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吠える犬

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短歌13

「君は少しどうかしてるね」ときみがいう 私をどうかさせてるきみが ああ月よ 人恋しさから見る月よ 素知らぬ顔をしていておくれ 甘さばかり覚えた十代、溶け残り続ける苦さに喘ぐ廿代 早く早く早く大人になりたくてピンクの絵の具をぶち撒いていた だからちゃんと押さえてなさいと言ったでしょう 吹けばどこまでも飛んでく幸い ひとしきり終わりのふりをやり終えて次は始まりのふりを始める 星、眠る瞬間を視た、僕だけはおまえをきっと忘れないだろう 傷つけてぐちゃぐちゃのそこを覗き見

    • とくとくとく

      もっと、もっと暗い音楽を、と血眼になってプレイリストを作成していたらまた朝が来ていた。 この頃はうんざりするほど寝つきが悪く、音がしすぎるとダメ、かと言って静かすぎてもダメ。静かすぎると人間の中身の音がしてきて、それらは外部の環境音なんかより余程私をソワソワさせる。とくとくとくと規則正しく打つ心臓の音、消化器官内のガスが潰れるベコリッという音、吸って吐くたび鼻腔を抜けて頭蓋に響く呼吸の音。いやになる。湿った音の大群が体の中を絶えず蠢いて、私が生きているということを知らしめる

      • 二十七歳 無職 いつまでメンヘラをやるのか

        小学四年でリストカットを覚えて以来、私のメンヘラ人生はその暗く長い道のりの幕を開けた。精神疾患持ちの実母に処方されていたあらゆる薬を家中から探し出してきては大量に服薬し、隠されてはまた見つけ出してきて飲むの繰り返し。そのうちどこを探しても薬が見つからなくなると自ら薬局へ駆け込み総合感冒薬(当時は知識が乏しくいわゆるOD向けの薬の種類を知らなかった)を買い付け、ひと瓶を少しずつ消費しながら小学校へと通う生活を送った。自傷も並行して行なっていたが、何せうちにはお金がなくどれだけ深

        • 【創作】炎

          いつも私が休憩室を出た後にだけどっと笑いが起こり、その陰にある喫煙所では職員数名が煙とともに私への陰湿な悪態を漏らしていた。事務所の前を通る時、経理の女は横目で私を睨むし副社長は舐めるような視線をよこす。それらを振り払ってロビーを突っ切り一目散にトイレへと向かう。仕事に戻る前には必ずこうしてトイレに篭って今さっき食べたばかりのものを全部吐き出すことにしている。二本指で下の根っこをグイと押さえつければ簡単に嘔吐反射が起こりボトボト、ボトボトとご飯が出てくる。これは全て、ここで働

        短歌13

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          わかってほしいのかわからせたいのか

          お久しぶりです。 不肖mhr、先日27歳になったばかりなのですがなんと再来週からは華の女子こ〜せ〜と相成る運びとなりましたわけでありまして、フフ、フフフフ。ウケますね 人間とのコミュニケーションってこれといった答えが一切ないけど、これって悩む意味あんのかな。もう悩まなくていい?ダルいんす。自分正直もう、疲れたっす。 人と喋っててもね、その人の思惑ってものが言葉にされずとも伝わってくるじゃないですか。仕草とか目線とかでね。で、伝わってきたからには無視することもできないし(でき

          わかってほしいのかわからせたいのか

          今日は、自己弁解を書いた。昨日とその前も自己弁解を書いた。明日もきつと自己弁解を書くであらう。この先死ぬるまで何をどんな形で書かむとも、其が自己弁解以上の意味を持つことはない。

          今日は、自己弁解を書いた。昨日とその前も自己弁解を書いた。明日もきつと自己弁解を書くであらう。この先死ぬるまで何をどんな形で書かむとも、其が自己弁解以上の意味を持つことはない。

          犬よ

          空想の犬を抱きしめていると涙が出てくるのは私が弱いからではなく昔実家で飼われていた、いや飼われると言うよりもほとんどは庭に打ち捨てられるような形で所有されていたあの小さな薄汚れた犬の瞳を思い出すからであってそれはもう本当に、本当に私が弱いからとかではない。もう名前も思い出せないその犬はある日突然いなくなり私は少し混乱したが後から聞けば母の手によって捨てられたのだと言う。なんでも餌をやろうとした母の手を噛んだのだったか、あるいは当時三歳の姉の手を噛んだのだったか、はっきりとした

