2歳半の子と、33歳父の言い争い
2歳半の子供の不思議なところはたくさんあるが、その中でも特に不思議なのが、眠くなると不機嫌になるところである。
大人でも、睡眠不足とか、夜遅い時間になると、集中力が欠けたりして、受け答えが適当になることもあるが、子供の不機嫌は一味違う。
走り回って、物を投げて、大きな声を出す。
これが睡魔との格闘、寝る前の最後の力を振り絞っていると認識するまでは、普通に怖かった。
手が温かくなったら眠たいみたいな話を聞いたことがあって、手はぬくぬくにも関わらず、寝るどころか、日中よりもパワーアップしていたのには本当に驚いた。
その事実を認識してからは、自分の中で「眠田眠太(ねむたねむた)」さんという別人格だと思って接することにしている。
昼間穏やかに遊んでる我が子と、寝る前に大暴れする怪獣を同じ人間とはとても思えず、そうでもしないと気持ちが保てない。
「はーい、眠田眠太さんですねー」
と、スイッチを入れて最後のひと暴れを受け入れることにしている。
しかし、最近、その戦術がバレたのか、明らかに眠そうで、大暴れしているにも関わらず、
「眠田眠太さんですねー」
と、声をかけると、
「いいから!」
「違う!」
と、機嫌をさらに悪化させることが増えてしまった。
「いや、絶対眠いやん」
と、思いながら、次はどうやって乗り切ろうかと考えてると、
それを見ていた奥さんが、
「お、拗ね拗ね拗ね太郎やん」
と、言ってきた。
私は、子に「眠田眠太」と言う別人格を勝手に作っているが、
奥さんは私に「拗ね拗ね拗ね太郎」という別人格を勝手に作っている。
しかも、別に拗ねてない時にそれを言ってくるから、それで拗ねることもある。
「拗ねてないよ」
この時もそうである。
どうしようかとは思ったが、別に拗ねてはなかった。
「ほら、拗ね太郎やん」
とさらに奥さんは煽ってくる。
「拗ね太郎って言わんといてよ」
と奥さんと言い合っていると、さっきまで大暴れの眠田睡太こと、2歳半の子が、ニッコニコの笑顔で
「しゅねしゅねしゅねたろー」
と、言ってきた。
なんか、私は別のスイッチが入ってしまい、
「おい!フルネームで呼ばんといて」
と、珍しく強めの口調で子に言ってしまった。
「え?怒るとこそこなん?」
「ってか拗ね拗ね拗ね太郎ってフルネームやってんな」
と奥さんに笑われながら言われて、私も笑ってしまって、
それにつられて子も笑って、3人で穏やかな気持ちで眠りについた。
眠田眠太と拗ね拗ね拗ね太郎の戦いはまだ始まったばかりである。
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