「生きるぼくら」を読んで
原田マハさんの「生きるぼくら」を読み終わりました。
新刊本屋さんでまず興味を惹かれたのは、表紙の絵に東山魁夷氏の絵画「緑響く」が使われていることでした。
前にも書きましたが、僕は昔から東山魁夷の絵が好きなんです。
東山魁夷の絵を背景にした表紙をみて、思わず手に取りました。「生きるぼくら」。
僕の読書アンテナにこの本が引っかかったのを感じました。
だいたいお気に入りの作品や作家との出会いはこういうパターンが多いです。何かが引っかかる、無性に読みたいという第一印象。
お恥ずかしながら、その時点で、僕は原田マハという作家を知りませんでした。
いじめが原因で引きこもり生活を送っている麻生人生が、離婚後女手一つで育ててくれた母親から捨てられたことをきっかけに、蓼科に住む祖母の家を訪れる。そこにはアルツハイマーが進み、記憶を失くした祖母マーサさんと人生の知らない女の子、つぼみが一緒に住んでいた。
記憶を失くした祖母と父親の再婚相手の子どもだというつぼみとの暮らし、有機栽培による米づくりを通した地元の人々との交流によって、新しい自分を発見する人生とつぼみの成長物語。
ありがちなストーリーになりそうでならないのは、作者の巧みなプロットの設定と爽やかな読後感を残す文体のなせる技でしょうか。
アルツハイマーと引きこもりは現代社会が抱える大きな課題の1つですよね。例えば、実家で2人暮らしている父や母がアルツハイマーを患ったとき、僕はそれとどう向き合えばいいのか。離れた場所で暮らしているので、将来の心配事の1つでもあります。引きこもりだって、自分がなることはさすがにもうないかと思いますが、自分の子どもがこれからならないとも限りません。
そんなことを考えながら、2日ほどで一気に読んでしまいました。
重い課題を重くなりすぎずにほんわかと描ききった力作でした。久しぶりに胸のすく物語らしい物語を読んだ感じがして、なんだかうれしくなりました!
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