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読書/観劇感想

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日々の読書記録。
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風土

和辻哲郎 著

 サハラ砂漠に行きながら読んでいた。砂漠に続くまでの禿山の、日本の「山」という感じからは想像できない寂しさ。ピレネー山脈を訪れた時も、その永遠と続く雪をかぶった岩山に、私一人ではどうにもできないその大きさに打ちのめされた。

死の家の記録

ドフトエフスキー作 望月哲男訳

                             12.20

月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短編集~

ピランデッロ 関口英子訳

 自分のことを、自分の持つ関係性を反射し合って見ることが最早かなわないとき、孤独になるのだが、その時孤独を感じている魂は、いったい何なのか。誰々という呼称は外からつけられるものであり、自分も外部を内面化した習慣によって自分が誰であるかを認識する。しかしそれがはぎとられて孤独となった時、この見ることの、重みを感じることのできる肉体と、意識は全く混ざり合わずに受け入れがたく

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あの大鴉、さえも

大学のサークルで、少し取り扱った作品が、竹内銃一郎の『あの大鴉、さえも』。3人組の独身者が、大ガラス(エア)をお宅に運ぶ中繰り広げられる不条理の世界を、言葉と視覚で楽しむ戯曲になっている。

結局このコロナ禍で実現には至らなかったので、解釈だけ滔々と語ります。

まず、この脚本の元になったポーとデュシャンの考察から。
ポーの詩では言語の記号性が強調されると考えた。nevermoreの様に何の

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インド夜想曲

アントニオ・ダブッキ作 須賀敦子訳 白水社

ネタバレ含みます。

破茶滅茶に面白い。読了した時の放心。

最終章を読み進めていくと「してやられた」感。読書をするにあたって、ストーリーを求めてしまう読者の意表をつくめちゃくちゃに面白い作品だった。「主人公の友人を探す旅」とのコンテクストの中で、終わりにはこの謎めいた旅について、つまりなぜ友人が失踪したのか、友人と主人公の関係は?、作中の人々は友人

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