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アフリカベンチャーニュース(2019年10月)

アフリカでは今、次々と新しいベンチャー企業が生まれています。世界の投資家からも注目されており、内外からの資金調達も活発です。アフリカならではの事業が発明されていると同時に、シリコンバレーや世界で普及する新しい技術・ビジネスモデルとの時差は確実に縮まっています。

アフリカにおけるベンチャー企業、ベンチャー投資、ベンチャー的な取り組みをまとめました。今月は、ケニア、エジプト、アルジェリアの物流・配送、配車スタートアップ、信用スコアリング、スーパーアプリ、ロボット、宇宙、暗号通貨などを取り上げています。
日本語で報道されない、現地の生の情報を、1カ月単位でまとめます。

なお、これらアフリカのベンチャー企業に関するニュースは、こちらの週刊アフリカビジネスをお申し込みいただければ、毎週定期的にお手元に配信されます。ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。


【ケニア、ナイジェリア】ケニアの物流スタートアップLoriがナイジェリアへ進出(10/1)

ケニアを拠点とする物流スタートアップLori Systemsがナイジェリアへ進出する。

同社は2016年創業。アフリカでは年間1,800億ドルが物流費として費やされており、物流費がコストに占める割合が高いという問題意識から、同社は荷主がオンライン上でトラック運転手を探せるプラットフォームを提供している。荷主がトラックの種類などを指定して発注し、アプリ上で荷主と提供者のマッチングが行われる。
ナイジェリアにおいては、Kobo360やTradeDeportが競合となる。

Loriは、ケニアの他に、ウガンダ、ルワンダ、南アフリカを含めた9カ国で事業を展開している。2018年6月に資金調達ランドを終了し、870万ドルを調達している。


【ケニア】シンガポールの信用スコアリングフィンテック企業CredoLabがケニアに進出(10/2)

シンガポールのクレジットレーティンを提供するCredoLabがケニアに進出する。

CredoLabは2016年創業。顧客のスマートフォンから5万以上のデータを集め、50万以上の行動特性に変換し、それらから信用スコアを割り出す。
ケニアの銀行がデジタル化の転機をむかえている中、CredoLabは、従来の信用調査では情報が足りないようなミレニアル世代、新卒者、自営業者にも対応できるよう、行動から信用を計測することに着目した。

ケニアで信用スコアを扱う企業はMetropal、Creditinfo、Transunion Africaなどがあげられる。


【エジプト】エジプト中央銀行が28銀行にモバイル決済事業許可を与える(10/2)

エジプト中央銀行は、エジプトの28行の銀行に、国内市場でモバイル決済サービスを提供することができる許可を与えた。アラブ諸国の中央銀行では電子取引を推進しており、2020年にはArab Clearing Systemイニシアチブを導入する方針。今回のエジプト中央銀行の動きはその端緒となった。

中央銀行の動きはまた、2019年4月16日に可決された、現金以外の支払いについての法的枠組みに関する法律Non-cash Payment Lawに則っている。

エジプトにおけるモバイル決済利用者数は2019年6月末時点で1,350万人で、取引利用額は2019年9月時点で約200億エジプトポンド(1,300億円)だという。

全国的な電子決済カードMeezaの利用者数は9月までに200万人に到達した。MeezaはPOSシステム約76,000台と13,000台のATMと繋がっており、取引回数は合計51万回、取引金額は5億6,400万エジプトポンド(36億円)に上っている。
※1エジプトポンド=6.5円(モーニングスター、10/4)


【ケニア】ケニアのCellulantが決済、コマース、金融サービスを組み合わせた消費者向けアプリ Tinggを発表(10/8)

デジタル金融サービスを提供するケニアのCellulantは、決済、コマース、金融サービスを組み合わせた消費者向けアプリ Tinggを発表した。

公共料金の支払いや食品、サービスの購入を可能にするよう様々な企業と提携している。たとえばガス配達を行うGo Bebaと提携してTingg Assisted Shoppingを提供したり、外食のKFCやSimbisa Groupと提携してTingg Foodを提供している。アプリでは投資グループやファンドレイザーの獲得や管理もできる。展開国は、ナイジェリア、ケニア、ガーナ、ウガンダ、タンザニア、モザンビーク、ザンビア、ボツワナ。

Cellulantは電子決済ゲートウェイを提供しており、消費者と企業をつなぐ120以上の銀行、40の携帯通信会社との相互利用を可能にしている。


【アフリカ全般】米マスターカードがアフリカ14カ国で事業を展開する携帯通信会社Airtel Africaとの提携を発表、Airtel ユーザーはマスターカードのサービスの利用が可能に(10/9)

