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茨木のり子さんの詩集がとても素晴らしい

 茨木のり子さんのこの詩に、僕は何回励まされたことだろう。

倚りかからず

  もはや

  できあいの思想には倚りかかりたくない

  もはや

  できあいの宗教には倚りかかりたくない

  もはや

  できあいの学問には倚りかかりたくない

  もはや

  いかなる権威にも倚りかかりたくない

  ながく生きて

  心底学んだのはそれぐらい

  じぶんの耳目

  じぶんの二本足のみで立っていて

  なに不都合のことやある

  倚りかかるとすれば

  それは

  椅子の背もたれだけ

 会社という大きな組織の中で、日々調整に疲れ果て、もうこんな仕事辞めてしまいたいと思ったときに、この詩が僕に力をくれる。

 何ものにも倚りかからないと宣言する心の強さ。詩全体に漂う凛としたたたずまい。


 この詩に出会ったきっかは、多忙な仕事と会社の中での人間関係に疲れ果て、体調を壊して休んでいたときだった。社長から一枚の絵ハガキが届いた。

 そこには「ここで終わるキミじゃない」というメッセージとともに、次のような言葉が書かれていた。

 「私も人生について、いろいろ悩み考える日々刻々です。」

 「茨木のり子さんの詩や文章にハマっています。」

 この絵ハガキをもらって、もちろんありがたかったし、茨木のり子という詩人に興味をひかれた。

 そして、図書館に行き、手に取ったのが、「倚りかからず」という詩集である。

 自分にも、こんな強さがほしいと思った。自分で考え、自分の価値観を大切にして一日一日を大切に生きる。生きていくにはいろんな理不尽なことも多いが、心の中までいやな思いに支配されることはない。せめて、自分の心の中だけは、この詩のように凛としていようと思う。

 詩人が唯一倚りかかるものと言った「椅子」。自分にとって倚りかかるものとしての「椅子」はなんだろうと考えた。

 やっぱり、それは家族しかない。僕の体調が悪い間も支えてくれた家族。もちろん、僕が支えないといけないのも家族。家族こそは、僕にとっての「椅子」である。

 そんなことを考えていると幸せな気分になってくる。

 先日、その社長と社内でバッタリ出会った。

 「社長、絵葉書ありがとうございました。茨木のり子読みましたよ。」

 「そうか。けっこうええやろ」

 ニコッと笑って社長はエレベーターの中に消えていった。

 「社長ありがとうございます。何とか、この会社でやっていけそうです。」僕は心の中でそうつぶやいた。

 これからも、つらいとき、しんどい時には、この詩集を開くことになるだろう。

 そして、そう遠くない将来、子どもたちが独立したら、妻と二人で次の夢を追いかけたいと思う。どんな権威にも倚りかからずに、自分たちの足で立って歩んでいける夢に向かって。


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