名創優品(メイソウ、MINISO)の上場とアフリカからの逃走
名創優品(メイソウ、MINISO)が10月15日、ニューヨーク証券取引所に上場しました。
シンプルな店舗設計や商品デザインは無印良品やユニクロを、宝探し感のある多品種商品の低価格販売はダイソーやドン・キホーテを模倣していると言われ、パッケージや店舗に書かれた変な日本語が目を引く雑貨小売チェーンです。
サムネイルの写真は、エジプトのMINISOの店頭写真。「ジャパンファストファッションデザイナーズブランド」と堂々と書かれており、商品のパッケージには「本社: 渋谷区神社前」*と記載されていますが、上場に当たっての登録申請書(目論見書)には、本社は広東省と書かれています。
MINISOは、中国で2,000店舗まで拡大した後、海外展開を活発化させます。店舗数では4割、収益では33%が海外です(2020年6月期)。
ほとんどがフランチャイズですね。MINISOのビジネスモデルでは、世界の工場中国を強みにMINISOがすべての商品を調達し、店頭在庫含むすべての在庫を持ちます。フランチャイジーはMINSOから商品供給を受けて、売れたら販売金額の62%を上納します。残りの38%から家賃、人件費、プロモーション費などを負担し、さらにブランドライセンス料、経営指導料をMINISOに払います。
このMINISO、2017年にアフリカにも進出しました。南アフリカを皮切りに、エジプト、モロッコ、ケニア、ナイジェリア、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、モーリシャス、マダガスカルへと、短期間であっという間に拡大を果たしています。
エジプトのMINISO
ケニアのMINISO
タンザニアのMINOSO
ナイジェリアのMINISO
写真はすべて©私
進出した最初の1年こそ、快進撃が伝えられていたのですが、エジプトやモロッコを除く国々については、内実は厳しかったようです。
何しろ客がいない。品揃えはかなりまずかったと思います。MINISOの「いつも何か発見があってちょっとした買い物ができる店舗」というコンセプトにおいては、マーチャンダイジングが肝だというのに、たとえば、
箸を使う人、アフリカで見たことないですね。。
やけくそのような一面のぬいぐるみ攻勢。。
中国で余剰となった在庫を、処分のためにアフリカに送ってきたような品揃えだなと思っていました。
MINISOにとってもアフリカは初めて、ナレッジを積んで少しずつ改善してくるのかと思っていたのですが、どうやら、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダの5カ国からは、すでにMINISOは撤退したようです。
おおむね1年~2年で撤退したことになります。
目論見書によると、これら5カ国の事業は2020年6月までに売却が完了しています。南アフリカ、ナイジェリア、ウガンダ、タンザニアおよびドイツは、創業者であり筆頭株主であるYe Guofu氏が保有する企業群に対してあわせて7元(110円!)で、ケニアはサードパーティーに1元(16円!)で売却されています。
数字を読み間違えていないか、何度も確認したのですが、合ってますよね??
いくらであっても、逃げたというか、看板をかけかえたことには変わりないですが。
恐ろしや。。
特に南アフリカに関しては、ほぼだまし討ちのように撤退したようです。
昨年の半ば頃から、どうやら南アのフランチャイジーへの商品供給が滞るようになっていた様子。ここで先に説明したビジネスモデルを読み返してみると、フランチャイジーは完全にMINISOに商品供給を依存しています。売るものがなければ家賃などの固定費を払うための資金も得られません。つまり、MINISOはフランチャイジーのキャッシュフローを握っており、兵糧攻めができるわけです。
フランチャイジーは、商品を供給して欲しい、南アの市場に合ったものを入れて欲しいと訴え続けていたようですが、逆に売れない商品を引き上げるといって店頭在庫を持っていかれたそうで、閉店を余儀なくされた店もでていたようです。そのうち不穏なことに、10月になって直営店が在庫一斉セールを始めます。
そして11月、フランチャイジーに説明なく、南アフリカのMINSO事業は閉鎖され、幹部はみな南アから去ってしまったそうです。こっそり商品を引き上げられるだけ引き上げていたんですね。
恐ろしや。。。
幹部が南アフリカを去ったあとに、南アのマネージャーに送ったというWhatsappメッセージ。
南アのフランチャイジー(合計9店舗)はいま、法的手段にでています。
なぜ短期間に一気に店舗を拡大できたか、そして売れもしない状態のまま改善されなかったか、その原因はフランチャイジーとその融資の仕組みに行き着くように思います。
フランチャイジーは、契約にあたってMINISOにデポジットを納めなければなりません。南アにおいては200万ランド(1,300万円)で、加えて店舗装飾費として250万ランド(1,600万円)を負担したようです。
しかしそのデポジットを調達するにあたり、フランチャイジーは創業者Ye Guofu氏が関わっているとされる(本人は否定)、オンライン個人間融資サービスの分利宝を用いていたと言われています。
商品の調達資金は用意しなくていい、店舗装飾から値決めから全部指導を受け、そしてキャッシュが厳しければ打ち出の小槌のようにP2P融資から得れば良い。
もちろん利子は払わなければならず、借金は返さねばならないのですが(そしてYe Guofu氏の儲けになる)、野心のある事業家からすれば、敷居低く、新味のあるコンセプトのインターナショナルブランドの小売事業を始められるチャンス、に見えたのではないでしょうか。
なお、分利宝は、MINISO上場直前の今年7月という絶妙なタイミングに解散したと発表されています。融資されていた金額はすべて貸し手に返金されたそうです。
ところで、そうやって騙された?南アのフランチャイジーの中には、今度は、MINISOのパクリめいた、中国YOYOSOのフランチャイジーになろうとしている会社もあるようです。
そっくりです。どっちも凝りませんね。。
ぬいぐるみが好きなことは、わかりました。
いいかえれば、こういう、日本で馴染みがある店舗・商品テイストは、アジア圏以外でも魅力があるということでしょうか。すでに南アやモロッコでYOYOSOは開店しているようです。
ところでMINISO、店舗自体は今も元気に開店しています。出張に行けていないのでいまいるケニアしか確認していませんが、こないだも、コロナ禍で運動不足になっているので、体重計を買いました。
こういうちょっとしたものを安く買うのに、便利なんですよね、MINISO。。
そして、「ひとつ買ったらもうひとつプレゼント!」キャンペーン中だったようで、同じ体重計を2台持って帰ることになりました。いりませんでしたけど。
もしかしてこれも、在庫一掃セールだったんですかね。。
ちなみに、MINISOの目論見書には投資のリスクとして、「消費者が当社ブランドをよく理解していないがゆえに、MINISOを『日本のブランド』だと誤解するリスクがあります」と書かれていて、みごとな責任転嫁ぐあいにちょっと笑ってしまいました。いずれにせよ、今後は中国企業としてやっていくようです。
* 「本社銀座」から修正しました。銀座は株式会社名創優品産業の登記住所でした。なお、「渋谷区神社前」という住所は実在していません。
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