「支援級は嫌だった」と口にする高校生たちの共通点
前回の記事では、小中学生のころに支援級へ通っていた高校生たちに話を聞くと、支援級に対して「楽しかった」というプラスの感想を持っていることが多いという内容を書いた。
その理由は「授業がわかるようになって楽しかった」という極めて単純なものが大半を占めていた。
一方、今回の記事では、かなり少数ではあるが支援級に対してマイナスの感想を持っている生徒に焦点を絞り、わたしの経験から得た彼らの共通点を、以下のふたつに絞って書いていきたい。
※ただ、おおまかにまとめたものなので必ずしも全員にあてはまるわけではなく、例外があることは言うまでもない。
1.知能が高くて他罰的(外罰的)傾向がある
「知能が高いと支援級の授業は簡単すぎてつまらないのではないか」と思うかもしれない。
でも実はそうでもない。
そもそも本当に知能が高くて勉強が得意な生徒は、能力的に簡単だといえる授業でも、どんどん吸収して新たな発見を得るため、そういった不満をあまり漏らさない。
また、知能が高いにもかかわらず支援級の対象になる生徒は、知能ではない別の部分において特性が際立って困難が生じているということであり、その困難を避けられる支援級は安心感を得られる場所になるはずだ。
したがって、知能が高くても、支援級に対して「簡単だったけれど和気あいあいとしていて楽しかった」「自分なりに(生活面や態度なども含めて)いろいろと学ぶことがあった」など、プラスの感想を持つ生徒はたくさんいる。
しかし、知能の高さに、他罰的(外罰的)傾向が加わると話は変わってくるのである。
※他罰的(外罰的)とは、自分に生じた困難や不満の原因を外部に求め、他者を非難するなどして攻撃的な反応を取ることである。
「自分は障害者だと決めつけられた」
「周りの連中は馬鹿ばかりだった」
「くだらない授業に出て時間の無駄だった」
こういった攻撃的な意見は、知能が高く(極めて高いというわけではなくまあまあ高いという程度の場合ももちろん含む)、尚且つ他罰的(外罰的)傾向のある生徒が口にするものだった。
なお、他罰的(外罰的)傾向は本人の生まれ持った特性によることもあるが、もしその矛先が支援級に限るのであれば、次に書く項目の内容が要因になっているかもしれない。
2.保護者が支援級に否定的である
生徒にとって保護者の存在はとても大きい。
無意識のうちに保護者の顔色をうかがい、希望を汲み、意見を合わせてしまう。
高校生にもなると、保護者と自分を切り離して「うちの親はこのように勧めてくるけれど自分は違う道を選びます」などと主張できる生徒もいるが、小中学生のうちはそうもいかない。
そのため保護者が支援級に否定的だと、生徒も自分の口で「支援級は嫌だ」と言うようになる。
すると保護者は嬉々として「我が子が嫌がっているから」という大義名分を掲げ、教員や医師から提案された支援級の道を断ってしまう。
しかしそれは本当に生徒の意見なのか。
生徒はただ保護者に合わせ、保護者の期待通りに動いているに過ぎないのではないか。
きつい言葉になるが敢えて書こう。
支援級は生徒自身のためにあるものなので、保護者の希望など、どうでもいいのだ。
保護者を軽視していると思われるかもしれない。
しかし特性や学力面により困難が生じているにもかかわらず、保護者が支援級の道を断ったために通うことができなくなった生徒をわたしは知っている。
通常級(普通級)へ通い、当初は順調だったとしても、次第に大人びていく友人たちと噛み合わなくなってからかわれたり孤立したり、また、難易度の上がっていく授業にまったくついていけなくなったりして、結果的に学校自体へ通えなくなってしまった生徒をわたしは知っている。
何よりも守らなければならないはずである生徒の自信や充実感を、なぜ、保護者が奪ってしまうのか。
支援級へ通うかどうかの決定権は保護者にある。
前回も書いたが、両親でも兄弟姉妹でも祖父母でも親戚でもなく、生徒自身を優先し、生徒自身のために考えるべきである。
こちらの記事でも触れている。
小中学校の通常級・高校の全日制・手帳の取得など、保護者のこだわりともいえる厄介な希望は、しばしば生徒自身のおかれた状況を無視して突き進んでしまう。
以上のふたつが、支援級に対してマイナスの感想を持っている生徒のおおまかな共通点である。
わたしは高校の教員なので、小中学校で支援級の教員をしたことはないし、具体的な現状は知り得ない。
しかし、支援級へ通ったのち、自分に合った高校へ進学し、友人たちと「支援級楽しかったなあ」「授業とかめっちゃわかりやすかった」「へー、通ったことはないけど支援級ってなんか穏やかな感じはした」などと分け隔てなく談笑し、いずれ自分に合った進路を決めて羽ばたいていく高校生のことはたくさん知っている。
彼らの姿を見ていると、支援級の先生たちや、支援級へ通わせることを決断した保護者たちの存在に思いを馳せ、あたたかい気持ちが込み上げる。
生徒の自信や充実感ほど大切なものはないのだ。
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