勝ちゲームを着実に拾う堅実な野球ができましたね。

1-2.慶大野手陣

開幕前に穴のない野手陣と書きましたが、まさにその通りになりました。規定打席到達した7選手のうち5人が打率3割越え。もらった四死球の数は52個あり、これは次点の早稲田大学の37個に対し10個以上差をつけています。ホームラン数9本、さらにチームとしてのエラーは3つだけでこれもリーグ1位。攻守にレベルの高さが伺えます。

ドラフト会議の目玉の一人と噂される4番ファーストに座った正木智也選手は、4本塁打

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打率こそ2割半ばだったものの、ホームランと打点の二冠に輝き、四死球数も10個でトップ。昨年とかなりフォームを変え、ヒッチを入れるようになり速球への対応がどうかなぁと思っていましたが、しっかりと4番打者としての役割を果たしました。ベスト9には選ばれませんでしたが、ただ一人しか選ばれない「ファンが選ぶMVP」の受賞おめでとうございます。

リーグ王者が戦う全日本大学野球選手権大会では最高殊勲選手賞の栄誉を勝ち取り、来るドラフトに向けて最大限のアピールを見せました。今からその日が楽しみですね。

四年生で言うと、キャッチャーで主将の福井章吾選手も攻守に存在感が光りました。

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リーグ戦序盤は8番で起用されましたが、立教大学戦からクリーンアップに繰り上がると17打席で9出塁。主砲正木選手の前に塁に出る役割を見事に果たしました。天性のキャプテンシーでチームを引っ張る様は野球という枠を超えて記事にもなるほどで、これからの行方が楽しみな選手です。

3年生のポジション争いも熾烈で、キャッチャー登録ながらショートのレギュラーに定着し3割を打った朝日晴人選手はベストナインに選出。同じ3年生の下山選手を三塁に戻させる形となりましたが、その下山悠介選手はチームトップの打率.350でともにベストナインを獲得するなどチーム内での競争は秋も目が離せません。

両翼も四年生の橋本典之選手が春はレギュラーでしたが、三年生の萩尾匡也選手山本晃大選手も控えています。プロ入りした柳町達選手から二年時にしてセンターのポジションを奪った俊足の四年生渡部遼人選手は全試合にセンターで出場し、今年は2本塁打とパンチ力も発揮しました。広い守備範囲は六大学でも屈指のレベルです。

昨年はファーストを守りクリーンアップを担った廣瀬隆太選手がセカンドに回り1番打者に抜擢されたのは意外でしたが、右打者ながら足は速く長打もあるので先頭でチャンスを作るという意図があったのかもしれません。二塁打6本はリーグ最多で、打率.318は昨秋に続く二季連続3割越え。持ち味は十分に活きていたと言えます。

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網羅的に書きましたが、これだけバリエーションの多い選手がいると得点の取り方が幅広いなぁと思わされるリーグ戦でした。

日本選手権でも自慢の打線の爆発、投手陣の粘り強いピッチングと投打が噛み合い、リーグ戦同様の戦いができて34年ぶりの優勝!本当に強い!

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おめでとうございます!!!!!!!!!!!

2.立教大学

続いては2位の立教大学です。正直今年の春は下位予想でした…すみません(土下座)。中川颯投手と中崎響介投手が卒業しほぼリリーフ経験しかない投手陣に、野手はセンターラインから捕手・遊撃・中堅の3ポジションが卒業。それでいながら2位につけたのは素晴らしい。

大阪桐蔭の最強世代と言えば、根尾・藤原・柿木・横川の4人のプロ野球選手を輩出した2019卒組ですが、その最強世代の現三年生を中心に新しい力の台頭でチームは強くなりました。

2-1.立大投手陣

不安視された投手陣の中で、この春最もイニングを投げたのは二年生の池田陽佑投手

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8試合に先発し33イニング超のイニングを消化しました。防御率は3.51とまずまずですが、与四球7個と制球の良さが光り無駄なランナーを出さなかった点は強みでしょう。

