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痛みは我のもの《短文・詩》

痛みは我のもの《短文・詩》

痛む。

心が痛む。
身体が痛む。

この痛みを
貴方に分かってもらえるものか。

共に「痛い」と泣けど、
私たちの痛みは重ならない。

苦しみ、悲しみ、傷。
この感覚は私の世界のもの。

貴方は私の世界には来れない。
いつか貴方の世界にも行ってみたい。

私の痛みは私の痛み。
私の痛みは貴方の何?
貴方の痛みは、私の何?

分かり合うことで和らげたい。
そうして私たちは慰む。

分かち合うことで

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否定《短文・詩》

否定《短文・詩》

not。副詞。
語を修飾して性質を否定する。

un。接頭辞。
後の語の性質を打ち消す。

どんな性質でもそれが据えられると逆の意を取る。

たった一言で180°のターンが起きる。

日本語でもそうだ。
不、非、未、無。

自由なものが不自由になり、
在るものが非在になり、
行き先が未踏となり、
意味あるものが無意味になる。

途端に突き放されるこの感覚。この儚さ。

ノットハッピー、幸せではない

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断片《短文・詩》

断片《短文・詩》

ぱちん、ぱちん。

自分を切り刻む音。

有限な私を幾つものピースに分けて
この世界に置いていく。

一が複数になり、私は断片となる。
その断片がまた断片となる。

複数に切り分けた私の存在。

拾い集めてまとめたら
また私に戻ってくれるだろうか。

また戻りたいと思った時に
帰り道を見失わぬように
切り取り、そっと置いた私の断片。

もはやどこに置いたのか
振り返ることも忘れてしまった。

いつ

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身体は心より遅れて《短文》

身体は心より遅れて《短文》

体調を崩した。
物理的な意味での体調不良。

ようやく心の不調から立ち直ったと思えば、
お次は身体が悲鳴を上げた。

ここ数ヶ月、たしかに無理をしていた。
自覚はあったが、進むしかなかった。

今のところ大丈夫だから、と
無茶な進み方を選んでいた。

それが祟った。

反省はしているが後悔はしていない。
そうやって生きるしかなかったのだから。

しかし、いつもこのサイクルだ。
心が壊れ、そこから復

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病床にて《短文・詩》

病床にて《短文・詩》

患う

考える
健康とは何か

考える
なぜここに存在するのか

身体は動かず
まとまらない思考だけが走る

ぼんやりと眺める

身体が痩せてゆく

身体の患いは
心の患いと瓜二つ

苦しみながら痩せてゆく
もう健康には戻れないかもしれないと嘆く

また蓄えていかなければならない

来る次の病に備えて

空は当てつけのように美しい《短文・詩》

空は当てつけのように美しい《短文・詩》

梅雨が終わる。

夏が身支度を始めた。

また、あの空が来る。

青々とした空が。
清々しいほど白く、大きい入道雲が。

夏の空が苦手だ。
希望を与えてくるような、あの空が。

私たちの人生など知ったことではない、
とでも言いたげな美しいコントラスト。

夏の空は私たちに活力を与えようとしてくる。
人の気持ちも知らず。

人生に喜びを見出せない人ほど
あの青空が美しく見える。

まるで当てつけのか

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音と生きていく《短文・詩》

音と生きていく《短文・詩》

音楽が好きだ

隙があればいつでも音楽を聴いている

今は技術が発展して
毎日知らない人の曲と出会うことができる

音も好きだし
歌詞も好きだ

僅か数分に閉じ込められた
人の想いに触れることができる

音楽は対話だと思う

何を想い何を伝えたいのか
それに向き合う時間

同じ曲を聴き続けるのも悪くないが
それではぐるぐると同じところに
とどまってしまう気がする

だから私は新しい人との出会いを求

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孤独と箒星《短文》

孤独と箒星《短文》

不安はどこから来るのだろう。

大体、孤独のせいだと思っている。

独りぼっちの世界の中で
己が作り出した呪いにかけられて
隅っこで泣いている自分がいる。

泣いているのは十歳の自分だった。

何も分からず泣いている。
呆然と絶望している子どもがそこにいる。

呪いなんてちっぽけなものなんだ。実際。
そんなことは分かっている。

本人が自力で気付けないのなら
大人になった君が教えてやる必要がある。

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エンドロール《短文・詩》

エンドロール《短文・詩》

映画のエンドロールを眺めている

特にこだわりがあるわけでもないが
なんとなくエンドロールは最後まで観たい

エンドロールの良さは
映画が終わってもなお
暗転が続いているところ

もし明転されるシステムだったら
すぐにその場を後にしていると思う

正直、エンドロールの文字は読んでいない

下から上に、上から下に
流れていく文字の連なりを眺めているだけ 

ただただぼうっと
さっきまで観ていた映画の

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群像《短文・詩》

群像《短文・詩》

街に人が入り乱れている。

互いが交わることなく、交わっていく。

この人たちとは一生関わることがないだろう。

しかし、出会っている。

この奇妙な関係がこれからも続く。

かけがえのない私は、
すれ違う人の人生の脇役にすらならない。

すれ違う人たちは、
私の人生の脇役にもならない。

しかし、こうしてすれ違っていく。

群像を眺めている私は
その瞬間、誰かの群像の一部でもある。

主体が構成

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許されたい《短文・詩》

許されたい《短文・詩》

他人の目線を勝手に作り出している。

いつも何かに追われながら生きているようだ。

「誰に許されたい?」と聞いてきた友人がいた。

そのとき私は「全員に」と答えた。

そう、私は全員から許されたがっている。

私のやること、なすことを
どうか咎めないでほしい。

あなたは誰に許されたいですか。
親ですか、友人ですか、知人ですか。

何をすればその人から許されたと言えますか。

そして、なぜその人に

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屈することなく《短文・詩》

屈することなく《短文・詩》

また、這い上がってきた

飽きもせず

仕方ない
人生はこうして続く

最後に立っていればいいんだ

途中何度折れても構わない

最後に負けていなければいい

それまでは余興だ

列車に乗って《短文・詩》

列車に乗って《短文・詩》

あの列車に乗って

あてのない旅へ出よう

目的地も方角も分からない

どこへ着くかは列車の気分次第

飛び乗る勇気がないなら

手を繋いで一緒に行こう

行き先が分からなくて不安でも

あの列車はあなたが乗るまで動き出さない

だから、安心してほしい

旅路はあなただけを待っている

目的地に着いたときに

進んできた道を振り返ると

きっと、綺麗に見えるはず

走れ、走れ

一秒でも早く

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声を出す《短文・詩》

声を出す《短文・詩》

喉ががらがらと鳴る。

しばらく声を出していなかったからだ。

深く息を吸う。
声を出すために。
生きるために。

枯れた声で歌を口ずさむ。

歌に乗せて音をつなぐ。

声は続いていく。

だらだらと続かせはしない。

緩急と高低をもって
この声はリズムとともに続く。