音楽を聞くと蘇る風景〜フジファブリック「陽炎」編
無音が苦手で、部屋では何か音楽を流したり、テレビをBGM代わりにしている。
歩いてる時もイヤホンで音楽やPodcastを聴いたり、運転中もラジオが欠かせない。
お風呂にも防水のスピーカーを置いて音楽を流している。
お風呂で流行りの曲をランダムで流していると、タイトルまでは覚えていないが最近よく耳にする曲が流れてきた。
そして私の頭の中に、ある風景が浮かんだ。
片側3車線の大きな道で信号待ちをしている。
所々、雲はあるが、晴れと言って差し支えない天気だった。
太陽は、ほとんど真上に位置しており、車の中では眩しさを感じることはなかった。
前には2台同じように信号待ちをしている車がいて、右手には3階建てのビルが見える。
そのビルは学習塾で、通り沿いの、よく目につく窓には大きな張り紙が貼ってあり、
その地域では有名ないくつかの高校の合格実績が書かれていた。
その張り紙の右下だけは、剥がれかけていて、
時折吹く風で、ぱたぱた揺れていた。
この日の昼間も車のラジオから流行りの曲が流れてきていて、
その時に見えた風景が風呂場で急に鮮明に思い出された。
特殊能力と言えば聞こえがいいが、音楽やラジオなどの、耳から入ってくる情報と、
その時に見た景色や風景などの、目から入ってくる情報がリンクして頭に蘇ることがたまにある。
例えば、フジファブリックの「陽炎」を聞くと、こんな景色を思い出す。
10年以上前、夏のフットサルコート。
大学生だった私は子供にサッカーを教えるバイトをしていた。
その一環で、子供のフットサル大会の運営のバイトの日があった。
仕事とは言っても、メインの業務は準備と片付けだけで、大会が始まってしまうと、タイムスケジュール通り進んでさえいれば特に大きな仕事はなかった。
この日も、滞りなく試合の日程は進んでいき、夕方になり、あと1試合を残すのみになっていた。
本や、雑誌も持っていて、一通り読んでしまい、あと少し何で時間を潰そうかと考えていた時に、
4歳離れた弟にフジファブリックの「陽炎」をおすすめしてもらっていたのを思い出した。
太陽はまだ沈んでおらず小学校2、3年生の子達が汗だくになりながら一生懸命ボールを追いかけている。
コートの周りの木々でできた影は、この日一番大きくなっていたが、
座っているだけでも、額から汗げ滲んできて、タオルか何かで拭わないと、顎からポツリと雫となって落ちてきていただろう。
初めて聞いた「陽炎」は初めて聞いた気がしないくらい、頭に馴染んで響いて、
その一方で、こんな曲は聞いたことがない、また聞きたい、何回でも聞ける、という正反対の感想がわいてきた。
何度か繰り返し再生をした頃には、最後の試合になる前に、自販機で買った缶コーヒーは私より汗をかいていて、
一口目に感じた冷たさは、もうなくなっていた。
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