毎試合5回に満たないショートイニングを全力で抑えに行く"ショートスターター"的な起用法は斬新なものでしたが、昨年も立大は中崎投手を同じように5回前後で小刻みな継投に切り替えていく運用を見せていました。今年は昨年以上にそれがハマったように思います。

リリーフ陣は四年生右腕の栗尾勇摩投手と三年生左腕の宮海土投手の2人が大車輪の働き。戦前にもこの2人のフル回転は予想されていましたが、栗尾投手が9試合17イニング、宮投手が8試合15イニングを投げました。

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特に宮投手は昨年よりさらに球速がUPし、140km/h台中盤もマークするようになりました。左投手かつ今年の神宮球場のガンですので、来年のドラフト候補に入ってくるでしょう。前半5試合は圧巻の投球でしたが、慶大・明大戦では失点を喫しており、スタミナが今後の課題となりそうです。

新たな戦力としては昨年のフレッシュリーグで登板していた二年生左腕の野口裕斗投手、三年生右腕の島田直哉投手らがリーグ戦初出場を果たしました。

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野口投手は8試合で自責1。肩周りの柔らかさを活かすフォームによって打者のタイミングを外し打ち取るスタイルで、先にあげた栗尾・宮投手同様にフル回転しました。

勝ち進むにつれてどの投手も気迫を全面に出し、抑えた後は雄叫びを上げながら帰ってくる姿が目立ちました。チームとしての雰囲気が良く、先発〜リリーフ一丸となって戦う様が見て取れ気持ちよかったです!

秋は池田投手の蓄積疲労も考慮してもう一枚先発を立てたいですね。野口投手筆頭に三年生〜二年生の台頭が待たれます。

2-2.立大野手陣

投手以上に新戦力が台頭したのは野手陣です。特に山田健太選手・宮﨑仁斗選手らがいる黄金世代の三年生の活躍が目覚ましかったですね。

まずはセンターのレギュラーを勝ち取った道原慧選手

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ランニングホームランを放つなど脚力はリーグトップクラスで、打撃でも3割到達。彼を塁に出して、足を絡ませた小技で2番井上剛選手が進塁させ、クリーンアップでホームに返す、というのが今年の立教大学の得点パターンとなりました。

4番に座る山田健太選手も三季ぶりの打率3割越え。

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ホームランも通算6本と強打の右打者で、二塁守備も安定感が出てきました。ホームラン以外は全て単打という点は気になるものの、5番に座る四年生東怜央選手の好調もありチームバッティングが目立った印象です。守備時に投手や他の選手に声がけをする姿も目立ち、次のチームリーダーとしての自覚をかなり持ってプレーしているのかなと思います。

打順の中でキャプテンの太田英毅選手東怜央選手の2人が数少ない四年生でしたが、特に東選手の覚醒っぷりは凄まじかったですね。打率.364で3本塁打。狙い球に対してはフルスイングをかけ、体格も相まって左右の差はあれど昨年の4番打者である三井選手の姿に重なって見えました。

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三年生が打線の軸となる打線は今後も脅威で、秋〜来年にかけても立教大学は打ち勝つ野球を見せてくれるのではないでしょうか。

3.明治大学

立教大学とは0.5差で惜しくも3位となった明治大学。チーム出塁率・長打率ともリーグトップの強力打撃陣を擁した一方、投手のやりくりには苦労しました。

チームとしての開幕カードの東大戦で二試合28点と大量点を挙げ、早稲田・法政含め下位3チームには5勝1敗と圧倒しましたが、慶應大学に連敗してしまったのは痛かったですね。スローガン「逆襲」は秋に持ち越しとなりました。

3-1.明大投手陣

明治のエース竹田祐投手は全カードの初戦に先発。5回6失点を喫した慶應戦以外は全て7イニング以上を3失点以内に抑える安定感を見せました。ストレートのアベレージが上がり、終盤でも145km/h前後をマークするなど投手としての完成度がかなり高くなったと感じます。