携帯通信会社Airtel Africaはマスターカードとの提携を発表した。アフリカ14カ国にいる1億人以上のAirtel Africaユーザーにマスターカードのグローバルネットワークへのアクセスを提供する。

このサービスはプラスチックカードを経由しないバーチャルカードでアクセスでき、銀行口座は必要ない。マスターカードに対応した提携店舗やオンラインでの支払い、QRコード決済が可能となる。加えて、優遇レートでの外貨交換や、公共料金や買い物の支払い、資産管理システムなどの特典も利用できる。

アフリカでのモバイルインターネット通信は、低価格スマートフォンやAirtelなどの企業が提供する高速GSMネットワークによって急速な普及を見せている。


【エジプト】エジプトの配送サービススタートアップSprintがシード資金の調達を完了、サービス提供エリアの拡大へ(10/7)

エジプトのロジスティックススタートアップSprintは、エンジェル投資家からシード資金として、125万ドルの企業価値のもと、「6桁ドル」の資金調達を行った。Sprintの拠点は現在カイロのみであるが、調達資金を用いて今後Alexandria、Mansoura、Port Said、Suezに拡大する。

Sprintは2018年に創業し、ラストワンマイルに対するソリューションをeコマース業者に提供している。月当たり30件に満たない注文を受けるような小規模eコマース事業者に対して配送サービスを提供する。配送プロセスはテクノロジーに対応しており、顧客の位置追跡と自動通知を提供する配送管理システムと、すべての注文を監視するダッシュボードを備えている。このシステムはShopifyやWooCommerceなどの主要なeコマースプラットフォームと統合することもできる。

配達を行うのは、Sprintによって配車される同社正社員が4割、フリーランスが4割、残り2割が企業である。カイロでは全ての注文の翌日配達を行っており、受け取り払いへ対応も行う。
2018年10月のサービス開始以来、前月比35%の成長を続けているという。


【ルワンダ】ベルギーのロボット会社ZoraBotsがルワンダへの進出を検討(10/11)

ベルギーのロボット会社ZoraBotsは、アフリカではじめての進出先としてルワンダへの進出を検討している。ZoraBotsはアジア、ヨーロッパ、北米、南米で事業を展開している。

ZoraBotsは2011年に創業。同社のサービスロボットは、人間に奉仕するヒューマノイドロボットのようなもので、人工知能(AI)や人工知能や探知機を搭載し、人と会話したり製品を宣伝したりする「ヒューマノイドルック」ロボットである。老人や子どもの介助をする世界最初の人型ロボットも製作し、日本も顧客の一つである。ルワンダでは現地の起業家の雇用や若者にロボティクスやプログラミングを教育する事業を開始する予定。


【エチオピア】宇宙開発仏ArianeGroupがエチオピアの人工衛星の開発施設の建設を受注(10/15)

エチオピアは近いうちに、同国の宇宙開発プログラムの第2段階として、首都アディスアベバに人口衛星の組立、統合およびテストを行う施設を建設すると発表した。このプロジェクトは、フランスの宇宙開発企業ArianeGroupが受託している。2020年1月にスタートし30カ月で完了する。

投資額は明らかにされていないが、エチオピア技術革新省によると、欧州投資銀行がエチオピア政府およびArianeGroupとの契約を通じてこのプロジェクトを支援している。施設が完成して以降は、Ethiopian Space Science and Technology Instituteが管理を行う。


【アルジェリア、モロッコ】アルジェリアの配車アプリYassirがモロッコで夜間営業を開始。タクシー運転手を対象(10/17)

アルジェリアの配車アプリYassirが、モロッコで夜間の営業を開始した。

YassirはUberと似た配車アプリサービスであるものの、個人ではなく既存のタクシー運転手を主に対象としている。ユーザーが住所を入力すると、そばにいるタクシーが配車される。利用できる時間は現在のところ午後8時~朝7時で、乗客、運転手ともに相手を見つけづらい時間帯に限定している。費用は通常のタクシー料金より高い。

同社は、他の国で配車アプリサービスを巡って個人ドライバーとタクシー運転手の間で起こっている対立を避けるために、タクシー運転手と契約することを重視していると述べている。2018年2月、米国の配車アプリUberは、タクシー運転手がUberの「フェアでない競争」に対して抗議活動を行った後、3年前に開始したサービスの停止を決定した。


同社はモロッコでのプレゼンス拡大を目指している。今後は、出前などのサービスを充実させていき、より多くのモロッコの都市で利用できるようにサービスを拡大する予定である。

