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ワクチン接種の予約方法について調べました 【インターン生Tylerのレポートシリーズ】

はじめまして、Urban Innovation Japan インターンのタイラーです。今回から不定期で自治体関係のデジタル化について記事をまとめていこうと思います。

初回は、東京2020オリンピック直前となった現在、日本政府や各自治体が急ピッチで進めているワクチン接種について、その対応をまとめました。何か間違った情報などがあればコメントなどでぜひ教えて下さい!

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自分の意志で接種したいと思う人がいつでも接種できる体制をつくることが求められている中で、うまく対応している自治体がいらっしゃる一方、接続障害などのトラブルが発生してしまった自治体もありました。その背景には様々な事情があるようです。
(毎日のように下記のような記事を見かけますね)


本記事では、各自治体におけるワクチン接種の予約方法について、これまで公となっている情報をもとに、3つの分類でまとめました。

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多様な予約方法

前提として自治体ごとが導入している予約のやり方は様々です。

LINEを活用したやり方からSaaS型のシステム、地元の中小企業がスクラッチで作ったものまで、その方法論は多岐に及びます。※1
ですが、事実としてほとんどの自治体が電話やFAXとのハイブリッドで市民に合った予約方法を設けていることがほとんどです。※2

※下記のように逆に、はがき・電話・FAXのようなアナログの予約方法に特化した自治体もあります。アナログ手法については後ほど紹介します。

上記の前提を踏まえた上で、各自治体が設ける主要な予約方法をリンク集のような形でレポートしていきます。

※このnoteは、DevelopersIOに掲載されていた横田あかりさんという方の記事を参考にまとめさせていただきました。とても読みやすく濃い内容のものになってますので、こちらもぜひご覧ください。本当におすすめです。


1.LINEを活用したWeb予約システム

まず最初に紹介するのは、皆さんご存知国内でのMAUが8600万人以上にもなるコミュニケーションアプリ「LINE」を使ったワクチン接種予約システムです。

現在この予約システムは、下記のように神奈川県寒川町和歌山県紀の川市など全国約100の自治体で導入されています。


具体的な予約のやり方は、下記に記載があります。

代表的な企業 
株式会社Bot Express
エースチャイルド株式会社
株式会社コネクター・ジャパン
株式会社サイシード
ソーシャルデータバンク株式会社
株式会社デジタルガレージ
トランスコスモス株式会社
hachidori株式会社
プレイネクストラボ株式会社
モビルス株式会社
ハヤレジ株式会社
株式会社ボットロジー

導入事例1:群馬県での事例
LINE予約システムの自治体活用例として、群馬県は前橋、高崎市は除く太田、沼田、安中市など計22市町村で利用を予定しているとのことです。
県がシステムを整備して市町村が使うのは全国的にも珍しいそう。
LINEを活用することで24時間予約でき、居住地を登録すると接種の開始時期の通知が届くようになります。便利。

導入事例2:佐賀県での事例
佐賀県の唐津市は、予約完了までの流れを動画で説明しています。
さらに同市はLINE以外にも電話での対応もしているとのことです。

トラブル事例
一方、冒頭申し上げた通り一部でシステムトラブルが発生した自治体もあるそうです。

こちらは各地で一時的にLINEを使った予約ができなくなった、という事例です。データ処理に関わる米国のIT企業「セールスフォース・ドットコム」に障害が起きたのが原因とみられています。
なお、このシステムトラブルで東京都目黒区狛江市金沢市三重県鈴鹿市大阪府和泉市長崎県佐世保市などが新規予約の受け付けや確認サービスが一時的に利用できなくなったとのことです。

また、システムトラブルとはまた少し異なりますが、セキュリティ面に懸念し「LINEでワクチン予約」の利用を保留した自治体も複数あるそうです。


2.Web予約システム

次に、接種対象者の約90%をカバーしているワクチン接種予約サイトを提供するベンダー各社をざっくりとその特徴に分けて紹介していきます。※3

全国1700以上ある自治体のうち半分強が様々な形でWeb予約システムを活用しています。最初に紹介したLINEを活用したものもそのうちの1つに過ぎません。

委託事業者の代表例としては、下記の企業が提供するシステムが多くの自治体に採用されているようです。

株式会社コントロールテクノロジー
2021年4月6日に、自治体向けに提供している「新型コロナワクチン接種予約受付システム by RESERVA」のVer.5.0をリリース。※4

