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便秘のときは弱くてエエ。強がんな。

※この記事は3分で読めます。彼については同マガジンの「#1 語れる言葉を持っているか」をご覧ください。

※僕が彼に興味を持った理由をここに記します。ただ、うまく伝えてられる自信がないため、そのまま書きました。

「便秘のときは弱くてエエ。強がんな。」

僕が、チームを率いて悩んでいる時に彼が言った言葉だ。

僕は初めてのプロジェクト責任者だった。でも、チームはバラバラで、もがけばもがくほど危機的な状況に進んでいた。

彼は別のチーム長で、僕の直属の長ではなかった。そんな彼が、なぜか僕のところにきて、唐突に話しかけてきた。

「便秘やな。お前さんは今、便秘や。」

いえ、便秘じゃないです。

「い〜や。便秘や。」それから僕の顔をじっと見る。「トイレに行かへんから、腹が痛い。腹が痛いから、気になってもて気が休まらん。何度もトイレにこもって一人で力む。」

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僕は黙って聞いている。便秘じゃないのに、この人は何を言ってるのか、と思う。

「えーか。お前は便秘でトイレにこもるけど、気になんねん。あいつらはいま何してるんやって。

だからそのままトイレでだすことに集中すりゃいいのに、戻ってきてまうねん。

恥ずかしいんか?便秘や言うのが恥ずかしいんか?」

いえ、と僕は首を振る。

「なら、すぐ言え。俺はいま便秘で、トイレにこもって出すことに集中する。だから助けてくれって。

そんで、こう言え。でも、絶対戻ってくる。みんなと一緒にやりたいから。楽しくやりたいからって。」

僕はわけのわからないまま肯く。彼はそんな僕に向かって、肩を何度か叩く。それから彼が言ったのだ。

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「弱くてエエ。強がんな。お前が完璧な人間を演じるのは理解できる。責任を感じるのも痛いほどわかる。

でもなぁ、それを周りは求めてない。むしろ息苦しいねん。お前のケツからくっさい屁がでまくっとるねん。

便秘のときは便秘って言え。お前が言わんから、周りは言えん。でもバレとるで。お前のスカシッペのせいで臭いて。

笑って言え、便秘がでえへんねんって。」

そう言って、笑いながら離れていった。

僕はその日、チームのみんなに、便秘や、と言った。くさいオナラは全部僕が原因だと。

不思議なことにその日から、僕たちのチームは優秀チームと表彰されるまでの結果を残した。

この出来事以降、僕は彼について興味を持った。だからことあるごとに質問をし続けた。彼はいつも僕へ話してくれた。彼の言葉をかりるなら、「ココロとカラダ」を僕に向けて。

いつかまた会えるだろうか。その時、僕は伝えたいことがある。「僕は僕の言葉で話してます」と。

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余談

なぜあの時、僕のところに来てくれたんですか、と随分経ったときに聞いたことがある。

「屁が臭いって、周りの仲間が言うてきてたから。」

僕は言う。なんで、便秘の話なんかしたんですか。普通に話してくれればいいのに。

彼は追加のハイボールを頼みながら、笑って言った。

「肩の力の抜かせ方は、肩の力抜けって言うことちゃうで。あほらし、って思わせるようココロを動かすことや。

キミはさぁ、十分すぎるほど真剣に真面目に悩んでたやん。だからもう大丈夫やで、って言いたかっただけや。肩のチカラ抜いて、大丈夫って。

あの時、俺がどんな奴か知らんやろ。信頼関係もない。役職が上で、オッサンやろ。」

頷く。

「おい、オッサンは否定しろよ(笑)。

そんな俺が話しかけるとキミは緊張してまうやろ。だから、あほらしって、思わせたかっただけや。」

僕は言う。預言者かと思いましたよ。便秘だったので。めっちゃくさい屁もこいてたんで。

彼は笑う。大きな笑声だ。このオッサンは僕のことを見守ってくれてたんだなぁ、と思った。

「オッサンは余計やろ(笑)」と嬉しそうにツッコむと想像できるので、僕は黙って笑っていた。




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