Yassirは2007年にアルジェリアで創業。現在はアルジェリアの他、チュニジア、そしてモロッコの3カ国で事業を行っている。


【南アフリカ】通信会社MTNが南アフリカでモバイルマネーサービスを再展開(10/17)

通信会社MTN南アフリカが、12月末までに南アフリカで新しいモバイルマネーサービスをリリースすると発表した。

南アフリカではこれまで2度似たようなモバイルマネーサービスが失敗に終わっている。MTNは2012年にモバイルマネーを開始し、200万人の顧客を得たものの、サービスを提供するためのオペレーションコストが高くなりすぎビジネスとして成立しないとして、2016年にサービスを停止した。今回は、他のアフリカ諸国では普及しているモバイルマネーサービスを投入するという。
※1ランド=7.3円(モーニングスター、10/19)


【アフリカ全域】アフリカ14カ国で携帯通信事業を行うAirtel Africaがアフリカ33カ国で金融事業を行うEcobank Groupと提携(10/21)

アフリカ14カ国で通信事業を展開する携帯通信会社Airtel Africaと、アフリカ33カ国で事業を展開する汎アフリカ銀行グループEcobankの親会社Ecobank Transnationalが提携を締結した。


今後各国の競争当局の承認を得ることになるが、実現すれば、AirtelのモバイルマネーAirtel money利用者はEcobankのデジタルサービスを活用し、入金や出金、送金、店舗での決済、融資や貯蓄といった銀行サービスを使えるようになる。さらには、Ecobankの法人口座保有者が給与を一括でAirtel Moneyに支払うことや、Ecobankが発行してAirtel Moneyユーザにデビットカードやプリペイドカードを発行することも可能となる。


【ケニア】暗号通貨のBitPesaがAZA Groupへリブランド、南アフリカ開発銀行から1,500万ドルの融資を獲得(10/22)

暗号通貨を用いた決済サービスを手掛けるBitPesaは、企業名をAZAへとリブランドすると発表した。AZA Groupの傘下に決済サービスのBitpesa、決済と取引所サービスを提供するTransferZero、BtoBサービスのBFXを置くこととなる。あわせて南部アフリカ開発銀行(DBSA)から1,500万ドルの融資を得たことを発表した。

BitPesaは2013年に創設された。2013年からの累計取引額は10億ドルという。従業員は100人超で、ラゴス、ロンドン、ナイロビに地域本社を持ち、ダカール、マドリード、アクラ、カンパラにサテライトチームがいる。近くヨハネスブルグにも拠点を設置する。今後は中東、北アフリカ、南部アフリカへと事業を拡大したいとしている。


TransferZeroは2018年2月にBitpesa(現AZA Group)によって買収された。BFXは企業の決済向けに開発された店頭プラットフォームである。


【ケニア】ケニアの物流マッチングアプリSendyが200万ドルを調達(10/29)

ナイロビに拠点を置く物流マッチングアプリのSendyは、オランダのGoodwell Investmentsから200万ドルの資金を調達した。


Sendyは2014年創立で、ケニア、ウガンダ、タンザニアで荷物を運びたい企業や個人とドライバーを結びつけるアプリを展開している。依頼主が払う手数料がSendyの売上となる。

プラットフォーム上には700人のドライバーが登録されており、過去3年間で18万件の配達実績がある。2018年の売上は150万ドル。現在新たな配送モデルとして、荷物を中央集荷施設にまず運び、その後個配する「代理店モデル」の検討を行っている。


【ケニア】ケニアの食品流通スタートアップTwiga Foodsがゴールドマンサックスなどから3,000万ドルを調達(10/28)

ケニアの食品流通スタートアップTwiga Foodsが、ゴールドマンサックスをリードインベスターとする既存投資家の国際金融公社(IFC)、TLcom Capital、Creadevなどを含む投資家から、エクイティ及びデットあわせて3,000万ドルを調達したことを明らかにした。これまでの合計調達金額は5,500万ドルとなる。

Twiga Foodは2014年設立。オンラインプラットフォームを用いて農家と小売業者をマッチングし、農産物の需要を高めるサービスを提供するスタートアップの1つ。注文を受けてから18時間以内に野菜や果物を小売業者に配達し、M-pesaのようなモバイルマネーを用いて48時間以内に農家に支払う。

今回の投資はプラットフォームの技術的アップグレードと新しい流通センターの設立に充てる。新しい流通センターは、冷蔵室、ベルトコンベアー、農産物選別用の機材を備える。

同社はインフォーマルな農産物の生産および流通の市場規模を年間3,000億ドルと推定している。2020年半ばまでに他のケニアの都市に進出し、その後他の国へと進出することを計画している。


