卯見

生活を、送りたいけど送れない葛藤。

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  • 読書/観劇感想

    日々の読書記録。

  • toulouse留学生活

    南仏Toulouseでの生活を緩く綴った日記。話があっちゃこっちゃに飛びます。

  • 旅行のすすめ

    南仏から旅する留学生。記録用です。

最近の記事

休養

日本に帰ってきてからというもの、およそ休まる時を過ごした時を思い出せない。唯一じんわりと慰めてくれる記憶には、人の家に泊まった朝、1人早く目が覚めて珈琲を淹れて本を読んだ、彼の本棚にあった、石原吉郎の詩集のシベリア抑留の話を、朝のぼーっとした頭で読んだ、それだけを覚えている。 思えばトゥールーズでは、日長3、4時間は本を読む時間があり、本を読む、絵を描く、映画を見る、ということは、それ自体を目的とした時間としては存在せず、ただぽっかりと空いたわたしの世界に、そうした芸術が入り

    • アンダルシアの旅ⅲ グラナダ

      Granada  前夜にグラナダ入りして、町の入り口が門であるところから、この町の城塞都市としての華やかな歴史を早くも実感しつつ、ホステルに着く。ホステルに向かうまでの道は太い通りを脇にそれたあたりから急に狭くなり、人っ子一人どころか猫一匹通るのがせいぜいな道の角に、ホステルがあった。この細い道と丘に続く坂道、行き止まりの多さ…。まだ夜が始まったばかりであたりは見えないにもかかわらず、もう浮足立っているが、明日朝早く起きて散策をしようと早めに寝ることにした。  朝。日の出

      • デカローグ5・6@新国立劇場

         新国立劇場で初めて演劇を見た。U25で半額券が買えるというのに釣られ、この前のオペラに引き続き2回目の訪問。今回はポーランドの映画監督クシシュトフ・キェシロフスキの映像作品の舞台化で、団地での出来事を描いた10篇のうちの5、6作目の同時上演を見に行ってきた。 今回はデカローグ5「ある殺人に関する物語」、デカローグ6「ある愛に関する物語」を見た。舞台には団地の三階建ての建物。 デカローグ5「ある殺人に関する物語」  死刑を止めたい新米弁護士と、タクシー運転手を殺してしま

        • ステーキを食べに行った話

           Toulouse においしくて安い(フランスのディナーにしては)レストランがあるから行こう、と誘われ、こちらに来て初ステーキを食べることになった。お店はチェーンでフランスに広く展開している ”Bistro Régent”。  ビーフや鴨、ユッケやサーモンのプレートがフライとサラダつきで14.90€で頂けるという驚異的にお得なレストラン。フランスのレストランはディナーとなると基本的に25€~であるため、その費用対効果が高すぎる良いレストラン。HPを見る限りカジュアルでおしゃ

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        記事

          ピレネーで滑った記録 2/11,2/12

           Toulouseでの留学生仲間、Laiaがピレネーに別荘を持っていて、スキーに来ないかと誘われた。二泊三日で行くことになった。  Laiaはカタルーニャのバルセロナから二時間離れた町出身で、大のスキー好き。留学前バルセロナの大学に通っていた時は毎週末滑りに行っていたらしい。スキーの教員資格も持っている。そんな彼女と、四年前を最後に滑っていない私が二人で訪れても大丈夫なのかという若干の不安はあったが、ピレネーの山々を拝みながらその地で滑るという誘惑には誰もが勝てないのではない

          ピレネーで滑った記録 2/11,2/12

          風土

          和辻哲郎 著  サハラ砂漠に行きながら読んでいた。砂漠に続くまでの禿山の、日本の「山」という感じからは想像できない寂しさ。ピレネー山脈を訪れた時も、その永遠と続く雪をかぶった岩山に、私一人ではどうにもできないその大きさに打ちのめされた。

          死の家の記録

          ドフトエフスキー作 望月哲男訳                              12.20

          死の家の記録

          月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短編集~

          ピランデッロ 関口英子訳  自分のことを、自分の持つ関係性を反射し合って見ることが最早かなわないとき、孤独になるのだが、その時孤独を感じている魂は、いったい何なのか。誰々という呼称は外からつけられるものであり、自分も外部を内面化した習慣によって自分が誰であるかを認識する。しかしそれがはぎとられて孤独となった時、この見ることの、重みを感じることのできる肉体と、意識は全く混ざり合わずに受け入れがたく遠くから見るような感覚で、その動きを見ることになる。一旦その意識を持ってしまうと

