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ブラは1日にしてならず。 #ランジェリーニュースVol.2

こんにちは。うめ組ランジェリーです。先週から始めた#ランジェリーニュース、第2弾✌️です。

"悪い〇〇ほどすぐできる、良い〇〇ほどむずかしい"

前回は『Adore Me』というNYブランド(下着のEコマースで成功した先駆者)を紹介すると同時に、個人的な意見として「良いブラ」とは「フィット感」が占める部分がかなり大きいのではないか、ということ書きました。

今回は、そのブラの「フィット感」についてこれまた海外ブランドを挙げつつ深堀りしていきます。総論としては、やはり近年成功しているスタートアップブランド(そして創設者はほとんど女性)の多くが提唱するのは、ビジョンやコンセプトの違いはあれど、ランジェリーを身につけた女性が感じる快適さ(サイズ、フィット、着心地)だという結論です。

ただ、そんな快適なブラを世に送り出すのはそう簡単なことではなく、多くのランジェリーブランドが相当な労力をかけ、そしてチャレンジをしています。ローマは1日にしてならず、です。

脱線しますが、以前の職場でWebコンテンツの企画の仕事をしていたとき、クライアントがSEOを求めるあまり「大量のコンテンツを安く作る」という方向に向かいそうになったことがある。だけど、本気で読者に届けたいなら一番大切なのは絶対にそこじゃない、良質なコンテンツ、ちゃんと思いが入ったコンテンツを作る必要が絶対にあるんだ…と思いながらも数字で説明できずに悩んだことがある。そんな時に手に取った本、豊田きいち氏の『編集 -悪い本ほどすぐできる 良い本ほどむずかしい』を思い出した。

何が言いたいかというと、良いブラもそんなにすぐにはできないのだ、ということ。ブラも1日にしてならず。私も、早く下着を作りたい!と焦る思いもある。でも、焦って変なものを世に出して売れずに終わるのではなく、ちゃんと売れるものを絶対に作るぞと念じてがんばります。

本題に戻ります、アメリカを中心に2010年代に次々と生まれた、女性に新たな価値を提供しているランジェリースタートアップを紹介していきます。

それらに見るのは、近年のプラスサイズモデルの活躍ぶりにもあるように、「多様な女性の美しさを認めよ」という女性たちの声(ヴィクトリアズ・シークレットに対するアンチテーゼ)であり、同時にブラというもの自体が長きに渡り女性の生きづらさの象徴でもあった、という事実です。

ハーフカップ革命。Eコマースで成功をおさめた『ThirdLove』

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以前の記事で、2018年にNYでローンチした『CUUP』が下着のフィッティングに新たな体験価値を作り、半端ない資金を調達した…ということを書きましたが、CUUPよりもっと以前に、同じように"ブラのサイズ"に重点を置いたコンセプトで成功を収めているブランドがあります。

それが、サンフランシスコに本社を置くThirdLove。なんと驚きの80以上のサイズ展開。35サイズのCUUPなんて目じゃありませんでした…。理由は、ハーフカップというサイズ展開にあります。Bカップ、B1/2カップ、Cカップ、C1/2カップ…となっている。0.5刻みの靴のサイズをイメージしましたが、靴だと23.5センチと24センチってかなり違って感じますよね。ブラのサイズは基本ワイヤーのサイズで決まってくるので、容量(胸のボリューム)によってはカップが浮いてしまったり、逆に溢れてしまったりということもあります。私自身もですが、合ったサイズを付けてもデザインによっては合ってないように感じる人なんかは、かなり試してみたいと思うはず。

他ブランドが考えもしなかった発想であり、かつただでさえサイズ展開の多さ、在庫を抱えるリスクに悩むランジェリーブランドにとってはものすごいチャレンジです。どうやって生産体制を作っているのか知りたい…。

独自のメジャリングシステムとして、質問に答えていくと自分のサイズを教えてくれる仕組みがWebサイト上にあります。「試着室にいくことなく、パーフェクトなサイズを発見できる」と言い切ってしまうところがすごい。

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そんなすてきな商品を提供し、大きな成功を収めているThirdLoveですが、会社について気になることがあったので触れておきます。ThirdLoveは2013年にHeidi Zak氏(co-founder and co-CEO、下記写真の左)によって設立されました。Zak氏は元Google社員だそうですが、安定した大企業での職を捨ててThirdLoveを立ち上げた理由について、「ヴィクトリアズシークレットで買い物をした自分への違和感」を語っているのがすごい…。本心だったとしても、立ち上げ理由に他ブランドをネガティブな意味で名指しできる度胸はなかなかないですよね。。

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Co-founder(共同創設者)ってことは、もう一人はこの右に写っている女性か?と一瞬思いますが、写真の女性はデザイナー。もう一人の共同創設者はZak氏の夫であるDavid Spector氏なんですが、サイトにもメディアにも滅多に出てきません。"By women, For women(女性による、女性のための)"を掲げる同社の戦略的ブランディングと思いますが、実はこのSpector氏、実質的には同社の司令塔として采配を振っている様子。

Vox*が元従業員のリアルな声を元にした記事を掲載、ThirdLoveの社内外事情を伝えています。(*Voxは元ワシントン・ポスト、政治・経済の分野で人気ライターだったEzra Klein氏が編集長を務める気鋭のメディア。解説ジャーナリズム"explanatory journalism"を掲げている)

元記事:ThirdLove says it’s by women, for women. But women who’ve worked there disagree.

