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暴力と逃げ道。-渦中にいると気づかない-

ご家庭によって喧嘩の程度は様々だと思うが、私の実家であった喧嘩は、映画「血と骨」暴力シーンに近い。

あの映画で描かれている暴力は、実に生々しい。
あの距離感や恐怖、絶望感などは知ってるものにしかわからない生々しさがある。
北野たけし氏の動きは暴力を働いた事がある人の動きだと、いつも映画を見て思う。暴力的な動き、行動に移る人の動きは、アクション映画のような動きとは程遠い。
北野氏の動きは、実に忠実に再現(というより、映画の中で本領発揮してるのかもしれない?)されている。

暴力に動こう/働こうとする瞬間。
体は瞬時に動けるように、ピンと張り詰めて、顔からは血の気が引く。
目を見開いて、相手の動きを真剣に追い、睨みつける。
怒りなどで手が震えている事もある。

そういう瞬間を、そういう人の動きを、何度も私は見てきた。

ご家庭によって喧嘩の程度は様々だと思うが、私の実家であった喧嘩は、この映画「血と骨」暴力シーンに近い。

金俊平(北野たけし)と朴武(オダギリジョー)がもみ合いになるシーンがあるのだが、父と兄の喧嘩を思い出す。我が家では、もうちょっと激しかった気もする。
李英姫(鈴木京香)が金俊平(北野たけし)に恐怖して、家の二階から飛び降りるシーンもあるが、ここでは母を思い出す。母は二階から飛び降りる事はなかったが、玄関や大口窓から逃げ出していた。
ある時、母はトイレに逃げ込んだが、父がトイレドアの小さな窓からホウキを突っ込み、ガラスを割って母を殴ろうとした。それでも父は攻め足りなかったのか、ホウキに火を着け、再度ガラスを割った窓へ突っ込んだ。
ある時は、玄関から外へ逃げ出した母が「やめてー!」と叫びながら、近所中を父に追い回された事もあった。
幼い頃の私はリアルにガクガク震えていたし、母が逃げ出した後、家に残された時の絶望感と言ったらなかった。

何かと喧嘩の度に物が壊れて居た。襖に穴が開いたり、ドアに穴が開いたり、棚に穴が開いたり、ガラスが割れたり。
男同士が格闘した後は、家具が壊れる事もあったし、夕食が食卓ごとひっくり返される事も度々あった。
皿が飛ぶ事はなかったが、物が飛び交い、当たって怪我をする事もあった。
殴る、蹴る、平手打ち、首を絞められる、水攻め等々、ドラマなんかでお馴染みのアレコレは一通り、体験したり目撃したりしている。

そんな訳で、アムロの決め台詞「親父にも殴られた事ないのに!」には、いつもピンと来なくて、すっかり擦れて暴力慣れしている自分と、周りの反応との差に戸惑う事もありました。

今いる環境を冷静に見るためには、離れるしかない。
何故、母はあの父から逃げ出さなかったのか。

父から「この家から出て行け!」と怒鳴られた母に、「お母さん、この家から出て行くの?」と私は聞いた事がある。
まだ本当に幼かった私の手をとり、「お母さんは出て行かないわよ、大丈夫よ」と号泣された事がある。たぶん、幼い子を残して出て行けないと思ったんだろうが、私は出て欲しかった。父から離れるという選択肢を取って欲しかったのだ。成長してから、母になぜ離婚しなかったのか聞くと「経済的に無理だと思った」と言っていた。

30年ほど前、シングルマザーは一般的ではなかったかもしれない。
だけれど、暴力的な環境に身を置き続ける事は、後々の人生にまで響く。
もし、暴力的な環境にいると思うなら、DVから逃げるためのシェルターを利用してほしい。
私の実家で起こっていた事は、今なら警察が呼ばれてもおかしくないし、死人が出てもおかしくない状況でしたが、暴力の渦中に居ると正常な判断がつかなくなる。少しでも心当たりがあるなら、冷静になるために距離を置く事を考えてください。
30年前と違い、今は逃げても許される環境がまだあると思います。
人が亡くなってから虐待を追及しても全く意味がない。
あれだけ暴力を振るい振るわれ、派手に喧嘩して、それでもなお「世間体」という理由で、両親は未だ離婚していない。離れない理由は、共依存しているからだと昔から感じて居ました。依存している事に当人たちは気づいてないと思いますが、巻き込まれた方は無傷ではいられません。

私の見出した「逃げ道」

まずは逃げる事を考えてください。
逃げられないと思う人もいるかもしれませんが、必ずどこかに逃げ道はあります。意外と思い込みで、逃げられないと思ってしまっている事もあります。渦中に居ると気づかないかもしれません。
一瞬でもいいです。
5分でも3分でもトイレにこもる、押入れにこもる、お風呂にこもる、一人で散歩に出る、なんだっていいので、自分の事・相手の事を考えてください。

今いる環境からすぐに逃げられないなら、相手に勝ちを譲って負けて見せる事、守らないといけないものがあるかもしれませんが、急場をしのぐしかない時もあります。
身の危険を感じる時は、とにかく相手が冷静になる事を優先してください。
もし性暴力に至りそうなら、相手に性を感じさせない事、隙を見せない事、そして出来うる限り、味方を見つけてください。先生でも、友達でも、近所の人でも、誰でも。

先に挙げた「暴力を動こうとする瞬間」を少しでも感じたら、どうぞ回避する事を心がけてください。

そして何より、希望を失わないでください。
必ずどこかにあなたが逃げられる方法、逃げ道があります。
家族という小さな人数のコミュニティの中で、生きていく事が難しいと思う人もいるかもしれませんが、きっと安心できる環境や人に巡り会える日はきます。
だから、どうぞ道を見失わないでください。

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