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スペインに根付くベルモット文化、レウスのベルモット博物館へ

ベルモットを定期的に飲んでいる人はいますか?日本ではあまり馴染みのないアルコール飲料かもしれませんが、スペインでは文化の一部として根付いています。


ベルモットとは?

ベルモット酒精強化ワインの一つ。酒精強化ワインとは、フォーティファイド・ワイン(fortified wine)とも呼ばれ、醸造過程でアルコール(酒精)を添加することでアルコール度数を高めたワインのことを意味します。ベルモットはヨモギなどのハーブやスパイスなどを配合し香りづけされた酒精強化ワインで、ベルモットの語源はドイツ語でヨモギを意味する 「Wermut」 だそうです。

世界的にはイタリアのチンザーノマルティーニ・エ・ロッシなどのブランドが良く知られているかと思います。ベルモットはマティーニやマンハッタン、ネグローニなどのカクテルのミックスの一つのため、ベルモットを飲んだことがないと思った人でも実は知らずに飲んでいるかもしれません。

そのルーツは古代ギリシャまで遡るそうですが、ベルモットとして販売されるようになったのは18世紀終わりのイタリアだそう。スペインには19世紀終わりにイタリアから普及し、最初に広く普及したのがカタルーニャ州で、その後全国に広がり現在ではスペイン各地の特にワイン生産地域で生産されています。

レウスのMIROブランドのベルモット


スペインのベルモットの生産はイタリア、フランスに次いで世界3位。スペインのベルモット(Vermut)は平均的にイタリア産のものより苦みが少ないそうで、カクテルとして混ぜるためではなくストレートに飲むことを想定して醸造されているそうです。

近年の目覚ましいリバイバル

10年くらいまでスペインでは「ベルモットは年配の人が飲むお酒」というイメージが強かったそうです。普段はビールやワインを飲む人がほとんどですが、ベルモットはここ10年くらいで復活の兆しを見せており、なんと2017年から2019年の間でスペイン産ベルモットの売上が300%増となったそうです。ベルモットはアペリティフとして食前(ランチ前)に楽しまれ、ポテトチップスなどのスナックや魚介の缶詰、オリーブなど家でも準備できる簡単なものと一緒に飲まれることが多いことから、コロナ過でも家で楽しむ人が増え、アルコール飲料で唯一コロナ過でも売上が増えたそうです。

バルセロナでもVermuteriaと呼ばれるベルモットを売りにしているバルが多くあり、古めかしいレトロな老舗から、今どきのおしゃれなお店までいろいろあります。今ではランチ前に関わらず夜にも飲まれています。

バルセロナの老舗バルのベルモット

近年では北米などをはじめ世界的にもベルモットの消費が増えており、今後も売り上げ増が予想されています。

街に富をもたらしたレウスのベルモット

レウスはイタリアからベルモットがカタルーニャ州に普及した当時、ブランデー蒸留で知られていたそうです。そのためベルモットを醸造するインフラや経験がすでに存在したことでベルモットの醸造が行われるようになったそう。19世紀の終わりにはレウスで30の醸造所が50ものブランドのベルモットを醸造していたそうです。そしてアルコール産業の成功によりレウスはバルセロナに次いでカタルーニャ州で2番目に大きい街となりました。

レウスの町については以前紹介しています。

さすがスペインでの発祥の地、レウスではどこでも提供しています。町の中心の広場に行くと地元の人たちがみんなベルモットを飲んでいてその光景に圧倒されました。マドリードなどでもベルモットは良く飲まれると言いますが、バルセロナではそれほど昼間にテラス席でベルモットを飲んでいる人は見かけません。

そんなレウスで今回是非訪れてみたかったのが、ベルモット博物館

100種類以上のベルモットが楽しめるベルモット博物館へ

博物館といっても、レストランやバルの面持ちです。旧市街の旧帽子工場を改装した建物。

オーナーは子供の頃に父親にチンザーノのアンティークボトルを与えられてからベルモットのボトルやグッズを収集するようになり、1,800のボトル、灰皿、グラス、広告を含む6,000ものグッズを集めたそうです。そして自分のコレクションを皆に見てもらいたいと、レストランとバルを併設したベルモット博物館を2014年にオープン。

レトロなベルモット博物館の展示

バルやレストランの壁にベルモットのグッズがずらり。2階はイベントなどの個室が主なので、普段は博物館として一般公開しています。階段にはベルモットの広告のポスターの数々。

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ベルモットのメーカーの名前の入ったトレーの数々。バルに提供していた品々でしょうか?

レトロでキュートな品々がたくさん。

レウスで醸造されているベルモットの数々。

ベルモットの原材料。その組み合わせはメーカーによって異なります。

そのほかいろいろなグッズがありました。

ベルモット博物館で地元のベルモットをトライ

2階からバルのテラス席を眺めるとランチ時で賑わっています。

折角なので1階のバルで地元のベルモットを飲んでみることにしました。

ベルモットのメニューはレウス、カタルーニャ州、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカとカテゴリー分けされていて120種類近くを提供しています。

普通はビールでしか見ないタップ(大きな樽に付けられた蛇口から注ぐこと)がベルモット!初めて見て感動しました。地元産はこのタップから注ぎます。

タップから赤と白それぞれ頼みました。赤はDe Muller社のIRIS、白は博物館が大手Miroに委託して作っているオリジナルのCORI。通常赤の方が甘く、白はドライなため、赤にはオレンジのスライス、白にはレモンのスライス、そして両方とも種なしオリーブが入っています。

かなり濃厚で甘かったのでソーダ水を足しました。サイフォン式のレトロなデザインのソーダ水がカウンターやテーブルに置いてあります。

ベルモットの最も代表的な飲み方がロックかソーダ割り。また、ベルモットがミックスされているネグロニもメニューで良く見かけます。

アルコール度数はポートワイン並みの16%ほど。1杯で結構酔うのでランチ前のアペリティフで飲んだらランチ後にはベロベロになっていそう。

レウスを訪れる機会がなくても、バルセロナに来たら観光客しか飲まないサングリアよりも是非カタルーニャ州のワインやカヴァ、ベルモットを!

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