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マドリードでついにあのピカソの大作と対面!

前回はマドリードの博物館や美術館を無料開放で訪れてみた体験記でした。

今回はその一つ、ソフィア王妃芸術センターを訪れます。


ピカソのあの作品を見に行くまで

バルセロナで開催されたピカソの特別展

2023年はピカソ没後50年で、バルセロナではピカソ美術館とミロ美術館共同のピカソとミロの交友をテーマにした特別展が開催されていました。

今まで見たことのないような規模の特別展で、世界の有名な美術館から数々の作品が集められていました。

その中で、ミロ美術館ではスペイン内戦の悲しみを表現した両画家の作品が展示されており、パリで1937年に開催された博覧会のスペインのパビリオンのために描かれたピカソの「ゲルニカ」とミロの「刈り入れ人」がクローズアップされていました。

パリの博覧会に展示された「ゲルニカ」

「ゲルニカは?」と思えば、ソフィア王妃芸術センター所蔵のゲルニカのスケッチのみが展示されていました。

ゲルニカのスケッチ

「ゲルニカはやはり持ち出し厳禁なのか」と思ったところ、実際、その状態があまり良くないらしく、以前所蔵されていたプラド美術館や現在所蔵されているソフィア王妃芸術センターからは一度も他の美術館にローンに出されたことはないそうです。最後の長旅は40年以上展示されていたニューヨークのMOMAからフランコ政権が終わり民主化されたスペインのマドリードに輸送された1981年。当時のビデオが残っています。

これだけ大きいバルセロナの特別展でピカソの「ゲルニカ」がないというのは残念だったのですが、マドリードに行けば見えるのでいつ行くか機会を見計らっていました。

「暗幕のゲルニカ」を読んで

そして「ゲルニカ」と言えば、原田マハ著の「暗幕のゲルニカ」を読んで興味を持った人も多いのではないでしょうか。私もバスク地方を初めて訪れる前に読み、いつかは見たい作品と思っていました。

この本はフィクションでありながら、歴史的背景などは史実に基づいているので、「ゲルニカ」を実際に見に行くのであれば読んでから行くことをお勧めします。

遂にソフィア王妃芸術センターで対面!

そして今回「ゲルニカ」のあるソフィア王妃芸術センターへ。かなり有名な絵なので恐らく混んでいるのだろうなと思ったのですが、やはり前は人だかり!みんな写真を撮っていました。ゲルニカは写真撮影ができるようになったのは結構最近だそう。

ところが最前線で撮ろうと思うと全部フレームに収まらず、後ろに下がれば人が写り込み、全体を撮ろうとするとこの角度(↓)からが精いっぱい。そして人が多くてじっくり鑑賞する雰囲気ではなかったので閉館直前にまた戻ってみることにしました。

閉館直前でまだ閉館のアナウンスが流れる前に戻ってみると、ほぼ独り占め状態!

ピカソの絵は何百と見ていますが、とにかくびっくりしたのが絵筆のストロークや絵の具の厚みがほとんど感じられず、のっぺりとしていてまるで写真を見ているような感覚だったこと。こういうピカソの絵は見たことがありません。

なぜだろうと思っていると、実はこの作品は油絵ではなく、なんと工業用のペンキで描かれているそうです。そのため劣化もし易く、それが理由で持ち出し厳禁になっているのだとか。

静かな部屋で鑑賞するとフランコ軍を支援するナチスの空爆によってゲルニカの町で犠牲になった命の叫びが聞こえてきそうです。

想像していたものとは少し違いましたが、そのスケールの大きさと内戦の悲劇を万博という舞台で世界に伝えたいというピカソの思いが感じられる作品でした。

ほかにも興味深いピカソの作品群

ろくに下調べもせずに「ゲルニカ」を見に行く目的で行ったので、ほかにどんな絵があるか全くの無知識で歩きました。実際周ってみるとスペインの20世紀の現代アートを代表する画家の作品が満載でした。

ピカソも独特な作品がいくつかありました。女性の表情が何とも言えない印象派を思い起こさせる初期の作品。

Mujer in Azul, 1901

こちらも。

Busto de Mujer Sonriente, 1987

キュービズムの時代のものも。

Les Oiseaux Morts, 1912


後期の作品でいくつかバルセロナの特別展に来ていたものもありました。

スペインで内戦が勃発したころに描いた戦争の悲しみを表すハンカチを片手に泣く女性の絵。

Cabeza de Mujer Llorando con Pañuelo, 1937

ほかにもいろいろありましたが、スペインのマラガやバルセロナ、フランスのパリにもピカソ美術館があり、それらと比べればコレクションは少ないので、やはり「ゲルニカ」があってこそ。

数多くのダリの作品

町ではダリの肖像をあちこちで見かける割には、意外とスペインで見ることがない彼の作品。ピカソに比べて生涯で描いた絵の数が少ないということもあると思います。なんでもピカソは晩年80歳を超えても1日に2枚の絵を描いていたそうです。

カタルーニャ州フィゲラス出身のダリは生前、故郷に美術館を建設しておりそちらに作品が多くあるようですが残念ながらまだ訪れていません。この美術館にはダリの作品が多くあり見ごたえがありました。

特筆すべき点はシュールレアリスムの前の作品がいくつもあったこと。

Retrato, 1925


Gitano de Figueres, 1923

ダリというよりはミロっぽい作品。

Cuatro Mujeres de Pescadores en Cadaques, 1928

キュービズムも試したようです。

Pierrot Tocando la Guitarra, 1925 

テーブルの上のワインボトルや魚やギターなどのオブジェクトを描いたキュービズムの作品はピカソやミロなども描いていますが、ダリは色彩が独特で新鮮。

Naturaleza Muerta, 1926

そしてもちろんシュールレアリスムの作品も。

El Hombre Invisible, 1929-1932
Angelus Arquitectonico de Millet, 1933

タイトルからいろいろ想像できる作品。

Rastro del Gran Masturbador, 1929

シュールレアリスムの作品を目にする機会が断然多いので、いろいろなスタイルの絵があり新鮮でした。

ミロの作品も充実

ミロの作品はこの美術館からバルセロナに来ていたのも結構あるのであまり写真は撮りませんでした。

恐らくタラゴナ近郊にあるミロの農場を描いた初期の作品。

La Casa de la Palmera, 1918

6年くらいでスタイルがガラッと変わります。

Hombre con Pipa, 1925

中庭にもミロの作品がありました。

Pajaro Lunar, 1966

カタルーニャつながりのアントニ・タピエス

アントニ・タピエスはバルセロナ出身の画家で、バルセロナに彼の美術館もあります。この美術館にはかなりの数の彼の作品がありました。晩年はかなりアブストラクトな作風ですが、初期の作品があり面白かったです。

Zoom, 1946

自画像も。

自画像、1950

良く見る作風のもの。


他にもスペイン内外のアーティストの作品がありました。その中でもやはり「ゲルニカ」とダリに尽きると思います。念願のソフィア王妃芸術センターを訪れる夢をついに達成でき、面白い作品にも出会えました。

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