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キャロル・リード「第三の男」(1949)

 前回、フェリー二の「8 1/2」を見直して「長く感じた」と書いた。「第三の男」は、それよりも14年も前の作品になる。
 今回見て、恥ずかしながら初見だと気づいた。しかし、100分をまったく飽きさせなかった。アントン・カラスの名曲「ハリー・ライムのテーマ」がとにかく効いている。日本では、エビスビールのCMで有名な曲である。

 フェリー二の時にも感じたのだが、なにか一つでも現代の私たちとの架け橋があれば、映画の印象はまったく違っただろう。この作品では、この曲がその役割を果たしてくれたような気がする。

 白黒の古い映像なので息を飲む緊張感というわけにはいかないけれど、うす暗い画面に照明がなんとも工夫されていて、非日常で不気味な印象を盛り立てている(舞台は2次大戦後のウィーン。ドイツ語がわからないのも怖い)。
 ストーリーも意外な方向にどんどん展開して、退屈しない。ネコがじゃれついた時に、「あっ!」と観客に気づかせる仕掛けもあざやか。若きオーソン・ウェルズ(1915-85)の笑顔もいいし、エンディングもイマ風である。

 笑えたのは以下のセリフだ。
「ボルジア家の30年の混乱があって、イタリアにはルネッサンスが生まれた。では200年平和だったスイスは何を生み出した?せいぜい鳩時計が関の山さ。クークー」スイス人は怒っただろうなあ。
 
 確かに、これは「映像の教科書」といえよう。いまさらですが、分析してみたいと思います。

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