新米大学教授の感想日記

実務家教員1年生 本、映画、ドラマなどの覚え書き

新米大学教授の感想日記

実務家教員1年生 本、映画、ドラマなどの覚え書き

最近の記事

②東大大学院への受験勉強

 東大というと苦い思い出がある。若い頃に何年も受けてすべて不合格だった。成績が良くもないのに「そもそも受けなきゃ合格もありゃしねえ」と受け続けた40年前のおのれのバカさ加減には、呆れ果てる。「でも大学院なら、なんとかなるのではないか?」おいおい。この辺り、50過ぎても「バカは死んでも治らない」を地でいくバカっぷりである。  調べてみると、東大院にもいくつか社会人コースが存在する。でも、社会人向けの夜間や土日のコースは、ついに見つけることができなかった。しかしバカはこう考える。

    • ギレルモ・デル・トロ「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)123分

       タイトルに「ウォーター」とあるのだから、オープニングタイトルの水中のシーンに驚きはなかった。水中に沈むテーブルとその周辺を漂うイス。水中で生活していた痕跡だろうか。そしてよくある「これは◯◯の物語である」というナレーション。おとぎ話風の演出だが、これも聞いておかなければならない。  この映画はネタバレを避けるのが難しい(だからストーリーには触れません)。映像のことを言えば、「哀れなるものたち」(2023、こっちの方が新しいけど)を思わせる少しセピアがかった色合いと広角・魚

      • ①実務家教員に転職する話

         この春、30年以上勤めた前職を早期退職し、実務家教員に転職するにあたって、一番多かった質問が「なぜ、おまえが大学教授になれたのか?」というものだった。 と言われても、相手もあることだし「さあ、なぜでしょうね」と答えるしかなかったのだけれど。でも「なぜ、大学教授への道が開けたのか?」なら、少しは答えられそうな気がする。その経緯を思い返してみる。  始まりは2018年の人事異動だった。実はその直前に上司から「地味な昇進」をにおわされていた。でも、情けないことに私は(今でも)人

        • 廣木隆一「月の満ち欠け」(2022)

          「アメリ」が見てから時間が経つほど「良い映画だったなあ」と思えたのに対し、本作はその逆であった。なにがそう思わせるのだろう。  一番は、原作のプロットの「あざとさ」であろうか。死者が輪廻転生で、身近なところで「転生」しているというのは、古今東西「サギ師」の常套手段であり、この種の「非科学的なプロット」が(いくらフィクションとは言っても)、後から後から不愉快になってくるのだろうか。  大泉洋はよく演じていた方だ。その直前に「新解釈・三國志」という映画に挫折していたので、(こ

        ②東大大学院への受験勉強

          ジャン=ピエール・ジュネ「アメリ」(2001)122分

           幸せな気持ちになりたくて、久々に「アメリ」を見た。オープニングタイトルのアメリの幼少時からして、クセのある映像が続く。実は見終わった時、長く感じられて90分くらいにしてくれと正直思った。でも一日経ってみると、なかなか良い映画だったと感じられるのだから、映画も咀嚼に時間がかかるということか。  まず映像は全体的に黄色みがかかっていて、ちょっとセピア風。どこか懐かしいようなのどかで不思議な雰囲気を醸しだす。もちろんモンマルトルの街も美しい(今は中東系やインド系の裁縫関係の店が

          ジャン=ピエール・ジュネ「アメリ」(2001)122分

          井上雄彦「THE FIRST SLAM DUNK」(2022)124分

          「SLUM DUNK」は知っていたが、読んだことがない。江ノ電で外国人観光客が群がっているのは知っているが、1990〜96年連載で終了していたことも初めて知った。元々漫画やドラマに、ハマってしまうと止まれない「アディクト体質」で、それがイヤで避けてきた(言い訳)。アンテナも低い。ヒット作品をリアルタイムで楽しむことは、あまりない。そして、後に素晴らしい作品だったと気づく時は、誰よりも遅く恥ずかしい(矛盾)。  この映画も、まさにそのパターンであった。映画公開時に、周囲があれ

          井上雄彦「THE FIRST SLAM DUNK」(2022)124分

          スタンリー・キューブリック「時計じかけのオレンジ」(1971)

           ううむ、これぞ悪の芸術なのだろうか?久々に背徳を堪能させてもらった。しかも、137分はまあまあ長かった。とにかく主演のマルコム・マクダウェルの不敵な笑顔がなんともチャーミングで不気味だ。少しハリー・スタイルズにも似ている。これが英国の美男子顔なのか。  前半の主人公の悪事の数々は痛快だが残酷で、不良少年たちの隠語も行動もリアルで怖い。もはや自分が襲う方でなく、襲われる方に感情移入してしまうのも年齢的に致し方ないのだろう。つまり、若者ならまったく違う感想を持つのではないだろ

          スタンリー・キューブリック「時計じかけのオレンジ」(1971)

          ウォシャウスキー兄弟「マトリックス」(1999)136分

           マトリックスが、25年前の映画だとは信じ難い。今、見返してみても当時の衝撃がよみがえる。これは、ぜひ若い世代の感想が聞いてみたい。  そもそも「仮想世界」と「現実」の境界があいまいというのは古来からのテーマでもある。「胡蝶の夢」は老荘思想で有名な荘子が、自分が蝶になった夢を見て目覚めた時に「自分が蝶になった夢を見ていたのか、蝶が自分になった夢を見ているのか」迷ったという話。そういえばこの映画でも、度々「夢」が出てくる。  ウォシャウスキー兄弟(現在は姉妹)は、フランスの

