ワラビの季節とやえちゃんのお話
雨が降って、暖かくなるとわが家の庭にワラビがワサワサ生えてきます。
この家に引っ越したばかりの頃、まだ、田舎で暮らしたことがなかったので、慣れないことばかり。
ある日、家の中にいると、庭の草むらのほうでなにやら、ガサゴソ音が!
「鹿?クマ?」
おそるおそる外に出てみると、見慣れないおばあちゃんが、庭の草むらで、鎌を持ってなにかとっているのです。
「あのー、こんにちは。」
おばあちゃんはニコニコしながら、なにやら、ボソボソ。
「あぁ、、、こんにちは、、、ここは、、、えーワラビたくさんとれるんよ、、、卵とじしたらおいしいよ、、、」
そうボソボソいいながら、鎌を持って、さらに草むらの奥にズンズン。ざるいっぱいにワラビを採って、満足げに電動車いすに乗って帰っていきました。
「いったい、誰やったんやろう??」
それが、やえちゃんとの初めての出会いでした。
やえちゃんは、近所に住むおばあちゃん。私が借りているこの家が空き家になる前、住んでいたおばあちゃんとお友達でした。それで、毎年、春になると、ここに来てはワラビを採っていたそうです。
最初は、断りもなく勝手に人んちの庭に入って、ワラビ採ってって、なに者?!って思っていたのですが、だんだん、それが当たり前になってくると、
春になって、家の庭の方や裏で、草がガサゴソ、ガサゴソ聞こえると、
「あー、やえちゃんがきたかな。もうそろそろワラビの季節かー。」
と思うようになりました。
それでも、2年ほど前から、やえちゃん、足腰も弱ってきて、介護施設に入るようになり、あまり顔を見なくなったのです。
庭にワラビがワサワサ生えてくると、
「ワラビこんな生えてるのに、やえちゃん、とりにけーへんかなあ・・・」
となんだかさびしい気分になります。
そんなやえちゃんでしたが、先日、百貨店に春のお花を植えようと地域の女性が集まったときに、久しぶりに百貨店に来てくれました。
歩くのはちょっと不自由になったけど、みんなと一緒に花壇の草取りをして、記念写真を撮ってワイワイ賑やかに。
私がチマチマ草をとってる横で、やえちゃん、手際良くブチブチ、みるまにきれいに草を抜いてきます。さすが、やえちゃん、まだまだ現役やなあ、と感心。
ニコニコしながら、またボソボソ。
「あぁ、、、ブレスレットつくったから、、、みんなにあげて」
かわいい手作りブレスレットをたくさん置いていってくれました。
百貨店のどうぞのいすにやえちゃんの手作りブレスレット。
今度、うちのワラビをお返しに持って行ってあげよう。
#エッセイ #地方暮らし #note地方暮らし部 #思い出 #田舎 #田舎暮らし #春
京都北部の山あいの小さな集落にただ1軒の小さな百貨店から田舎の日常を書いています。子供達に豊かな未来を残すためにサポートよろしくお願いします!