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イ・ヨンジュ「建築学概論」(2012)117分

 ある映画をアマプラで見ていたら寝落ちしてしまい、気がついたらこの映画が始まっていた。いきなりレベッカのNOKKOを思わせるヒロイン(ハン・ガイン)が、超高いヒールをはいてある古い家を訪れる。誰かを訪ねたようにも見えるが無人のその家を、彼女はどこか悔しそうな顔で睨め付けて去る。
 そのヒロインがある建築事務所に建築士を訪ね「久しぶり」と親しげに(しかも上から)声をかけるが、その建築士の男は彼女のことを思い出すことができない。
 
 おいおい、のっけからなんて憎いオープニングなんだ。これでは、途中で止められないではないの!!

 実は2人は大学時代の同級生なのだが、彼女のことを思い出した建築士は、彼女の実家のリフォームを手がけることになる。こうして物語は、現在のリフォームと2人が初めて出会った大学1年の「建築学概論」の講義とパラレルで進んで行く。正にクロスカッティングのお手本のようだ。

 かつて2人は初恋同士だったのに悲しい別れとなった過去と、それを思い出して行く現在とが交互に描かれ、観客はこの展開に飲み込まれて行く。

 韓国で恋愛映画の動員記録を打ち立てたそうだが、シンプルなプロットながら2人の過去と現在の想いを現すエピソードがきめ細かく描かれる。過去の出来事の一つ一つを、2人とも現在まで大切にしてきたことが明らかにされて行く。果たして再会した2人は結ばれるのか?最後の最後まで引っ張られた。

 このようなシンプルな物語がなぜ日本で作れないのだろう?あまりにベタ過ぎて制作者がしらけてしまうのだろうか?でも一つ一つのエピソードを丁寧に描き、拾っていくことができれば、観客はついてくる。改めて韓国のストーリーメイクの強さを感じさせる作品であった。

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