          ウォシャウスキー兄弟「マトリックス」(1999)136分

          伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』光文社新書

           ヨシタケシンスケさんの表紙がズルイ。そして福岡伸一さんの序文はへそまがりの私にはちょいとキツイ。と、まずは本文以外のところでざわざわしてしまった。おそらく私はこの本の編集者のセンスがあまり好きではないのだろう、と勝手なことを思う。  私は生まれつき右目が弱視だ。視力矯正が出来ないので、メガネも右目はただのガラスを入れている。最近になって「アサガオ症候群」という原因も判明して、両親と共有した。子供の頃原因がわからず、大学病院に通ったり、入院したり、良い方の目にアイパッチをし

          伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』光文社新書

          岩井俊二「スワロウテイル」(1996)

           空前の円安の今、「円高で世界中の人々が『円』を稼ぎに来る日本」という舞台設定が、もうシュールというかSFのようだ。そうか、そんな時代もあったんだね。  ストーリーはともかく、日本語、英語、中国語がちゃんぽんで出てくる会話は、ユニークだった。大学時代の恩師の鈴木孝夫先生が「日本語を話すのが、日本人だ」とおっしゃっていたと記憶するのだが(間違っていたら、ごめんなさい)。  そういう意味では、日本語しか話せない設定の外国人顔とか、日本語が話せない設定の日本人役者とか、「言語」

          岩井俊二「スワロウテイル」(1996)

          マーティン・スコセッシ「GoodFellas」(1990)145分

           今回見直して、原題が「GoodFellas」だと初めて気づいた。Good fellows とはちょっと違うニュアンス。なぜ日本の配給会社が、きれいな英語に直したのかよくわからないが、原題の方がよりくだけた感じでそして怖い。GoodFellasとは、スラングで「同じ組織の仲間」を意味するそうだ。映画を見終わると、改めてジーンとくるタイトルである。  マフィア映画というと「ゴッドファーザー」があるが、GFのフォーマルで大時代的な描き方と比べると、本作はよりリアルで身近で恐ろしい

          マーティン・スコセッシ「GoodFellas」(1990)145分

          ジョージ・ミラー「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)120分

           いやあ、びっくりしました。周囲の「名作です」という声に押されて見たのですが。なんすか、これは(笑)!?    まず「マッドマックス」(1979)は見ている。メル・ギブソンの出世作にして、私的には結構「サイアク」な印象がある。とにかく、妻子が殺されるイメージシーンが、おぼろげな記憶ながら、今でもトラウマになっているほどだ。当たり前の構成だが、「復讐モノ」は「ハッピーなシーン」とそれがぶち壊される「地獄のシーン」が前半の必須である。それが、私は嫌いなのである(だから見ないとはい

          ジョージ・ミラー「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)120分

          ジョン・ランディス「ブルース・ブラザース」(1980)133分

           先日、大学のBBQでお会いした方が「ブルース・ブラザース」Tシャツを着ていて、また見たくなった。1980年といえば、私はバリバリのティーンで、毎週土曜日午後には、米軍放送 FEN(Far East Network、現在のAmerican Forces Network)で放送されていた1週間遅れの「American Top 40」を欠かさず聞いていた。DJはお馴染み、ケイシー・ケイサム(1932-2014)である。ブルース・ブラザースという名前を初めて聞いたのは、「Gimme

          ジョン・ランディス「ブルース・ブラザース」(1980)133分

          保阪正康『蒋介石』文春新書(1999)

           蒋介石(1887-1975)というと、戦後中国を代表する軍人・政治家で、日中戦争に勝利後、毛沢東に敗れ台湾に逃げた歴史上の人物という印象だ。しかし、この本を読んで、時代的に私の人生とも重なっていることに改めて驚かされた。実際この本の執筆時点で、張作霖の息子・張学良(1901-2001)がハワイに存命だったことにも驚く。  先日、2022年に最年少台北市長になった蒋介石の曾孫とされる蒋万安(1978-)が来日したが、彼は蒋経国(1910-88)と正妻ファイナ夫人の孫ではなく

          保阪正康『蒋介石』文春新書(1999)

          スティーブン・スピルバーグ「プライベート・ライアン」(1998)170分

          「地獄の黙示録」から20年。映像も役者もだいぶ洗練されている。冒頭のノルマンディー上陸作戦の戦闘シーンは、戦場の残酷さがこれでもか!とリアルに(?)描かれている。ある講義で「動物実験の画像がつらい」と言っていた学生さんがいたが、イマドキの学生さんにはキビシイ映像なのだろうか?   ここからはネタバレになってしまうのだが、このストーリーはナイランド4兄弟という実在の兄弟がネタ元だという。第2次世界大戦中に、4兄弟のうち3人が戦死したと伝えられ、末弟フリッツ・ナイランドがノルマ

          スティーブン・スピルバーグ「プライベート・ライアン」(1998)170分

          フランシス・フォード・コッポラ「地獄の黙示録」(1979)

           この作品も通しで見たのは初めてである。でも、日本公開時に話題になったことはよく覚えている。The Doorsの「The End」がテーマ曲になったのも衝撃的だった。コッポラ監督(1939-)にとっては、「ゴッドファーザー」(1972)、「ゴッドファーザー Part Ⅱ」(1974)以降の大作となる。  ベトナム戦争といえば、かつてホーチミン(昔のサイゴン)に行った時、泊まっていた米国系ホテルでベトナム人スタッフに「あなたたちは、アメリカと戦って勝った、数少ない国ですよね?

          フランシス・フォード・コッポラ「地獄の黙示録」(1979)