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日常と非日常の交互浴|インスピレーションを最大化する方法

水風呂が大好きだ。

女子が好きな炭酸泉や薬膳湯やミストサウナには目もくれず、あつ湯と水風呂を3回ずつ交互浴するのが最高の入浴方法だと思っている。

水風呂にめざめたのは高校時代、4泊5日のバスケ部の夏合宿でのこと。
公立高校らしく、ボロボロの校舎の教室に雑魚寝するスタイルだった。
朝練・午前練・午後練・夜練を繰り返し、煎餅布団で泥のように眠る毎日。夜練から夕飯までのわずかな休息時間に、近所の銭湯へ行くことが唯一の楽しみだった。

あつ湯と水風呂の2種類しか浴槽がない昔ながらの銭湯で、あつ湯だけに飽きたので興味本位で水風呂に入ってみたところ、その魔法のような魅力に憑りつかれてしまった17歳の夏。それから20年来、あつ湯と水風呂を越境する交互浴人生だ。

そんな昔話はさておき、越境デザイン集団NAD(Nikken Activity Design lab)でワークスタイルデザインを主に担当している私が、最も大切にしている日常と非日常の『交互浴状態』。
これがいかにこれからのワークスタイルに重要かという、今日はそんな話。

ワーケーションの効果は、リラックス<<<インスピレーション

仕事には0→1をつくる仕事と、1→100をつくる仕事の2種類がある。
その、0→1を求められているクリエイティブワークに最も重要なのがインスピレーションだと思っている。

インスピレーションを最大化するために、日常と非日常を強めに横断したくて『旅をしながら働く』実証実験に踏み出した。と言っても過言ではない。

詳しくはこちらから。

定量と定性
定住と多拠点
オンラインとオフライン
フィジカルとバーチャル
クリエイティブとルーティン
・・・・・
対極にある状態の落差が大きければ大きいほど、日常と非日常の横断が出来る。そうしていると、あるときインスピレーションが舞い降りる瞬間が訪れる。慣性の法則で生活していると出るはずもない閃きに出会うことができるのだ。

だから私は、半分以上住んでいなくても門前仲町の家を解約しないし、荷物になっても紙と大量のペンを絶対に持ち歩くし、たまに意図的にルーティンワークを入れ込むことにしている。

あえて野外で仕事をすることもあるし、野犬のいるかもしれない裏道を歩いたりするし、レストランでは名前からは予測のできないメニューを頼む。

ワーケーションと聞いて、「殺伐とした都会のビジネスマンに癒しを」というようなニュアンスを捉えている人が多いけれど、わたしはワーケーションの最も価値のある効能は、このインスピレーションだと考えている。

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アフリカにだってインプットはある

ちなみにワーケーションを検討している人からの質問で、行き先をどのように選定しているのか?というのが多くある。

リモート会議の最初に「いま京都でワーケーション中です!」と言うとすんなり受け入れてくれるけれど、
欧州圏にいると「仕事ですか?」と言われ、
「バリにいます!」と言うとパリと間違われ、
「南米にいます!」と言うと羨ましがられ、
「アフリカにいます!」と言うと???となった。

『交互浴状態』が最大の目的なので、言ってしまえば行先なんて、これまで行ったことがなければどこでも良くて、「なんでそんなところに行くの?」と言われた時の答えは、「え?行ったことないからだけど?」または「そこに家があるからかなぁ」であって、それ以上でもそれ以下でもない。

アフリカにだって素晴らしい場や空間や急成長している市場など、未来のヒントがたくさんあるし、日本人として生まれ育った自分には、いつまで経っても非日常を与えてくれる麗しい大地なのだ。

つまり、目的地はどこだっていいのだ。

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ワーケーションは集中力と感度をムキムキに鍛えてくれる

そして在勤地から離れて仕事をしているときは、すぐに駆け付けられない場所にいるからこそリモート会議中やチームメンバーと会話しているときには、出来るだけ声や音から隠れた意図を汲み取ろうと集中する。

