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#短文

痛みは我のもの《短文・詩》

痛みは我のもの《短文・詩》

痛む。

心が痛む。
身体が痛む。

この痛みを
貴方に分かってもらえるものか。

共に「痛い」と泣けど、
私たちの痛みは重ならない。

苦しみ、悲しみ、傷。
この感覚は私の世界のもの。

貴方は私の世界には来れない。
いつか貴方の世界にも行ってみたい。

私の痛みは私の痛み。
私の痛みは貴方の何?
貴方の痛みは、私の何?

分かり合うことで和らげたい。
そうして私たちは慰む。

分かち合うことで

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無題

無題

砂をかき分ける

指の間から熱が逃げる

紫外線が刺さる

忘れないで

吊るされた愛を下から見上げる

光は掴むことができる

掌は遠近感を惑わす

目隠し

換気扇の音だけが響く

等間隔に並べられた空気

常に片側だけ開けられた扉

天井を押し続ける

雨のない地域にも涙は流れるのだろうか

裸足の上から靴紐を結ぶ

何者かになりたかったはずのマネキン

爪の形が気に入らない

そこにあった

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無題

無題

水平線を眺めている

路傍の石を蹴る

瓦礫の中から拾い上げた魂

万年筆を弾く

染み

冷たく薄く濁る

紡ぐ

脳からの信号を受け取る

ゴミのような生活

人工物の山の中で新鮮な空気を吸う

密閉された執念

密度が上がると分子は熱を持つ

有機化合物的な祈り

鈍色の鉄の塊

想像の中での痛み

地図にGPSは無い

網膜は空間を捉える

触覚を通して地獄の形を知る

無題

無題

引き続く

粘り気の強い眠気

絡みつく

視界のピントを合わせる

朧げなものを明快にする

割る

雑踏の中

寝返り

気管が痛む

再び目を覚ます

なんで生きているんだっけ

反芻

咀嚼

無形の泥が降りてくる

飲まれる

攫っていく

形式的な美

まるで風に靡くすすき

感じ取る

感覚器官から思考へのエスカレーション

留まることを忘れた定点観測

ここで何かを見つける

彼方

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無題

無題

感情は融解する

輪郭を失う

思考が蕩ける

私から漏れる

辺りに広がる

それを集めようとはしない

ただ溶け出していく

輪郭を失っていく

思考が解ける

それを自由にしてやる

私の形が失われてゆく

虚しい

脳の右側が熱を帯びる

携帯のバイブレーションが鳴る

何を考えていたのだろう

届く

しさく《短文・詩》

しさく《短文・詩》

今こうして詩作をしている

同時に、思索をしている

これは文章を書く者が打てる唯一の施策

文章は手仕事である

私たちの身体からありのままの形で生まれる思惟

そこには恣意が入り込む

思惟と恣意の差異を感じ取りながら書く

これは試作でもある

痛みから生を享ける《短文・詩》

痛みから生を享ける《短文・詩》

書く文から熱が抜け落ちた。

内側から抉り出すような動力を感じない。

心に凪が訪れたからだ。

痛みや苦しみが受肉したものを
"創作"と呼ぶのだろう。

芸術とは痛みである。
作品は親の代わりに叫ぶ。

音のない叫びだ。

芸術に声はない。

だがその声は確かに発せられている。

ここにいる、と。

金剛石が圧力で輝くように
感情は痛みによって声を得る。

願わくば、こんな声は持ちたくなかった。

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ただいま、孤独。おかえり、孤独。【短文】

ただいま、孤独。おかえり、孤独。【短文】

お盆。
故郷に帰っていた。

先祖が帰る日だが、
生きている者にも帰る権利はある。

そして今はそこからの帰り道。

再びひとりに戻った。
ふわふわとしていた心と魂が身体に戻った。

誰も味方ではない世界に帰ってきた。
本当の味方は家族だけ。
そんな世界。

またひとりで闘っていこう。
この孤独と生きていくために
私は飛び出してきたのだろう。

おかえり、ただいま。
そんな会話をしている。
私の中

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否定《短文・詩》

否定《短文・詩》

not。副詞。
語を修飾して性質を否定する。

un。接頭辞。
後の語の性質を打ち消す。

どんな性質でもそれが据えられると逆の意を取る。

たった一言で180°のターンが起きる。

日本語でもそうだ。
不、非、未、無。

自由なものが不自由になり、
在るものが非在になり、
行き先が未踏となり、
意味あるものが無意味になる。

途端に突き放されるこの感覚。この儚さ。

ノットハッピー、幸せではない

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断片《短文・詩》

断片《短文・詩》

ぱちん、ぱちん。

自分を切り刻む音。

有限な私を幾つものピースに分けて
この世界に置いていく。

一が複数になり、私は断片となる。
その断片がまた断片となる。

複数に切り分けた私の存在。

拾い集めてまとめたら
また私に戻ってくれるだろうか。

また戻りたいと思った時に
帰り道を見失わぬように
切り取り、そっと置いた私の断片。

もはやどこに置いたのか
振り返ることも忘れてしまった。

いつ

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身体は心より遅れて《短文》

身体は心より遅れて《短文》

体調を崩した。
物理的な意味での体調不良。

ようやく心の不調から立ち直ったと思えば、
お次は身体が悲鳴を上げた。

ここ数ヶ月、たしかに無理をしていた。
自覚はあったが、進むしかなかった。

今のところ大丈夫だから、と
無茶な進み方を選んでいた。

それが祟った。

反省はしているが後悔はしていない。
そうやって生きるしかなかったのだから。

しかし、いつもこのサイクルだ。
心が壊れ、そこから復

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病床にて《短文・詩》

病床にて《短文・詩》

患う

考える
健康とは何か

考える
なぜここに存在するのか

身体は動かず
まとまらない思考だけが走る

ぼんやりと眺める

身体が痩せてゆく

身体の患いは
心の患いと瓜二つ

苦しみながら痩せてゆく
もう健康には戻れないかもしれないと嘆く

また蓄えていかなければならない

来る次の病に備えて

空は当てつけのように美しい《短文・詩》

空は当てつけのように美しい《短文・詩》

梅雨が終わる。

夏が身支度を始めた。

また、あの空が来る。

青々とした空が。
清々しいほど白く、大きい入道雲が。

夏の空が苦手だ。
希望を与えてくるような、あの空が。

私たちの人生など知ったことではない、
とでも言いたげな美しいコントラスト。

夏の空は私たちに活力を与えようとしてくる。
人の気持ちも知らず。

人生に喜びを見出せない人ほど
あの青空が美しく見える。

まるで当てつけのか

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音と生きていく《短文・詩》

音と生きていく《短文・詩》

音楽が好きだ

隙があればいつでも音楽を聴いている

今は技術が発展して
毎日知らない人の曲と出会うことができる

音も好きだし
歌詞も好きだ

僅か数分に閉じ込められた
人の想いに触れることができる

音楽は対話だと思う

何を想い何を伝えたいのか
それに向き合う時間

同じ曲を聴き続けるのも悪くないが
それではぐるぐると同じところに
とどまってしまう気がする

だから私は新しい人との出会いを求

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