日本マイクロソフト
自治体や、自治体から接種業務を受託する企業に予約の受け付けなどを可能にするクラウド型のシステムを提供。 
同社の顧客情報管理(CRM)向けクラウド「ダイナミクス365」などをもとに開発したシステムで、予約の受け付けや接種対象者への通知、ワクチンの在庫管理などの機能を備える。※5

株式会社NTTデータ関西
新型コロナウイルスの「ワクチン接種予約サービス」を人口5万人以下の地方自治体を対象に、最大100団体へ2021年5月から無償提供。
地方自治体がワクチン接種の予約状況、接種の実績情報をリアルタイムに確認でき、予約状況に応じたワクチンの適正配分や的確な体制整備など効率的な運用につながることがサービス導入の大きな利点。※6

SAPジャパン株式会社
日本の自治体から住民へのワクチン接種に至る管理と接種状況のリアルタイムでの可視化を行うサービス「ワクチン・コラボレーション・ハブ」の日本での提供を開始。
サービス利用者は、住民自身によるWeb予約,コールセンターによる予約受付に対するLINE AiCallでの支援,接種会場での受付時の接種券・本人確認,接種記録の電子化,住民へのフォロー(2回目接種案内、副作用確認、一斉情報周知など),接種進捗可視化(ダッシュボード),接種パスポート(接種証明書電子交付)、などの機能を享受できる。※7

シミックホールディングス株式会社
同社と山梨県は、県内における新型コロナウイルス感染症ワクチン集団接種の体制整備を目的とした包括連携協定を締結。ワクチン接種体制の構築支援
、ワクチン接種会場の円滑な運営に関するサポート、デジタル情報管理システム導入を含めた長期的な副反応フォローアップを協働で進める。※8

hey株式会社
「新型コロナウイルスワクチン接種予約システム - STORES 予約」を2021年5月12日から2022年3月31日まで無償提供。※9

株式会社サイシード
「新型コロナウイルスワクチン接種専用予約管理システム」が、51の自治体に正式に採用。※10

ぴあ株式会社
スポーツや音楽コンサートなど年間約7000万枚のチケットの販売を手掛けるノウハウを生かし、先着順で予約が殺到しなくても済むように、抽選方式で接種日を予約できる機能を備えるシステムで、迅速なワクチン接種につなげる。※11

Web予約システムを利用した具体的な予約のやり方に関しては、自治体ごとで採用するシステムや方針などで多少違いがありますが、今回は二つの自治体のやり方を参考として紹介します。

事例紹介1. 江東区
最初に取り上げるのは東京都江東区の事例になります。
予約完了までの手順です↓
① 摂取券とパスワード、メールアドレスを入力
② メールアドレスの登録が完了し、アドレスにメールが届く
③ 受信メールに記載のURLを開いてログインする
④ 名前・パスワード等を入力設定する
⑤接種会場を検索
⑥希望会場を選択して予約ボタンをクリック
⑦カレンダーが表示されるので希望日を選択
⑧  予約を確定する

同区では、区の公式HPで動画と画像を使ってWeb予約の詳しいやり方を記載しており、非常に分かりやすい導線設計になっています。これならお年寄りの方でもweb予約ができそう。


事例紹介2. 習志野市
続いては千葉県習志野市の事例です。
Web予約のやり方:
① 専用の予約サイトにアクセスする
② 個人の認証
③ LINEとの連携の有無
④ 連絡先の入力
⑤ 「場所」と「日時」の両方を入力する
⑥ 予約内容の確認

同市はPDFファイルに予約のやり方を記載しているため、分かりやすさではどうしても江東区に劣りますが(ファイルに辿り着くまでがワンステップ長い)、ファイル内の説明はとても平明でこれを見ながらであればそう分からなくなることはなさそうです。

