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中国と米国、アフリカの人にとってどちらの印象がよい?世論調査より

世界中が米中対立の影響を受けていますが、アフリカも例外ではありません。

アフリカにとって世界の大国である米国は、特に軍事上で、また政治上、経済上でも重要な国です。ケニアは米国との二国間貿易協定締結を目指すことに踏み切り、現在交渉が行われています。

一方で、中国は、インフラから日用品まで広く供給し、アフリカの製品を輸入してくれ、雇用を生み、製造業にも投資してくれる重要な国です。コロナ禍の初期に中国が輸出を中止した際には、アフリカ経済は大きな影響を受けました。

ファーウエイはアフリカの多くの国で5G整備に関わっていますが、たとえ米国がファーウエイ製品を禁輸措置にしようとも、いまのところファーウエイの使用を止めると決めた国はアフリカにはないと思います。融資や貿易金融を用いて供給をしてくれる中国は外せないのです。

その2カ国への人々の印象を比較できる調査結果が先日発表されました。アフリカの18カ国(2つ目のグラフにある国々)で、各国の一般成人1200人または2400人を対象に行われた世論調査です。

Q 自国の発展にとって、ロールモデルとなる国はどこだと思いますか?

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米国がトップです。ただ中国との差は9ポイント。

国別にみると、ブルキナファソやマリでは、大差をつけて中国が高いです。親米といわれるシエラレオネ、ガーナ、ケニアなどは米国が強いですね。

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アンゴラは中国から最も多くの債務を受けてるアフリカの国です。それがネガティブに語られることが多いので、中国を選んだ人が少ないのかもしれません。

Q 全体的にみて、自国に対するそれぞれの国や組織による政治的または経済的な影響は、ポジティブですか/ネガティブですか?

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中国と米国は、ほとんど同じです。人々の認識では、ポジティブかネガティブかという観点では、両国はそう違いのない国であるようです。6割がポジティブにとらえており、10%台がネガティブにとらえています。

いいかえれば、中国への印象は、そこまで悪くありません。もっともポジティブの比率が高い国です。

なお、ネガティブが最も高いのは、旧宗主国(Former colonial power)でした。ケニアならば英国、コートジボワールならばフランスです。

アフリカの人々は、中国がアフリカ各国に多額の融資を行っていることを知っているのでしょうか。知っていてポジティブな印象を持っているのでしょうか。

Q 中国が、自国に融資や開発援助を行っていると聞いたことがありますか?

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18カ国平均で48%と、国民の半分が知っています。

トップのケニアでは、後述しますが、一時期中国による鉄道や港湾、道路への融資についてさかんにメディアで取り上げられました。74%とは高い数値です。

国によって中国からの融資の多寡の差があるので同じように認識されるわけではないと思いますが、融資額の割に比率が少ないのはエチオピアやアンゴラでしょうか。

次のグラフは、2つの質問への答えが一緒になっているため分かりづらいですが、

Q(上のオレンジ)自国は、債務を中国に返済する必要があると思いますか?
Q(下の黒)自国は、中国から資金を借りすぎだと思いますか?

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ケニア、アンゴラ、ナミビアを除くと、思ったより「返さなければならない」とする声が多く、「借りすぎ」とする声が少ないです。「(中国になど/融資条件に納得がいかないので/)返す必要はない」や「(債務の罠を警戒して)中国からはもう借りない方がいい」という意見は多数ではないようです。


米国は、トランプ政権以降、アフリカに対して冷淡です。前大統領のオバマ氏はアフリカ出身の父を持ち、大統領になる前から、そして任期中もアフリカの国々に訪問していました。トランプ大統領は、任期が終わろうとしているいまも、いまだアフリカに来たことがありません。

「世界の米国」路線を捨てたこともあり、アフリカにおく米軍の軍事拠点も縮小しています。コロナ以前からアフリカのいくつかの国のビザ要件を厳格化したり、黒人を蔑視する発言を度々していることは、アフリカの人々における米国への反感を育てたと思います。

先日トランプ大統領は、アフリカの人々、特に南アフリカの人にとっては英雄であり、いまでも心の父であるネルソン・マンデラ氏について、悪しざまに言っていたことを暴露されました。

マンデラ氏が属した南ア与党ANCや、ネルソン・マンデラ財団などが抗議を表明しましたが、他の国も含めて大きな批判になるわけではないところが、アフリカにとっての米国の重要性を示しているといえるかもしれません。

一方、そこそこ悪くはない中国への印象も、安泰ではありません。中国を非難する声(債務の罠、資源や資産を略奪される恐れ、経済を牛耳られる、不良品を輸出している・・・など)はアフリカ国内でもあり、政治家が政争の具に使い出したこともあって、この数年大きくなっているように思います。

さきほどの質問にあった中国への印象について、ポジティブとした人の比率を、5年前と比較したのが以下です(上が今回、下が5年前)。

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国によってまちまちですが、おおむねポジティブな印象は「下がっている」といえそうです。マリ、ケニア、ボツワナ、ガボン、ナミビア、シエラレオネ、チュニジアでは10ポイント以上下がっています。

ケニアについては個人的にも、2018年頃から中国が悪く言われることが増えたように肌で感じています。それまでは、珍しい外人として中国が揶揄されることはあっても、中国を脅威として捉え批判的な立場に立つ声は、大勢ではなかったように思います。

ちょうどその頃、政治家がアンチ中国キャンペーンを張り、メディアでも「債務の片にモンバサ港が取られる」というような中国の恐怖を煽る報道が多かったことが、背景にあると思っています。

なお、アフリカでも「コロナは中国から来た」という印象が強く、人々のイメージにおいてマイナスに働いたと思います。今後アフリカ各国政府は、コロナによる経済悪化で返済が困難になっている中国からの債務について、返済交渉をしていかなければなりません。その過程でさらに印象が悪化する可能性もあります。

ところで、アフリカの人々における日本の印象はどのようなものでしょうか。

悪い印象はあまりありません。アフリカのどの国でも、「日本人だ」と告げて悪く思われることはほとんどないです。ただ、身近に日本製品や日本人がいるわけでもないので、具体的には何も知られていない、「印象はよいがよく知らない国」であるのが実態だと思います。

「技術が発展した経済大国」「規律と信頼」といった言葉で日本は表現されますが、これらはほとんど、アフリカで普及している「トヨタ車」から来たものではないかとさえ思っています。トヨタ車は、壊れず、信頼でき、技術が高い、ちゃんと修理できるよい車として、とてもブランド力があります。

調査出所:Afrobarometer

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