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猫のごろごろ ~キャット・エフェクト~ 【ショートショート】

  猫とベッドの上で昼寝していた。俺も猫もウトウトしながらいちゃついていた。猫の胸毛をわしゃわしゃ、もふもふする。猫は俺の腕を両肉球でホールドしながら喉を鳴らしている。
 ごろごろ。ぐるぐる。いつ聞いても癒される音だ。猫も上機嫌で喉の音はどんどん大きくなっていく。しばらくもふもふし続けると、音というより工事現場から発せられるような振動になった。ついにはパイプベッドと窓のサッシがビリビリ言い出した。それでも猫は起きない。喉の音、というか振動はどんどん大きくなっていく。床が共鳴し出して縦揺れが始まった時点でさすがにまずいと思い、猫を引っ張り上げて起こした。寝ぼけているのか、不機嫌なのか、目付きが悪い。猫は別の寝床を探しに行った。俺は眠かったのでベッドで寝た。

 夕方になって目が覚めた。伸びをしながら起き上がり、靴下を履く。これから作る遅めの夕食の献立を考えつつ、リビングへ行き、テレビを点けた。「…で原因不明の大災害が起きました。繰り返します。世界各地で原因不明の大災害が起きました。現在、専門家が原因を…」テレビには首の取れたブラジルのキリスト像が映し出された。丘の麓には像の生首が転がっている。それを理解しきる前に画面が切り替わり、かじられたような無残な姿のなんらかの聖堂が映される。イギリスっぽいな。その後も鼻から下が落ちたスフィンクス、ポロッと屋根が剥げたシドニーのなんちゃらハウスが映された。アナウンサーは続ける。「…日本では被害は確認されておりませんが、災害への備えをお願いしまs…」
 「うにゃん⤴」俺は文字通り飛び上がった。テレビを食い入るように見ていたので、猫が近くに来ていた事に気がつかなかったのだ。足に絡み付いて、俺を見上げている。心なしか目付きが普段よりも悪い気がした。

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