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年明けに武田監督は「2〜3キロ、アベレージを上げていかないといけない」(2021年1月10日付週刊ベースボール)と話していますが、明治のエースナンバー11に相応しい投手になりましたね。

2戦目の先発は最後まで決まらず、4人の投手が先発しました。本当は四年生の磯村峻平投手と髙橋聖人投手のどちらかに一本立ちして欲しかったと思うのですが、どちらも調子が上がらず苦戦を強いられました。

最終戦では一年生左腕の藤江星河投手が抜擢。強力打者の揃う立教打線を5回1失点に抑え、初先発初勝利を挙げました。

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後述する野手同様、一年生でもどんどん起用していくサバイバルのレギュラー争いは投手にも適用されています。

秋に向けては2人目の柱の台頭が必須で、夏に誰がその地位を奪取するかチーム内競争は激化しています。この春6試合8イニングをリリーフ登板した三年生右腕の渡部翔太郎投手と、5試合6イニングに登板した二年生左腕の石原勇輝投手も今後の起用によっては前で投げることがあるかもしれません。

3-2.明大野手陣

今年の明大野手陣は打率ランク5位までに4人がランクイン。打ちまくりました笑。チーム打率.328は異常です。

チーム内で同率の.500を記録し首位打者に輝いたのは四年生陶山勇軌選手と三年生山田陸人選手の二人の左の巧打者。

陶山選手はリードオフマンとして1番打者に固定、昨秋も打率.348と打っていましたが今年は自身初のホームランも含め当たりが止まりませんでした。打ち出の小槌のごとく、とはまさにこのことでしょう。俊足を活かし5個の盗塁も決め、フィールドで常に走り回る選手でした。

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サードのレギュラーを掴んだ三年生の山田選手は最終戦で二安打を放ち.500に乗せるなど勝負強い打撃を見せました。逆方向の三遊間を抜く巧打も目立ち、32打席3三振とバットコントロールには際立ったものがあります。

共にクリーンアップを担う四年生の丸山和郁選手はこれまで苦手と語ってきた打撃で打率.357と成長を見せました。

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脚を活かした内野安打だけでなく、センター〜引っ張り方向にも強い打球を打てています。打撃以上に守備での貢献は大きく、センターとしての守備範囲の広さは間違いなくリーグ1です。左中間・右中間に抜けそうなあたりを幾度となくアウトにし、相手チームの得点を封じていました。

昨年は正捕手争いを演じた四年生植田理久都選手篠原翔太選手は、今年5番・6番に座り2人で13打点。植田選手は31打席で3三振、通算でも77打席で8三振と優れた選球眼を発揮しています。最終カードの立教戦ではベンチメンバーとなりましたが、常にベンチの最前列でチームを鼓舞する姿はチームに勇気を与えるものでした。篠原選手は3本塁打と長打力を発揮。ともに充実したシーズンを送りました。

そして、今年の明治大学の一年生の台頭は欠かせないでしょう。

私が18年神宮大会広陵vs星稜戦で現地で見て奥川投手から一年生でマルチヒットを放った宗山塁選手

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当時は3番セカンドでしたが、今年の抜擢ではショートを任され無難な守備を披露。打っては初ヒットどころか初ホームランまで。昨年レギュラーは西山虎太郎選手でしたが、1年で奪われてしまう辺り明治のチーム内競争の熾烈さを感じさせます。

捕手でも作新学院出身の一年生横山陽樹選手が終盤にスタメンマスクを被りました。高校時代は捕手も外野ものユーティリティ的運用で、今年も最初はレフトでの出場と便利さは健在です。

最上級生の意地、一年生の台頭、三年生首位打者ーー。こうして部内競争するからこそ明治大学は現在数多ある大学の中でプロ野球選手輩出人数トップの座を勝ち得たのだと感じさせる今春でした。

