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創作品集

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童話 ショートショート 短編 詩 など書いたものをまとめました。
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記事一覧

桜の花が咲く頃に

桜の花が春の扉を開けました。 南の国の優しい風が桜の木立を通り抜けると、みんな一斉に長い眠りから目覚めます。 可愛い蕾が次々とふくらんで、朝の陽射しの中で優しく笑顔を開きます。 さあさあ、今年も笑顔満開のパーティー会場が出来上がりました。桜祭りが始まりますよ。 みつばちが早速やって来て、美味しい桜の蜜を集めます。みつばちたちは、たくさんの木を回って花粉を運んでくれました。 そおして花が散った後、美味しいサクランボが育ちます。 桜の花が散った後は人間たちに忘れられてしま

詩 「花のように」

花は優しく強い 折られても切られても 笑っている 土にある時も 折られて手にある時も 花瓶に飾られている時も いつも笑っている 優しく笑っている 私はその強さが 見えるのだから 私もきっと 強いのだろう

詩 「優しい手」

お母さんの手 優しい手 私が転んで泣いてたら 痛いの痛いの とんでゆけ〜 あら不思議 痛くなくなった お腹の大きな妊婦さん もうすぐ赤ちゃん生まれるよ お母さんがお腹をクルクルさすってね がんばれ がんばれって励ました お母さんの手はいつも優しい お母さんの手はいつも温かい お母さんの手は不思議な手 お母さんはお空に帰ったから もう会えないけれど 私もお母さんみたいに 優しい手になりますように あなたの心を抱きしめて 温められますように

創作童話 「光のキャンディ」

「さあさあ、みなさんおしゃべりはやめて、一列に並びなさい」 ワイワイガヤガヤおしゃべりしていた天使たちは、ピタリと鎮まり、まっすぐ一列に並びました。 「いよいよ、君たちが地球に生まれてゆく日が来ました。」 わーっと歓声が上がりました。 「これからみなさんに大切なプレゼントを渡します。」 「わーい、プレゼントってなんだろう?」 「プレゼントはこれですよ。」と校長先生が手の平の上にキラキラ光るものを差し出しました。 「これから地球に生まれる君たちは、大切なことを忘れ

童話 笑美ちゃんのひな人形

3月3日はひな祭り、この日を笑美ちゃんはどんなに楽しみに待っていたことでしょう 。 生まれながらに目の見えない笑美ちゃんが、3歳のひな祭りの時に、 お母様はひな人形を一つ一つ笑美ちゃんの手に触れさせて、 「これが親王様よ。凛々しいお顔をなさっているわ」 「これが内親王様よ。優しいお顔をなさっているわ」 「そしてこれが3人官女よ」と言うように一つ一つのお人形を説明して下さいました。 笑美ちゃんは目は見えなくてもすべてのことを光の波動として感じることが出来るという、不思

僕と龍の物語#3地球で遊ぼプロジェクト

前回の話を読んでない方はこちらです。 深い催眠状態になって、いよいよ地球に生まれる瞬間を各自が体験することになる。地球では時間が直線上に体験されるので、私たちが決めたスケジュールの地球時間にそれぞれが生まれる。 この物語を書いている今日、三月十八日はモエが生まれた日だ。モエは自分が決めた設定通りに、全介助が必要な障害者となって生まれた。 母親は約束通りアサナだ。出産も大変なものだった。医師は三歳まで生きられるかどうかと告げた。誰に何を言われようと、アサナは愛を込めてモエ

童話 「トラとジョージ」 1、はじまり

自転車に乗って、いつもの道を走っていたら、 駐車場にジョージが見えた。 ジョージというのはアニキの白い2tトラック。 名前を聞いたら「ジョージ」と答えたから、 それ以来会う度に声をかけている。 今日ジョージの荷台に猫が乗っていた。 丸々太ったトラ猫だった。 わたしと目が合ったら、わたしが乗っている自転車を目で追いかけて、 ずっとわたしを見ている。 「トラちゃんこんにちは」と声をかけた。 これがトラとの出会い。 トラとジョージは仲良くおしゃべりしていたよ。 トラ

