童話 「トラとジョージ」 1、はじまり
自転車に乗って、いつもの道を走っていたら、
駐車場にジョージが見えた。
ジョージというのはアニキの白い2tトラック。
名前を聞いたら「ジョージ」と答えたから、
それ以来会う度に声をかけている。
今日ジョージの荷台に猫が乗っていた。
丸々太ったトラ猫だった。
わたしと目が合ったら、わたしが乗っている自転車を目で追いかけて、
ずっとわたしを見ている。
「トラちゃんこんにちは」と声をかけた。
これがトラとの出会い。
トラとジョージは仲良くおしゃべりしていたよ。
トラは自分が行きたい所に自由に行ける。
だけどジョージは人間が運転しないと、どこにも行けない。
最近はあまりお仕事が忙しくないので、たまにしか働くことがなかった。
そんな時トラが来て、とっても楽しい冒険の話をしてくれた。
ジャンプして高い塀の上に登ったり、狭いすき間を通り抜けたり、
猫は好きなことしかしないんだって。
ジョージは夜になって、お月様に話しかけた。
「僕もトラみたいに自由に動けるようになりたいな」
するとお月様は答えたよ。
『君がトラックになったのはどうして?』
「力持ちで、早く走れて、人間の役に立てると思ったからだよ」
『そのとおりになってるじゃないか』
「ほんとだね、そのとおりになってるね」
『思ったとおりになってることを、幸せっていうんだよ』
『無理して自分でないものになろうとすると、しあわせを見失う』
『他の誰かの体験を聞くとき、とっても楽しかったり、悲しかったりするのは、みんなの心がつながっているからなんだよ』
ジョージはこれからもトラの楽しい冒険のお話を聞くでしょう。
トラは大好きなジョージの荷台でお昼寝をして、ぽかぽか日向ぼっこ。
わたしは、トラにおやつを持って行こう。
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?