4.法政大学

4勝5敗、さらに東京大学に敗北を喫するなど忸怩たる思いがあるであろう法政大学。戦前の予想では多士済々の磐石投手陣で優勝争いに食い込むかに思えましたし、実際投手陣の指標は防御率一つ取ってもリーグトップと悪くないです。が、4位に終わってしまった要因は野手陣でしょう。失策8はリーグ5位タイ、記録にならないエラーも多く、らしくない試合が続きました。

先制されると1勝5敗。ビハインド時のチームのムードの悪さという点については主将・副将とも語っており、チームとしても纏まりきれてなかったシーズンだったのではないでしょうか。

それは三浦投手の次のコメントに物語られています。

ーリーグ戦全体のベンチの雰囲気は
優勢の時はすごく良かったです。劣勢の時はすごく悪かったです。
ー最終戦を終えてチームで話したことなどは
試合でどうこうというよりも、練習の中のグラウンドでの姿勢とかについてです。例えば、集合時間を守る、グラウンドでは走るとか私語をしないとか、そういう基本的なところを見直しました。
(2021年6月5日付スポーツ法政より)

では投打を見ていきましょう。

4-1.法大投手陣

エース三浦銀二投手が完全復活し、全ての球種でストライクを取れるコマンドはリーグ屈指です。

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175/80と決して体格には恵まれていませんが、重心の低いフォームから繰り出される数多くの球種でゲームを作り、今シーズン初登板では優勝校の慶應大学をノーヒットに抑えました。明治大学戦の6回3失点以外の全ての試合を7回2失点以内に抑え、投球イニング39はリーグ最多です。

三振はイニング数を上回る44、四球の数は14とやや多いですがリーグ戦が進むごとに減っていき修正力を見せました。特に大きなカーブはこれまで投げている印象がなく、カウント球として有効に使っていたのは同リーグの森田投手や竹田投手の影響でしょうか。

先発二番手を担った150km/h左腕の山下輝投手は新たな強みが見えたシーズンでした。

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昨年はリリーフ登板のみでしたが、今春初先発をすると5試合32イニングを投げ防御率2.25。与四球7とイメージ以上に制球は良く、球速がクローズアップされがちですが本質的にはスライダーとカットの変化球を得意とする投手という印象を受けました。東大戦含め3敗してしまった悔しさを秋にどう払拭するか、マウンド上の立居振る舞い含めて注視したいピッチャーです。

リリーフでは古屋敷匠眞投手が6試合8イニングに登板。

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150km/h前後の重いストレートを軸にしたピッチングですが、与四球7と制球に苦しみ、またランナーを出してからのピッチングという点で力を発揮し切れませんでした。全試合でランナーを出してしまい、速球派リリーバーとしてもう一皮剥けて欲しいところです。

四年生の平元銀二郎投手、二年生の尾﨑完太投手武冨陸投手といった左腕の好投手も少ないイニングを分担していますが、彼らが本格的に投手陣に割ってくると秋〜来年以降も楽しみになってきます。

リーグ戦前に私は法政大学投手陣を評して「ソフトバンク級」と書きましたが、奪三振率はリーグで群を抜いています(26.5K%で、リーグ平均は18.6K%)し、チーム防御率2.28もリーグトップです。高い投手力を活かすためにも次に触れる野手陣の奮起が求められるでしょう。

4-2.法大野手陣

今春はやや足を引っ張ってしまった感のある野手陣。チーム28得点はリーグ5位で1位の明大58得点に比べて半分以下の得点力となっています。四死球25は東大よりも4つ少ないリーグ最下位で、チーム出塁率は3割を割ってしまいました。

打撃で最も光を放ったのは3番に固定された三年生の齋藤大輝選手でしょう。

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打率.342、満塁弾を含む3本塁打とパンチ力もあり、盗塁も5個決めています。憧れの選手にはスワローズ山田哲人選手を挙げ、自身もセカンドを守る三拍子揃った選手。一年時からリーグ戦で打席に立つなど期待されてきましたが、この春に開花したという形です。