そして仕事を終えて街を散歩したり現地の人と会話している時は、見えていること思っていること気づいていること、今ここにいるからこその閃きをこぼさずインプットしようと最大限にアンテナを張る。

結果的に、ワーケーションをしていると集中力や感度がムキムキに鍛えられている感覚があるのだ。

そして週末が訪れる。平日にバキバキに研ぎ澄まされた感覚を全身に纏いながら、目の前に広がる絶景と戯れる。2日後に訪れる平日が来る前に、何が何でもやりたいことをやり尽くさねばという焦燥感に駆られて、さらにインプットモードが発動するので、中学生かってぐらい感情の起伏が激しい。

溢れるアイデアに溺死しそうになりながら疾走するそんな日々は、スペクタクルでしかない。

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旅をしながら働いたって1ヶ月で日常化する

だからといって常に旅をしていれば良いわけではない。
おおよそ1ヶ月も旅を続けると、非日常から日常に変化してしまうのだ。

新しい街に到着し、街の全体像を把握し、公共交通機関の乗り方を調べ、近所のスーパーで安いボトルワインと卵と野菜とソーセージを購入し、働く場所を確保して洗濯をし、仕事に向かう。
その先の旅程を組んで、また次の街に移動し、街の全体像を把握する。
という繰り返しの日々。
国をまたぐ時は、通貨相場で最低限の現地キャッシュをATMで下ろし、購入したSIMカードをWi-Fiルータに差し込めばまた同じルーティンを繰り返す。

渡航40ヶ国を超えたあたりで、何も考えなくても緊張感0で見知らぬ国に降り立てるようになっていた。海外に行くより渋谷に行く方が怖い、と今でも心の底から思っている。

日常と非日常の逆転現象を楽しもう

旅が長くなると日本(東京)での生活にワクワクどころかドキドキしたり、久々の面着での打合せやホワイトボードを使ったブレストなんていう普通のことに興奮してハイになったり。自分でつくった大鍋いっぱいの豚汁は格別だし、ぐうたらしながらバラエティー番組を垂れ流して部屋に引きこもる東京での休日は、日常であれば日曜夕方に貴重な休みを棒に振った…と落ち込むのだが、非日常感覚だと極上のご褒美になる。

自宅に定住し、オフィスや現場に出勤するというなんでもない日常が、非日常になるという逆転現象が起こるのだ。

その確変状態に入ると、これまで見えてこない視点を獲得したり、新しいことに挑戦する勇気が湧いてくる。ワーケーションにこれからトライする人は、水風呂にじっと浸かってやがて快楽を得るように、旅が日常化するくらい少し長めに滞在してこの『交互浴状態』をぜひ味わってみて欲しい。

これからも『交互浴状態』に貪欲に、日本で多拠点居住を続けていく。
そのうちどっちが表か裏か分からなくなって、分身出来るようになるかドッペルゲンガーが生まれるか、どこでもドアを手に入れるのかもしれない。(嘘)

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『交互浴状態』を空間デザインへ実装する方法

最後にその『交互浴状態』を空間としてデザインするときにどのように実装しているのかについて少しだけ。

そのキーワードが、いつもの場所見たことがない場所

いつもの場所をつくりだすツールと環境(Wi-Fi、家具・プロダクト、温熱風環境など)と、見たことがない場所をつくりだす場と仕組み(そこから見える風景、光や音や香りやお菓子などの五感を刺激するもの、人)のちょうどいい共存を目指して、これからの働く場をつくることを意識してデザインしています。※「ちょうどいい」のあたりにプロの技がある。

仕事するときに、なぜか捗ったり集中できたり、閃きがあるお気に入りの場所があったら、意識してまわりを見て欲しい。なにが自分が働く場にとって必要な要素なのか、きっと見つかるはず。


この文章を書いている途中に煮詰まったから、近所の銭湯に交互浴しに行った。

狭い銭湯の水風呂に知らないおばあちゃんと肩を並べて浸かりながら思考を整える。そんな東京での生活もそろそろ日常化してきたから、明日からまた旅に出たいと思う。

NADのメンバーの記事もどうぞ。


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