童話 「うず巻きベーカリー」

私の街に新しいパン屋さんが開店しました。 お店の名前は「うず巻きベーカリー」 今日はオープンの日です。パンが大好きな私は、昨日からとっても楽しみで 朝一番に出かけて行きました。 お店に入ると普通のパン屋さんみたいにパンが並んでいません。 すると店の奥から、ニコニコ笑顔のおじさんがパンを運んで来ました。 「いらっしゃいませ。今日はパンは売りません」 「パンは売らないってどういうことですか?」 「さあ、どうぞこのパンを食べてみてください!」 「食べる前にパンをよ〜く見

詩 風になって

私は砂浜を歩いていた すると目の前にりっぱな革靴があるのをみつけた 私は革靴を履いて歩き始めた 最初は物珍しく自分が誇らしくなって自慢した けれどその革靴はとてもきつく 私の足には合っていないと気付いた だから革靴を脱いで歩いた 歩くことにばかり意識を使っていた ふと立ち止まり周りを見たら 海があった 青い空もあった 私は裸足で海に触れた 海の中で空を見上げた 自由はここにあった 見つからない何かを 探して歩くのはもうやめよう 私は風になって

創作童話 僕と龍の物語 #2プレアデス

プレアデスの学校 「パメラ、パメラ、もうパメラったらー」突然大きな声がして私は肉体に意識を戻した。 「えっ、なんか言った?」 「さっきから呼んでるのに、またどこかに行ってたんでしょう」あきれた顔してモエが言った。 「ああ、ごめんなさーい。で、なんだっけ?」 今、私は体外離脱して地球の女の子とテレパシーでおしゃべりしていたから頭が混乱している。 「だからさ、パメラはどんな設定にするか聞いてるのよ」 ああ、そうだった。地球で遊ぼプロジェクトの計画をグループのみんなと話

僕と龍の物語 #1 アボリジニ

前回はこちら https://note.com/ume5chan55/n/nad613617d88d 僕が流れ着いたのは、オーストラリアの海岸だった。 目を開けると太陽に照らされてキラキラ光っている真っ白な砂浜に、肌黒い子どもの足が見えた。 「気が付いたみたいね」女の子の声がした。 「ここは何処?」と声を出した自分に驚き、慌てて立ち上がると体が人間になっていて、更に「うわー!」と大きな声を出した。 「どうしたの、そんなに驚いて?」その子が心配そうに僕の顔を覗き込ん

創作童話 僕と龍の物語 #0

「僕と龍の物語」プロローグ 宇宙神社ポールランドは今日も全宇宙からの参拝客で溢れている。 僕は、いつものように身を清めるために、てみずやの水盤に目を向けると、海路(カイジ)が気持ち良さそうに泳いでいる。 この水盤には湧き水が流れて来る。冷たくて清らかなので気持ちいいに決まってる。水盤にはスイカやトマトが冷やしてあるので、僕はよく冷えた真っ赤なトマトにガブリとかみついた。 カイジは青い龍で地球が出来た時に最初にやって来た龍のグループのリーダーだ。人間が現れるずっと前のこ

創作童話 「雨の空の上は晴れ」

「雨の空の上は晴れ」 ある雨の日のことです。 さっちゃんが窓の外をぼんやりとながめながらつぶやきました。 「毎日、雨ならいいのに」 さっちゃんは病気で足が悪くなり、歩けなくなってしまいました。 だから、外で元気に遊ぶことも出来ず、 「雨ならみんなも遊べないから、私と同じ」と思っていました。 その瞬間、さっちゃんは空の上を飛んでいました。 「きゃー。いったいどうなってるの?」と叫ぶとすぐに、 『恐がらなくても大丈夫!』と、どこからか声が聞こえてきました。 さ

ショートショート#2 暗闇の中から

「ああ寒い、一体いつになったらここから出られるのだろう」 ここは真っ暗で、日に数回光が訪れる。 僕はそのたびに「今日こそ生まれ変われる」と胸を躍らせてきたのに、いつも失望する。 そして新しい仲間が入ってくるたびに僕はどんどん奥に押しやられる。すっかり姿を変えて、もう役にたたなくなり捨てられて行った仲間もいた。 「こんなはずじゃなかった。僕は多くの中から手に取って吟味され選ばれた」そう思っていた。 僕が育った田舎は一年を通して天候に恵まれ、山から流れてくる川の水も栄養