          月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短編集~

          French Workshop #1 2/14

          La pharse aujour'hui Plus…, moins… ~すればするほど~益々少なく~ Plus on prend le billet tôt, moins c'est cher. Le commissariat de police   警察署 Je suis allé a la police. Je suis allé au commissariat. 水について L'eau potable (×portable) 飲料水 potable=飲める L'

          French Workshop #1 2/14

          2/7

           Just after the last dinner with my best friend, I felt I have to go somewhere I can touch the breath of nature. Province. Côté d’Azur. Like somewhere I can escape from here. Like my first trip in France.

          Toulouseの古着屋

           今日は明日からの北欧旅行に備えてジャケットを買いにToulouseの古着屋へ。古着屋とはFriperieという。私がよく行く店は主に3つ。 Fripe Broc &Shop 一番小さいが、コンパクトにまとめられていて、セーターなどが充実。 Le Grenier d'Anaïs 人気の古着屋。女性もの、厳選されたかわいいアイテムが多い。 Kilostock 男女どちらも充実、ジャケット類が豊富。若い層向け?とにかく安い。 上の2店は今日閉まっていたのでKilostoc

          Toulouseの古着屋

          アンダルシアの旅Ⅱ コルドバ

          アンダルシア地方二日目はコルドバ。  朝7:40セビーリャ発の電車だったが、仲良くなった2人が朝早いバスで、一緒に来ないか誘われたので、朝5:30起き。  Googleではバスが6:20に来るとのことだったのに、バス停で待っていたマダムによると6:40まで駅行きのバスが来ないとのこと。2人の乗らねばならない電車に間に合わせるために、歩きで駅まで行くことになった。30分かけて、二人はキャリーバッグを持ち、私はバックパック一つでひいひい言いながら朝の街を歩いていった。  スペ

          アンダルシアの旅Ⅱ コルドバ

          アンダルシアの旅Ⅰ セビーリャ

           こちらに留学に一緒に来ている友人が12月初めアンダルシア地方に行くと聞いた。かねてからコルドバ、グラナダには行きたいと思っていたがどうにも旅行計画を立てるのが億劫で引き伸ばしにしていた。よし、ならば便乗して行ってしまおう。  そんな惰性でアンダルシア地方への旅を決めた。  今回の旅程は 12/6トゥールーズ→セビーリャ 12/7セビーリャ→コルドバ 12/8グラナダ 12/9グラナダ→アリカンテ(空港) (12/10アリカンテ→トゥールーズ 早朝) という旅としては

          アンダルシアの旅Ⅰ セビーリャ

          Brocante 蚤の市 à Toulouse

           一息つける土曜日がやってきた。突然木曜日の夜に体調を崩し、金曜日、「Homo Sapience」を夜に観劇した以外は、ほとんど臥せっていた。先週の気温は最高3度ほどだったのに、今週は最高10度、最低3度ほどで、すっかり暖かくなったのはいいものの、その急激な温度変化に体が参ってしまったのかもしれない。昨日今日とぐっすり寝て、起きたのは昼の11時。急にクロワッサンがどうしても食べたくなり、大学の向かいのパン屋に買いに行く。  この前メキシコに帰ってしまう留学仲間の一人を見送り

          Brocante 蚤の市 à Toulouse

          すげかえられた首

          トーマス・マン作 岸美光訳 光文社

          すげかえられた首

          あの大鴉、さえも

          大学のサークルで、少し取り扱った作品が、竹内銃一郎の『あの大鴉、さえも』。3人組の独身者が、大ガラス(エア)をお宅に運ぶ中繰り広げられる不条理の世界を、言葉と視覚で楽しむ戯曲になっている。 結局このコロナ禍で実現には至らなかったので、解釈だけ滔々と語ります。 まず、この脚本の元になったポーとデュシャンの考察から。 ポーの詩では言語の記号性が強調されると考えた。nevermoreの様に何の意味も持たぬ鴉の発する音でもそれに解釈を付け加えてしまう。言語により区分され人間

          あの大鴉、さえも