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普段本を読まない自分が小説を読んでみた(3冊目『レインツリーの国』)

今回はフィクション/恋愛小説を読みました。
ネタバレ要素もあります。

過去の読書感想 #1冊目 #2冊目


基本情報

タイトル

レインツリーの国

著者

有川浩

出版社

新潮社

あらすじ

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。やりとりを重ねるうち、僕は彼女に会いたいと思うようになっていた。しかし、彼女にはどうしても会えない理由があって――。

サラリーマンの主人公(信行)はその「忘れられない本」について感想が書かれたサイトを発見し、サイト運営者(ひとみ)にメールを送ります。
メールでやりとりをするうち、信行は実際に会ってみたいという想いが募り、結果的にはどうにか二人は会うことになるものの、ひとみにはある理由がありました。

読み終わって感じたこと

ページ数も少なく、かなり読みやすかったと思いました。

また、ネタバレの一つの要素になってしまうのですが、ひとみは事故で難聴者であることを前提に、以下記します。

異なる立場で、その両方の根底にある感情がぶつかりつつも馴染んでいくような感覚となり、代弁してくれているような共感も得られた良い物語だと思いました。
思っているけど言えないようなこと、言いたいんだけれどうまく言えないことをわかりやすく説明してくれたようにも思えました。
特に、自分の感情やイメージをうまくまとめて伝えることが苦手な私にとってはわかりやすかったかなと思います。

この本と自分の考えや経験との関連性

この物語に出てくる難聴のことについて、ふと思い出したことがありました。

過去に働いていた職場で、ろうあ者の方々が開催するとある大会に仕事として関わらせてもらったことがあります。
"ろうあ"なので、今回の物語とは少々異なりますが、音が聞こえない失聴者の方々が集う大会がありました。
自治体関係者、市議会議員、関係協会やボランティア団体など、健聴者の方も含め、ほぼ一日を通じていろいろな催しがあり、その様子を録画するのと、会場に入りきれない人たちがいる別室に、その様子をモニターでリアルタイム上映してほしいといった仕事の依頼でした。

会場に入るなり、プログラムが始まる前から現場は手話が飛び交う世界で、今まで"普通"だと無意識に思っていた世界とは想像だにしなかった光景が繰り広げられている状況でした。
会話という"話し声"の音が無かったのです。
自分が今まで身を置いてきたものとは違う世界があるんだなんというのが率直な感想でした。また、あたりまえのように交わされているやりとりが、1ミリも理解できない自分に、正直なところ不自由さも感じたことが印象に残っています。

ただ、私自身も1日を通じて撮影しているだけではなく、催しの様子やろうあ者の方同士が手話でやり取りしている様子を見ていると、そこには健聴者である自分と別世界のように見えていた"日常"がありました。

嬉しそうにしている人、真剣な表情をしている人、中指立てて喧嘩っぽいやりとりをしている人(おそらく高校生くらいの男女)など(笑)、それは単なる日常なんじゃないかと思いました。
とはいえ、その環境に自分が身を置いたとなればまた違った意識や感情が芽生えてくるんだろうかと今となっては思ってしまいます。
これはこれで率直な感覚かもしれません。

総合的な感想

この物語の結末は、"始まったばかり"と思っています。
ハッピーエンドになっていくのか、そうではなくなってしまうのかはわかりませんが、どんな方向に向かっていったとしても純粋にお互いができるかぎり、不器用な面も含めて納得していくんだろうなと思いたいです。

両手を垂直に上げて手首を回し、手をひらひらと動かしたい気持ちになった物語でした。

今読んでいる本、感想予定の本など

『噂』『向日葵の咲かない夏』『アリアドネの声』『俺ではない炎上』『正欲』・・・
※今後読みたいものも含みます

過去の読書感想


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