副キャプテンの岡田悠希選手は昨秋に続いて2本塁打を放ち、打率.278ながら出塁率は.380。

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42打席で6つの四死球をもぎ取っています。三振は8個と決して少なくないですが、ホームランも打てて出塁能力も高い岡田選手は法政大学の顔としてもっと目立つべき選手でしょう。

また、サードのレギュラーを取った中原輝也選手は10試合31打席に立ち打率.333、三振も3つに抑え6番~7番を担いました。しかし、中原選手の今シーズンの打点はわずか1。ここに法政大学の課題が現れているように感じます。

上に挙げた齋藤・岡田・中原の3選手以外で打率.250以上打った選手は代打起用が中心の諸橋駿選手しかおらず、本塁打という点を見てもチームで齋藤選手の3本、岡田選手の2本、三浦投手の1本(!)の計6本にとどまっています。

守備面でも記録にならないミスが多かったように感じたのがこの春の法政大学でした。両翼からの返球、内野の挟殺プレー、投内連携。こういった基本的な守備のほころびから失点してしまうケースが散見されました。投手力はリーグでも屈指の物なので、秋の順位は野手陣がどれだけ力を発揮できるか次第でしょう。

5.早稲田大学

昨秋の王者早稲田大学はこの春まさかの3勝6敗1分けで5位。勝ち点3.5と苦しい試合が続きました。投手の防御率は3.83でリーグ5位、チーム打率も.217でリーグ5位。

いろいろな要因はあるでしょうが、開幕カードの東大戦で躓いたことが精神的にも大きかったのかもしれません。1試合目は勝利を収めたものの6点リードから5点を追い上げられ、6-5と薄氷の勝ち。2試合目は0-0のスコアレスドロー。2カード目の立大戦で連敗を喫するなど終始勢いに乗れなかったシーズンでした。

5-1.早大投手陣

開幕前に記載したように早大の投手は先発の二本柱に負うところが大きかったのですが、2人そろって本調子とは言えないシーズンでした。

まず第1戦を任せられたエース徳山壮磨投手

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3勝はあげたものの、奪三振率・与四球率ともに過去最低で、防御率3.54。立大戦の1回戦では3回6失点と打ち込まれてしまいました。試合を観ていても、彼本来の伸びのあるストレートがあまり見られず、球速も140km/h前半どまりという試合が続きました。早慶戦1試合目では先発を外され、2試合目のリリーフで3イニング投げるという起用については色々あったのだと思いますが、徳山投手がシーズン通して本調子とはかけ離れていたことだけは間違いないでしょう。

同じく4年生右腕の西垣雅矢投手は、この春勝ち星をあげることが出来ませんでした。

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防御率は3.41、34イニング投げて29三振。試合を観ていると投球内容的には徳山投手よりむしろいいピッチングを見せていましたが、打者の力量を考えるとシーズン3被弾は痛かったですね。勝ち星は野手の状態にも大きく左右されるのでそこまで個人的には重視していませんが、やはり西垣投手クラスのピッチャーが5試合に先発して0勝というのはチームとしてのムードに多少なりとも影響してしまったのかなぁと思います。

チームのクローザーとして起用された山下拓馬投手はリリーフで出場すると5試合6イニングを1失点で安定。

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早慶戦の2試合目でまさかの先発に抜擢され4イニング2失点、秋の起用法がどうなるか注目です。徳山・西垣の二投手が本調子であればダブルエースで山下投手を後ろに固定できますが、この春の調子のママだと山下投手の役割は変わってきそうです。

四年生以外の投手にもリリーフで登板機会が与えられました。三年生の変則左腕の原功征投手は、リーグ戦初登板となった東大戦では1アウトも取れず2つの四球を許し苦いデビュー戦となってしまいましたが、早慶戦で2試合とも出場し打者5人を完璧に抑えました。

