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贈りたい本その2 短歌が映画になるような『食器と食パンとペン』

きょうは、プレゼント本シリーズにしよう。

誰かに本を贈るときは2種類ある。ピンポイント式かバラマキ式。
ああこの人にはこれ!ってオーダーメイドで押し付けたい場合と。
もうひとつは、たくさん買ったお土産みたいに、誰に渡しても喜んでもらえるだろうなって思えるもの。人を選ばないもの。


これも、贈るのにはちょうどいい本じゃないかな。『食器と食パンとペン』

イラストレーターの著者が、1つの短歌に1つのイラストを描きそえているもの。同名ブログの書籍化とのこと。
Twitter:https://twitter.com/syokupantopen

▼内容はこちらで閲覧可。

ここに載っているのだと、これとか好き。

嫌な目に遭わないように部屋にいる 何もしていないのとは違う
(島坂準一)

あ、そうそう、収録短歌は有名なのではなく、一般人のものが多い。これもいい。肩肘張らずに読める。



詩や短歌ってさ、わけわかんないこと多いじゃないですか。イメージしにくくって読むのが億劫。(それがいいんだけどさ)

でも、こうしてイラスト化してもらうと、いっきに世界観が立ち上がる。
あのイラストさ、なんか夢のなかにいるような妙な浮遊感ありません?
見ていると、どんどん想像力が遊びだすかんじが心地よい。


でもね、本来、少ない情報をリッチにするのってこわい行為だと思うのです。実写化のガッカリってあるでしょう。文字だけのものを漫画にしたり、映画にしたりすることで、受け手の想像の余地を奪ってしまうことになるから。

短歌にイラストってのも、野暮になっちゃうこともあると思うの。
でも、この安福望さんは、まったくそうじゃない。

ビジュアルとして、1枚の絵に世界観を落とし込んでいるのだけど、へーそういうことねチャンチャン♪っていう安易な消化を許さないものばかり。見ればみるほど謎が深まる。異世界にワープするドアみたいな絵なんだ。


この本の表紙は、以下の短歌からの連想だという。

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた 
(岡崎大嗣)

実写化したら、フローリングに落っこちた無残なサンドイッチ。
でも色鉛筆のようなやわらかなタッチで描かれているのは、白いふかふかの食パンのうえで隣り合うシロクマと男の子。おなじくパンのうえで、三角座りしてサンドイッチを食べる赤ずきんちゃんと狼。そのあいだに挟まれる菜の花畑と白鳥。どうなってるのこの想像力。


うめざわ
*短歌が絵になるなら、短歌が音楽になってもいいよね。っていうか、もともとそれが歌だったんだろうけど。

ぼくたちは月でアダムとイブになるNASAの警告なんか無視して 
(木下龍也)

キリンジのエイリアン!と思ったので貼っておく。よい夜を。


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