見出し画像

アフリカにおける新型コロナウイルスの状況(その1)

新型コロナウイルスの感染が全世界に広がっています。

アフリカ大陸では、2月14日にはじめてエジプトで感染者が発見されました。3月8日時点で、エジプトの他、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、セネガル、ナイジェリア、南アフリカで感染者が見つかっています。

追記(3月11日): 3月11日時点では、これにカメルーン、ブルキナファソ、トーゴ、コンゴ民、コートジボワールが加わりました。合計感染者数は130人ほどとなっています。

3月8日には、はじめての死者がエジプトで1人発生しました。ドイツ人の旅行者で、感染したのがエジプトでかドイツでかは不明とされています。

これまでのアフリカ大陸での感染者は、発表されている限りだと、想定され警戒されていた中国ではなく、イタリアからの渡航者が多いです。北アフリカに感染者が多いのも、イタリアとの人的・経済的な関係の深さからかもしれません。

中国からの感染者がいない/少ないのは、春節後に中国からアフリカに戻ってくるはずだった人たちが戻ってきていないからかもしれません。ケニアでは、知り合いの中国人経営者も多くが戻ってきておらず、明らかに街にも中国人が少なかったです。この1~2週間で少しずつ増えている様子です。

感染者の総数はアフリカ大陸合計でもまだ30人未満で、死者が1人でた段階ですが、アフリカ各国の政府は感染が進行している国からの入国禁止や渡航後の14日間の自主隔離といった措置をすでに開始しています。

日本から渡航する人に関しては、ナイジェリア、ウガンダ、ブルンジ、リベリア、コモロが、入国後(コモロは入国前)の14日間の隔離を求めています。これらの国への入国時に渡航歴を申請して、自主隔離に入る形となります。ガーナは、在日ガーナ大使館でのビザ発給を停止しました。基本的に事前にビザを申請しなければならない国なので、実質的には日本からの渡航の禁止です。

これら以外のアフリカの国では、3月8日時点、日本からの渡航に関する規制はありません。

もうひとつ、アフリカへの入国に影響することとして、日本政府が決定した中国・韓国からの入国に対する14日間の隔離措置があります。日本とアフリカの間を結び、比較的よく使われている、エチオピア航空の韓国経由便や、中国南方航空の中国経由便、南アフリカへの香港経由便も、トランジットとして空港内を歩くだけですが、日本入国時に隔離の対象となります。

すでにエチオピア航空は同便の一部欠航、キャセイパシフィックは香港・日本間の全面運休を発表しています。なお、南ア航空の香港便は、コロナとは関係なく、同社の経営再建の一環で2月末で撤退しています。

アフリカでも、今回の世界的な感染の動きは、かなり報道されています。エボラやコレラをはじめさまざまな感染症がふだんから発生しているのでそれほど動じないかと思いきや、わりと恐れられています。アフリカの外で発生したものがこちらにやってくる・・という報道のされ方が、不安を生むのかもしれません。

いまのところアフリカで発見された感染者は、外国人や外国から戻ってきた人が中心です。人が密集するマーケットや公共の乗り物に接点があるような人たちでないためか、一気に感染が広がるといった状態にはなっていませんが、予断は許しません。ビル・ゲイツは、アフリカで感染が広がれば死者1,000万人の事態を招きかねないと警告しています。

アフリカには12億人の人口がいるので、死亡率が0.8%であったとしても、まんべんなく感染が広がったならば死者は1,000万人に達します。

ただ一方で、アフリカは若い人が多いです。たとえば、感染者が一人見つかっているナイジェリアの人口ピラミッドは、こんな感じです。

画像1

先日WHOが発表したレポートによると、これまでのところ、重症化したり死亡したりする人は年齢が高い人が多かったようです。ナイジェリアの人口構成比と照合すると、

・「19歳未満の感染者は全体の2.4%で重症化する人はごくわずか」
→ナイジェリアの人口の54%が19歳以下
・「重症や死亡のリスクが高いのは60歳を超えた人や持病のある人」
→ナイジェリアで60歳以上の人は5%未満しかいない

