どっどど どどうど どどうど どどう
宮沢賢治の名作「風の又三郎」。
物語の中で、私が一番印象に残ったのが、冒頭から出てくる「どっどど どうどど どどうど どどう」というこのフレーズ。
宮沢賢治ってやっぱりすごい。
何がすごいって、普通なら風の音をこんな風に表現しないと思う。
私を含め、凡人なら、「ビュービュー」とか 「ゴーゴー」がいいとこ。
一体どうしたら、「どっどどどどうどどどうどどどう」なんて表現が出てくるのだろう。
しかも、気象予報士的視点で見ても、すごく理にかなった表現だと思う。
なぜかというと、風は常に強弱を繰り返しながら、様々なリズムで吹いているからだ。
天気予報でよく目にする風速は、一般的には10分間の平均風速のことを指している。
例えば、風速10mであれば、10分間の平均風速が10m/sということになる。
そして、その10分間の間に風は強まったり弱まったりしていて、平均風速の1.5~2倍の風速になることもある。
つまり、「ビュービュー」とか「ゴーゴー」のように単調ではなく、まさしく「どっどどどどうどどどうどどどう」のような複雑なリズムを刻んでいるのだ。
そして、この「どっどど・・・」は、その時の情景を浮かび上がらせる効果も抜群だ。
低い雲に覆われた曇天の下、強い風が吹き荒んでいる情景が、あたかも映像を見ているかのごとく頭の中にありありと映し出される。
さすが、宮沢賢治。恐るべし。
そして、そんな賢治作品が私は大好きだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?