実際のところは分かりませんが、せっかく素敵なブランドでもそこで働いている人たちが幸せじゃなかったらと思うと残念な気持ちになります。

私も一応日本でベンチャー企業を2社(うち1社は在職中に上場、もう1社は上場目指して拡大中)経験し、会社が拡大していく中で起こる予想もしなかった変化や避けて通れない社内摩擦など多少は知っているつもりですが、ThirdLoveの場合はそれがブランドコアに関わること(女性の働きやすさや、フェミニズムに関連するキャンペーン絡み)だったりするので、闇が深い感が…。今後の動向に注目です。

従来の"セクシー"からの脱却。アンバサダーがブランドを築いた『LIVELY』

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次に紹介するのは、過去に4年間(2008-2012)ヴィクトリアズシークレットで重役に就いていたMichelle Cordeiro Grant氏が立ち上げた『LIVELY』。ヴィクトリアシークレットが執着し続けてきたセクシーなブランドイメージ(それは世間に受け入れられたからこそ、長い間男女が夢見ていた世界だったのだけど)、それを作り上げるための一律的な表現手法に疑問を抱き、新たな表現を求めたブランドです。

個人的に、ブランドストーリーにある下記の一文にとても共感する。

LIVELY is inspired by what we believe makes women sexy today; smart, healthy, active and outgoing. 

そうだ、そうだ!セクシーとは単に露出が多いとか、卑猥ないやらしいものではないのである!とすべての男性に向けて言いたい(笑)。私が作りたい「ヘルシーでかっこ良い女性のためのセクシーな下着」にも、文面のみで言うとすごく近いです。

ですが、LIVELYの真骨頂は、実はブランド自体が提唱したコンセプトそのものではありません。LIVELYがすごいのは、そのマーケティング手法です。LIVELY Ambassadorというブランドのコミュニティを構築し(その数は10万人に及ぶという)、そのコミュニティを常に中心に据えたマーケティング戦略で成功しています。

Webサイトの「FIT GUIDE」のページを見ると、商品ページとは違った雰囲気で、いろんな体型をした名前のある女性が笑いかけてくる。なんだか、友だちにいそうというか、つまりどこにでもいそうなごく普通の女性たち。

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What better way to showcase the fit of our pieces than on LIVELY customers who’ve loved and supported the brand from the beginning.

もっともブランドを愛し、理解し、サポートしてきたアンバサダーである彼女たちが商品を紹介するのが、一番の方法だということ。インタビューではCordeiro Grant氏が以下のように語っています。

"We started with the idea that our community creates the brand. We’re not a company that speaks to the world, we’re a community that decides what to make."

モノが十分にある現代では消費者自身でさえ何が欲しいのか分かっていない、だから企業は"付加価値"を提案する必要がある━━とも言われる時代に、コミュニティ、つまり消費者の声に委ねることでブランドとしての商品が出来上がるなんてこと、あり得るのだろうか。「アンバサダーマーケティング」という言葉は、日本でも一時期Webマーケティング界隈で流行した言葉である。最近はあまり聞かないけれど…。LIVELYについては別で詳しく調べてみたい。ブランドの方針として、すべてのブラは$35、一度もセールを行ったことがないという一貫した手法も印象的。なお、LIVELYはワコールに2019年にM&Aされています。EXITも果たし、これぞ成功したスタートアップモデルという感じです。

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まだまだ紹介したいブランドがあるのだけど、既に結構なボリュームなので続きはまたVol.3にて:D

次回も海外ソースを交えて、いろいろ深堀したいと思っています。つい個人的な関心でマーケティングやブランディング、会社自体に関する話が多くなってしまうのですが、商品そのものについてもちゃんと触れようと思いつつ...!

今後この#ランジェリーニュースで他に予定しているのは、海外だけでなく日本のランジェリーの話、下着の歴史的な部分(堅苦しくなりすぎない範囲で)、下着を語る上ではやはり外せないフェミニズムなんかの話もしていきたいなと思っています。

コメントやリクエストもいつでもお待ちしております✨

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Instagram:@umegumi_lingerie


その他参考記事:Lingerie Is Getting a Lift From Newcomers Harnessing Digital, Fit Technologies

ありがとうございます。下着作りに活用させていただきます🎀✨