【ナイジェリア】ノルウェーOperaがナイジェリアの中小企業に向けセールスツールOLeadsを開始(10/28)

ノルウェーのソフト開発会社Operaは、ナイジェリアの中小企業向けのセールスツールOLeadsのサービスを開始した。9月にサービスを開始してすでに3,000社以上が利用しているという。OLeadsでは、中小企業がモバイルウェブサイトを5分ほどで製作することができ、またウェブサイト上のデータの管理も可能である。中小企業の企業および製品やサービスの認知度を高め、売上を伸ばす。

ナイジェリアにおける中小企業は4,000万社を超えるが、その多くは急速なデジタル化に対応できず、オンライン化が進んでいない。ナイジェリアの人口の半分はすでにインターネットに接続しており、さらなる普及が見込まれている。OLeadsはコンテンツ連動型広告プラットフォームのOpera Adsとの統合も行う。


【エジプト】エジプト初のスマートフォンメーカーSICOがドイツへの輸出を開始へ。中国企業とのOEMも開始へ(10/29)

エジプト初のスマートフォンメーカーであるSilicon Industries Corporation(SICO)は、11月からドイツへの輸出を開始する。湾岸諸国には既に輸出をしており、今後はオランダ、オーストリア、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドへも輸出を開始する予定。

SICOは資本金2億エジプトポンド(13億円)で2017年12月に設立された。株式の20%はエジプト情報通信技術省が所有する。上エジプトのアシュートにある工場の製造可能台数は年間200万台で、現在はその約25%を輸出している。2020年末までにこれを50%に引き上げたい考え。
Nile Xというブランド名で販売されている同社の携帯端末は、中国規格の3G/4G技術を使用している。中国の3企業との間にOEM生産に関する合意も締結しているという。
※1エジプトポンド=6.6円(モーニングスター、11/1)


【ルワンダ】独フォルクスワーゲンがルワンダで自社の配車アプリ用に電気自動車15台を導入。独シーメンスが電気ステーションを15カ所に設置(10/30)

独フォルクスワーゲンは、同社のGolfの電気自動車モデルのルワンダへの輸入を行う。同社はすでにルワンダで自動車の組立生産を行っている。

フォルクスワーゲンは、電気自動車の生産目標を2020年までに世界で60万台としている。ルワンダには50台規模を輸入し、2018年12月に開始したフォルクスワーゲンの配車アプリMoovに使用し、首都キガリのインフラと気候下でのパフォーマンスをテストする。独シーメンスが電力供給ステーションをキガリに15カ所設置する。

ルワンダの発電容量は296メガワットあり、電気自動車は主として電力が余る夜間に充電される。他のアフリカの国々と比べて、ルワンダの電力供給は比較的安定している。


【南アフリカ、コートジボワール】南アのテクノロジー企業Axon Wirelessがアフリカ初のSIM登録におけるタップアンドゴーシステムを開発、コートジボワールで初導入(10/30)

南アフリカのテクノロジー企業Axon Wirelessが、携帯のSIMカード登録に際してワンタッチで登録できる「Tap and Go」システムを開発、コートジボワールで導入した。アフリカでは初めて。

登録にあたって、携帯画面に国民IDカードを置くだけで、所要時間は45秒で携帯SIMカード登録における人物確認プロセスが終了する。登録コストを最小限に抑えることができる上、このシステムは柔軟に応用できるため、様々な国の登録要件に合わせることができる。

同社は、南アフリカにも同システムを導入することを計画している。過去にザンビアでZambia Information & Communications Technology Authorityの要件のもと、同社ソフトを用いて数百万人以上のモバイルユーザーの登録を3,000のエージェントを通して9カ月で行った実績がある。


【ケニア】英バッテリーテクノロジー会社AceleronがTotalと提携しケニアで中古バッテリー再利用化事業を開始(10/31)

英バッテリーテクノロジー企業Aceleronは、Total Access to Energy Solutions(Tates)と提携し、ケニアで中古バッテリーの再利用化事業を開始する。クリーンエネルギーの活用と廃棄物問題の解決に取り組む。

Tatesと提携企業から使用済みリチウムイオン電池を回収し、長く使えるリユースバッテリーパックに転換する。Tatesはケニアの低所得層を対象にソーラーランタンプロジェクトをじししており、それによって生じた使用済みリチウムイオン電池を提供する。まずは7年寿命の再生バッテリーを1つ45ドルで提供する。
同プロジェクトは5万1,000ポンドの予算で2021年まで実施される。Aceleronはその後、ナイジェリア、リベリア、マラウイ、ザンビアといった国での実施も計画している。

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