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早朝の散歩から一日を始めると、とても気持ちいい

 毎朝、起きると僕は散歩に出かける。
 3年前、大変なことが重なり、うつになり、主治医に勧められたのが、きっかけだ。
 歩き始めたのは冬で、朝5時に起きるとまだ、辺りは真っ暗だった。外の空気は凛と冷えて、僕の眠気を吹き飛ばしてくれた。
 歩くコースは家の裏側に広がる田んぼ道だ。冬枯れの田んぼ道はすべてが茶色く、寂しげだ。田んぼは家よりも低い位置にあるので、家から田んぼ道に出ると、眼下に広がる田んぼを一望できる。その景色を見ながら、僕はストレッチをして、歩き始める。
 歩いていると、僕の頭にはいろんな考えが浮かんできた。「なんで、うつになんかなってしまったんだろう」「なんでうまくいかないんだろう」と言った思いや、家族のことなどが次から次へと頭の中に浮かんでは消えて行った。
 でも時には、田んぼのあぜ道にポツンと咲く草花を見つけ、綺麗だなと思ったり、水路を流れる水の音にじっと耳を傾けるとそれが音楽のように聞こえてきたり、周りの景色を美しいなと思えるようになってきた。
 小鳥のさえずりも美しかった。
 そして、僕は一本の大きな枯れ木に心を奪われた。その木のことは前にも書いたが、寒空の中、凛とした姿で立つその木の力強さに、ぼくは毎朝、力をもらっていたように思う。
 毎日散歩をしていると季節の移り変わりも、よく分かる。茶色だった田んぼは少しずつ緑に覆われていき、朝、真っ暗だった空も少しずつ、夜明けの時間が早くなってくる。
 冬から春へ、そして夏へと季節が変わっていき、僕は今も、毎朝欠かさず散歩を続けている。
 目の前に広がる田んぼと遠くに見える山々、そして澄んだ朝の空気は、僕の疲れた心を少しずつ癒してくれた。
 夏の朝5時はもう明るい。でもまだ太陽は顔を出していなくて、田んぼ道から見える山々は朝焼けに赤く染まっている。

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 そんな中、僕は今日も歩き始める。良い一日になるといいな。そんなことを思いながら。

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