徳山・西垣・山下と主力3投手がいずれも右腕ということもあり、秋は左腕の原投手の更なる活躍がみられるのではないでしょうか。

5-2.早大野手陣

野手に関してはメンバーは揃っていたしクリーンアップを筆頭に力も個々人では出していたのですが、打順・巡り合わせといったところで苦しんでいた印象です。

クリーンアップを担う四年生の岩本久重選手、三年生の蛭間拓哉選手ともにシーズン3本塁打で打率も3割越え。特に蛭間選手のスイングの速さと打球の速度は既にリーグトップだと確信できるものです。岩本選手は徐々に調子を上げて、最終カードの早慶戦で3割に乗せました。ホームランも早慶戦で放っており、大事な試合での強さというのは岩本選手の長所でもあるでしょう。

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トップバッターに起用されている鈴木萌斗選手も打率3割を記録。

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盗塁も5つ決めています。初球の難しいボールに手を出してしまい凡退する淡白な打席をどれだけ減らせるか次第で、さらに出塁を増やすことが出来るでしょう。

四年生の野手陣が軒並み結果を残した一方、昨年一年生で起用された野村健太選手熊田任洋選手は苦しみました。野村選手は大不振で25打数1安打。熊田選手はホームランこそ1本放っていますが打率.167。下位打線でチャンスを作り上位に回していくことが出来なかった点は、今年の早稲田大学の得点力に影響してしまった部分かもしれません。

今後に向けての光としては、二年生の生沼弥真人選手が開幕戦でスタメンを勝ち取り初安打を記録したこと、一年生の吉納翼選手も代打で5試合に出場するなど下級生で早くから神宮を経験できていることです。上位打線はすでに出来上がっているので、下からの突き上げがチーム内で加速すれば再度上位に上がる芽はあります。

昨年の早川隆久投手のように流れを呼び込む圧倒的な投手は早々出ませんが、ラインナップされる選手のネームバリューから言えば優勝争いして然るべきだと思います。秋の逆襲に期待ですね。

6.東京大学

やっときました、東京大学。今春は1勝と1分で勝ち点1.5をあげることができました!!!すごい!!!64連敗で止まった試合の詳細については以下noteに書いたので割愛させていただきますが、投手・野手の基本的な指標は昨年とほとんど変わらない中で今春の戦いぶりは素晴らしかったと思います。

6-1.東大投手陣

東大投手を牽引するのはエース井澤駿介投手

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7試合29イニングに投げて防御率6点台と見栄えは良く無いですが、立大との1回戦で7回1失点、法大には7回3失点とリーグ戦が進むにつれてゲームメイクできるようになっていきました。29イニング20四死球は多すぎ、5本塁打も多すぎますが、19奪三振は昨秋よりペースが良く成長の跡も見られました。東大勝利の日はプレッシャーのかかる8回・9回を0に抑えマウンドにできる歓喜の輪の中の中央にいました。この経験はプライスレスでしょう。

2番手先発は井澤投手と同じく三年生右腕の西山慧投手

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1試合での最長イニングは4.2イニングとショートスターター的な使われ方でしたが、こちらも勝利の日には2イニングを投げ三振を3つ奪い無失点。動くボールを軸に的を絞らせないピッチングはこの秋も貴重な戦力になることは間違いありません。

リリーフでは二人の四年生に言及しなければいけません。

一人目はオリックスファンのサウスポー小宗創投手

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7試合14イニングに登板し、失点は14ですが自責点は4。防御率は2.51。昨年からアームアングルを下げ左のサイドスロー投手となりましたが、リーグNo.1左バッターの蛭間投手を抑えるなど対左のピッチングには目を見張るものがあります。引き分けに持ち込んだ早大戦では6回無失点。この春のチームの良い雰囲気を創り出したのは小宗投手だったと言えます。

