付け合わせのサラダ

キュウリという野菜は、決して万能野菜ではない

キュウリと言えば、シャキシャキとした食感から、冷たい料理で重宝される野菜である

冷やし中華や棒棒鶏などの料理におけるキュウリの働きは大変素晴らしい

そのキュウリを、普段とは違う視点から観察してみよう

サラダと言うと、どのような具材を想像するだろうか?

日本のサラダシーンでは、キュウリ、トマト、千切りキャベツで構成された、いわゆるCTCサラダ(Cucumber - Tomato - Cabbage)を様々なシーンで目撃する

CTCサラダはそのシンプルな構成のため、フレンチ、オニオン、ゴマ、オーロラなど様々なドレッシングと相性がいいと考えられている

家庭の夕食や近所の定食屋さんと言った馴染みのある場面から、インド料理やタイ料理のレストランといった場面でも、CTCサラダを提供されることは多い

しかし、私はこのCTC構成の違和感に気付いたのである

近所にある生春巻き専門店では、サブウェイサンドイッチの様に好きな具材を選ぶことができる

メインにはチキンやエビなど6種類、野菜はニンジンやレタスなど10種類以上のオプションから、ソースも6種類の中から選ぶことができ、組み合わせを楽しむことができる

その野菜のオプションの中に、その店の生春巻きと同じ長さの、野菜スティックで目にするような太さにカットされたキュウリがある

このキュウリを入れるか入れないかで、生春巻きの印象が大きく変わることに気付いたのだ

キュウリの持つ瓜科の香りは、脇役に置いておくには余りに強い印象なのである

キュウリがあるかないかで、相性のいいソースが変わるのである

例えば、この生春巻き専門店の場合、ピーナッツソースの様にコッテリしたソースはキュウリと相性がいいが、酢醤油の様にアッサリしたソースではキュウリの香りに負けてしまう

マグロやタマゴに並んで、寿司業界ではキュウリと海苔と酢飯だけで構成された料理がある様に、キュウリは主役になりうる強い存在感を持った食材なのである

だが、どうだろう
日本の食文化、特にサラダシーンに置いて、キュウリと言う強い存在感を持った食材を、”取りあえず乗せる”作り手たちが多いように見受けられる

現代のデザインの考え方では、引き算こそが大事とされている

ここで言う引き算とは、作り手が何らかの商品や作品を作る際、その商品や作品の魅力を際立たせるために、それに必要ではないと考えらえる要素を削る過程のことである

沢山の素材が乗った状態そのものが魅力である料理を除けば、TOO MUCH(多すぎ)な状態は、その料理の持つ魅力を下げる傾向にある

キュウリを引き算することで、持ち味がクリアになる様な料理は多い

では、シャキシャキが欲しい時、キュウリ以外に何を使えばいいのか

私は、キュウリの代わりに、ラディッシュを提案したい

輪切りのラディッシュであれば、味において主張しすぎることなく、シャキシャキ感を提供し、逆にビジュアルの面では、キュウリの緑とは異なり、赤色の役割を果たすことができる

メキシコ料理では、ラディッシュが、東アジアや東南アジア料理におけるキュウリに近い用途で用いられる

例えば、タコスやケサディーヤの付け合わせとしてラディッシュが添えられることが多い

色合いと食感で考えた場合、ラディッシュと葉物の野菜だけで付け合わせのサラダは成立する

さらには、家庭の場合でも、ラディッシュは、パセリやバジルと同じように簡単に育てることができ、利便性にも優れる

この様に、私は既存のCTC構成に対して、新たにラディッシュを用いた構成のサラダを提案したい

あるシーンにおいて、一つの選択肢が二つに増えることは、大きな豊かさをもたらす

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