なので、感染者は増えても、死亡率は低く押さえられるのではないかと、期待しています。

アフリカの人は、手で食べる料理が多いからか、意外とふだんから手洗いをします。トイレやレセプションなどに消毒液が置かれていることも多いです。2014年の西アフリカでのエボラの流行を機会に、空港などにおける体温測定や検疫の設備や仕組みができましたし、エボラの際に、感染を防ぐための医療従事者のオペレーションや隔離の設備や方法がつくられました。今回もすぐに検疫が開始され、エボラの経験が生きています。なんとかビル・ゲイツが想定するような事態にはならないことを願っています。

実際はイタリアからの感染が多かったとはいえ、コロナ=中国=アジア人というイメージが強い中、アフリカでの日本人やアジア人への風当たりはどうでしょうか。

ソーシャルメディアや伝え聞くところだと、アジア系の風貌の人はいつもは道端で「チャイナ!」と呼びかけられるところ、「コロナ!」と声をかけられたり、そのようなことが原因で現地の人とアジア人の間でトラブルがおきたりという例が起こっているようです。

ただ、ふだんの「チャイナ!」という無遠慮な声かけも、基本的には「知らない人にはむやみに話しかけない」「他人の個人情報やプライバシーに触れない」という都会特有のルールがない場所(たとえば田舎)や人(都市的な距離感を適用していない人や子どもたち)で発生していると思っており、「コロナ!」も同様かなと思っています。アフリカの中でも都市度が高いところやオフィシャルな場では発生しないでしょう。

空港では、サーモグラフィ装置や電子体温計を使った体温チェックや検疫のための用紙の提出が行われています。アジア系の風貌の人には特に念入りに渡航履歴を質問する様子も見られます。私もなんどか入国の際に、さっと警戒した視線で見つけられ、どこから来たのか、中国に最近渡航したかと質問されたりしました。説明すれば問題ありません。

人と接近するような場所で、アジア系だからと警戒心をもって対応されるのは、ある意味仕方がないところがあるかと思います。ウイルスは見えないですから相手も不安でしょう。(感染していないならば)大丈夫ですよとにっこりとほほえみましょう。

どこの国でも発生しているように、デマや買い占めなども一部起こっていますが、総じて、アフリカにおいてはまだ、それほど緊張感のある状態にはなっていないといえるかと思います。

感染症に関しては、いつもはアフリカが感染源で、日本が警戒する立場ですが、今回は逆です。日本をはじめとする感染が広がっている国から感染を広げられないように、アフリカ側が警戒しています。

日本ではさまざまな活動が中止、制限され、企業活動も制約を受けている中、多くの企業でアフリカへの海外出張も難しくなっていることかと思います。私も、再入国ができなくなる/自主隔離しなければならない可能性を考えると、当分は日本には帰れないだろうとあきらめています。

一方で、私も当社のスタッフも、アフリカ内では制限なく動くことができます。アフリカへの出張ができなくなって困っている方がいらっしゃったら、お手伝いできることもあると思いますので、以下のContact Usからぜひご連絡ください。

祈りを込めて、このnoteの写真をお花見の写真にしてみました。桜の咲く頃には、お花見ができるような状態にまで回復していることを、アフリカから祈っています。


追記(3月9日): 週が明けて、「出張が全面禁止になって困っている」という声を企業の方から多くいただきました。不要不急の出張ならば延期ができるかと思いますが、取引先との面談や年度末までに終了させる必要がある面談や調査など、喫緊のものもあるかと思います。

幸い当社はアフリカに拠点を持っており、日本人・現地スタッフが滞在しております。アフリカ内でのご用件でしたら、当社のケニア法人や南アフリカ、ナイジェリア、エチオピアなどの拠点において、またはそれらの国からの出張によって、中止になったみなさまのご出張へ代わりにご対応することができるかと思いますので、ご遠慮なくお問い合わせください。緊急時ですので、可能な限り迅速に対応させていただきます。

以下にお問合せ方法について記しました。御覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?