          犬よ

          T先生へ

          T先生へ ご無沙汰しています。五年前、とある県立病院にて先生のお世話になった患者の一人です。(ご無礼ながら匿名での差出をお許しください)覚えておいででしょうか。忘れてしまっているかもしれません。でも、覚えていてほしいな。五年前のあの冬から先生はお変わりありませんか?私はなんだか、この頃すっかり自分が歳を取ってしまったような気がするんです。それもこの数年で急激に、身も心も老いさらばえてしまいました。 先生とお話をしていた頃の私は確かまだ二十四歳でしたね。若いというよりも幼い、

          T先生へ

          全部書くのか 私にはもう全部書くということ以外残されていないのか ゴミみたいな人生の、これまでの、すべて

          全部書くのか 私にはもう全部書くということ以外残されていないのか ゴミみたいな人生の、これまでの、すべて

          短歌12

          清潔な朝を迎えるそのために葬り去るべく命、私(わたくし) 生活がわからないので家事ばかりしている 汚すために洗う皿 君のつく信じた方が得な嘘 煙と鬱は春の季語らしい 白骨化死体(前世の僕である)河川敷にてやっと見つかる 「趣味・特技に呪いと書いてありますが」「かけるかけられる、どっちもいけます」 溶岩流にも似た怒りを丁寧に濾過した液だ味わって飲め 息絶えて今世に見た四季はみな彼女の夢であったことを知る 私たちだけだよ薬と思い込み毒を交換し合うまぬけは 心より詫

          短歌12

          概念・母

          私が小説を書こうとすると決まって「お母さん」という一語に行き当たるのは、一体どういうわけだろう。何かイメージを掴もうと空想すると必ずそこに母の像が浮かんでくるわけだが、さればと言ってその度に母を題材にして文章を書くわけにもいかない。「母」というテーマが私にとっていかに深刻なものであるかは既にいやというほど了解しているが、それだけにそう何度も考え込みたくないものである──と、そう前置きしたのにも関わらず、ともすれば私はこう続けそうになるのである。「母は心を病んでいた」と。 私

          概念・母

          早起きの感想

          目覚めたくなかった。体がゼリーのようだった。ゼリーの体になったことはなかった。しかし彼がそう言うからには、全くそうであるような気がした。薄目を開けて見ることさえ忍ばれた。何があるのかは分かり切っていた。結露と黒カビだらけの窓から差し込んでくる忌々しい朝日。日に焼け切った古い畳。ナフタレンの匂い。誰かのため息。私もうんざりする。笑い声。テレビの音。何がおかしいのか分からない。美しいものが一つもない。こんなにも汚い世界に踏み出すために顔なんか洗ったくらいじゃ、歯なんか磨いたくらい

          早起きの感想

          元に戻りたい

          何も書きたいことなんてないのですが、夜が長く、薬もなく、ただじっとしているだけではとてもやり過ごしようがないので書きます。 横になっています。 意識のあることに耐えられないので極力眠って過ごせるよう努めますが、努力も虚しくすぐに目が覚めてしまいます。 起きて意識が働き始めると悪い想像が際限なく膨らんで、煙のように全身を包みます。 頭の中で鳴り止まない侮蔑と冷笑と糾弾の声。すべて聞き馴染んだ自分の声。 私は私にいじめられています。 だけどそれは、私がそうすると決めたのです。

          元に戻りたい

          嘘ばっかつくな!

          これを見ている皆さんにもそうですが なにより誰より自分自身に、そう喝を入れたい。 マジ、お前、 嘘ばっかつくな!!! とは言え嘘をついてしまう。 なぜなのか?人はなぜ嘘をつくのか? 一緒に考えてみましょう。 無難なところで言うと、保身のための嘘。 とっさの防御としての嘘ですね。 「仕事慣れた?」「アッお陰様で…だいぶん…!」←嘘。本当は自分が上手く勤めを果たせているのか、そもそも勤めがなんなのかすら分かっていない。 「お酒飲める方?」「え!?うーん、あー、人並み!

          嘘ばっかつくな!

          名前と人格と乖離とインターネット

          そこでの私は リ他 だったし、 せかいちゃん だったし、 こじか村先住民 だったし、 喪に服し学院大学 だったし、 こいぬの粉末 だった。 ここでの私はずっと mhr で、 他の場所ではまた違う名前を無数に持っている私である。 昔から自室でひとり考え込む時などに決まって浮かんでくるイメージがあって、それは私が私の脳を頭の中から取り出して、ホールケーキのように丁寧に切り分けているシーンだ。 大抵三つか四つに等分され、脳はまたすっぽり元の場所へと戻される。 このイメー

          名前と人格と乖離とインターネット

          太宰治 月乃のあ 二階堂奥歯 皆、私の親友です

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