16.入院していた若者たち
私がリハ病院に入院していた頃、特に私の病棟には10代から20代の若者がいました。
その多くは事故で脳挫傷や脳出血のダメージを負った人たち。
事故で脳挫傷や脳出血のダメージを受けても、事故前と全く変化なしの身体のままの人と、私の病院に入院していた人たちのように酷い麻痺や言語障害、身体の震えが止まらない、身体に変化はなくとも高次脳障害を負った人との2つに分かれるのだなと後年知りました。
名前を出していいものか分かりませんが、元プロボクサーの赤井英和さん、彼もまた急性硬膜下血腫、脳挫傷の怪我を試合中に負い、手術後生存率が5割しかなかったけれど、今は俳優、タレントとしてご活躍中ですよね。
彼も事故や怪我で甚大なダメージを脳に負った人ですが、回復後は前者です。
私の知り合いの女性も事故で一時ダメージが酷かったようですが、彼女も前者で今はピンピンしています。
この違いは何だろうか
正直分かりません。
ダメージを受けた脳の箇所が違うのか。
ダメージがそんなに甚大ではなかったのか。
リハ病院の主治医が、私のMRI検査の画像を見てつぶやいた言葉が引っかかりました。
「出血した場所が同じ左脳でも、もう少し頭頂部だったら麻痺は起こらなかったね。」
ああ、そういうことか。
頭を打って平気だった人、そのまま亡くなってしまう人の2分類に分けられると思いますが、人は亡くなった人のことを指して「打ち所が悪かったんだね。」と表現します。正にその通り。
私も出血箇所が別の場所であったなら、今も元気でダンスをしていて、生活の糧にすることが出来たのかもしれません。
だから、前述した若者たちは、打ち所が悪かった人の集まりだったのかも知れません。
事故のダメージは酷いと思う
では、彼らはどんなダメージを負ってしまっていたのか。
原因はバイク事故、ひき逃げ、車が大破炎上するような事故。
自損であったり、当て逃げだったりと様々でしたが、強烈な圧がかかるような事故です。
そんな彼ら、彼女らが共通して持っていた傷口、気管切開です。
気管切開の傷を持っていた彼らは、数か月単位で意識不明の重体に陥っていました。また、事故で気管を損傷している可能性もあってか、気管を切開し、正常な部位と結合しなければ窒息してしまう可能性があり、そういう処置を施されていました。
これは事故だけでなく、私のような病気でダメージを受けて長期スパンで意識がない人にも処置されます。
それを考えると、手術をした翌日、翌々日に目覚めた私はとてもラッキーだったと思います。
横道にそれました。
脳ってお豆腐のような感じで頭蓋骨の中にスッポリ収まっているのですが、事故の衝撃で頭の中を揺さぶらされてしまって。生後間もない赤ちゃんも、揺さぶってはいけないって言うでしょ?
それと同じでお豆腐のように柔らかな脳が、硬い骨に強烈な圧を掛けられて揺さぶられる、そんなことが一瞬にして起こった場合、脳は持ちませんから。
特徴的だったのは、病気と違って身体がワナワナと震えるんです。物を持つにも震えて持てない、そんな人が多かったです。
まとめ
同じように脳にダメージを受けた人でも、「動」でダメージを受けた事故被害者と、「静」でダメージを受けた病気発症者の私とでは、全く違った障害の出方でした。
みなさんもお気を付けて。
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