もう一人は勝利試合で先発し勝ち投手となった奥野雄介投手。

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noteに書きましたが、奥野投手は二年生の時に140km/hを記録するなどストレートに注目が集まっていましたが、この春は変化球の制球に優れ緩急で勝負できる新しいスタイルを見せてくれました。8.2イニングを投げ自責点1。今年の投手陣の中でも抜群の安定感を誇りました。

Next世代も控えており、二年生の鈴木健投手松岡由機投手の二人がリーグ戦初出場を果たしました。ともにフレッシュリーグでは結果を残しており、東大投手陣は着実に力をつけています。

6-2.東大野手陣

チーム打率・出塁率・長打率は昨秋とほぼ変わらず打撃という点では苦戦もしましたが、得点を見てみると昨秋14点に対して今春は22点。その差が最も如実に出ているのは盗塁数です。今年の東大は盗塁数リーグトップの24。昨秋は8個で実に16個もの差があります。走塁改革については走塁長の隈部敢選手が率先して指導をしているとのことで、ここまで変わるのかとびっくりしております。

シーズン通して本塁打は0でしたが、井手監督の野球が昨年春・秋そして今年春とチームに浸透し選手の生き生きとした姿を見ているのは本当に楽しいものですね。

キャプテン大音周平選手は捕手から三塁へコンバート、打撃により専念できる環境となったのか打率.289でフィニッシュしました。

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3番打者としてシーズン通じて安定してヒットを打てましたし、盗塁も4個決めるなど塁に出した後の嫌らしさみたいなものはチームを象徴していたように思います。

全試合で4番に座った井上慶秀選手

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そのスイングスピードは別格で、強打者としての貫禄が出てきました。4打点としっかり打点をあげ、中軸打者としてさらに飛躍が期待されます。副キャプテンとして守備についている時も大きな声で投手を鼓舞し、あの勝ち試合でも攻めの姿勢を崩さない声がけは大きな力になりました。

その強肩がプロスカウトからも評価されている正捕手の三年生松岡泰希選手は打撃でも打率.278で5打点。

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押し出し死球2つというラッキーボーイ(?)ぷりも何か持っているなと思わせてくれます笑。かつてはブロッキングに脆さが見えましたが、今年はブロッキングもスローイングもフレーミングも大きく上達し、すでにリーグ屈指の捕手になりつつあります。慶大福井選手、早大岩本選手と優れた捕手がリーグにいるので相手チームからもどんどん吸収し来年ドラフト候補と騒がれるぐらいになって欲しいなぁなどと。

走塁面で目立ったのは四年生の水越健太選手と三年生の阿久津怜生選手。特に阿久津選手はアメフト部からの転部という異色の経歴でこの春初のリーグ戦出場でしたが、三振を喫しても決してブレることなくバットを振り続け、塁に出れば6盗塁と相手投手をかき乱しました。水越選手は昨年から優れたバットコントロールを示しており、阿久津選手と同じくチームトップタイの6盗塁。上位打線争いは加熱しています。

先に挙げた隈部選手は代走で出場すれば毎回盗塁を決めており(記録にならないものも)3盗塁。160cmと小柄ながら足で相手チームをかき乱す様は新生東大野球部を代表するものでしょう。

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この夏の期間でさらにパワーアップし、秋は目標に掲げる5勝を目指して全力で戦ってほしいと思います。アナリスト部門も頑張っているので、本当に本当に実現して欲しいなぁ。

7.最後に

長々と13000字お読みいただきありがとうございました。明日7月2日に週刊ベースボールの大学野球春季リーグ総括号が発刊されるので、その前にと思い焦りました笑

どこよりも詳しい、は自認しておりますので楽しんでいただけたなら何よりです。

今年に入ってから六大学野球の魅力をnoteで発信してきましたが、Twitterでも数名の方から神宮に六大学みにいきます!とメッセージいただき、実際に球場での写真をあげていただいているのを見ると、本当に書き手冥利に尽きるというものです。秋も残暑に負けぬ熱戦を楽しみにしたいと思います!!

頑張れ、東京BIG6!

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