トラブル事例
ワクチン接種のWeb予約のあれこれについてここまで紹介してきましたが、LINEの件と同様に各地でシステムトラブルやハプニングが起きているようです。 アクセス過多による接続障害だけでなく、予約自体が取れていなかったといったケースもあったようです。
こちらに関しては下記のサイトでかなり詳しく記載されていますので、そちらを参考にされると良いかと思います。

3.電話やメール(接種申込書等も含め)、FAXでの予約

最後に紹介するのが、電話やメール・はがきといったアナログな予約方法についてです。

「国中がデジタル化を推し進めているのに何故アナログ????」

と思われる方もいるかもしれませんが、情報リテラシーがあまり高くない高齢者の割合が多い小規模自治体にとってはこのアナログな手法が功を奏していることも少なくありません。

宮城県相馬市南相馬市では、一般向けの集団接種もはがきで日時を通知する「アナログ作戦」を採用しており、これまで集団接種対象の高齢者の57%が1回目の接種を終え、かなりスムーズに進んでいる模様です。


他にも奈良県平郡町では、集団接種の予約を抽選制にしており、抽選に漏れた5~10人をキャンセル待ちのリストに入れ、接種日に連絡がある可能性を事前にはがきで知らせる、という余剰を最大限に活用する正のサイクルを作ることに成功しています。

これら自治体以外にも、アナログ手法でワクチン接種の流れを加速させている事例は多く存在します。



コロナ禍”だからこそ”明らかになったこと

調査を進めていく中で、自治体ごとに予約の方法がバラバラであること、なんとかオンライン予約にも対応を急いだものの、トラブルが発生してしまったケースも多かったことがわかりました。トラブルが起きたときに批判することも大切かもしれませんが、今は成功例を積極的に開示し、国全体のワクチン接種の流れを加速させていくことが最重要項目だと思います。

特に、自治体によっては、UX/UIについては改善の余地がありそうです。もしかすると、今からシステムを改変するのは難しいのかもしれませんが、そういったモデルケースやノウハウを積極的に自治体間で共有していくことが、今後自治体のDXを進めていく上で必要なことなのではないでしょうか。

そして改めて、公共システムをデジタル化していくことの意義、誰一人取り残さない優しいDXに取り組んでいく必要性を実感することとなりました。
『コロナ禍”だからこそ”明らかになったこと』をそれぞれが正しく解釈し、未来に繋げていこうとする姿勢を持つ者には、このコロナ禍の期間は非常に貴重な他に代え難い体験になるはずです。



出典

※1: 倉敷市が接種予約を一元管理 新システムで医療機関の負担軽減,Medica,2021.3.16

※2: 新型コロナワクチン接種の予約方法,堺市,2021.6.7

※3: 全国1700以上の自治体のワクチン接種予約方法について調べてみたら課題が見えてきた,DevelopersIO,2021.5.26

※4: 61の自治体が導入!機能をアップグレードした「新型コロナワクチン接種予約システム by RESERVA」Ver.5.0をリリース,PR TIMES,2021.4.6

※5: 日本MS、ワクチン接種業務の支援システム参入,日本経済新聞,2021.2.18

※6: 新型コロナウイルスの「ワクチン接種予約サービス」を無償提供
~人口5万人以下の全国の地方自治体を対象~
,株式会社NTTデータ関西/ニュースリリース,2021.2.16

※7: SAPジャパン、新型コロナウイルスワクチン予防接種の調整と展開を支援するワクチン・コラボレーション・ハブの日本での提供を開始,SAPジャパンプレスルーム,2021.2.16

※8: 全国初、山梨県とシミックHD包括連携協定を締結
県内の新型コロナウイルス感染症ワクチン接種体制整備へ
,シミックグループ/ニュース&イベント,2021.2.1

※9: ヘイ、「ワクチン接種予約システム」を無償提供--同社の「STORES 予約」活用,CNET Japan,2021.5.28

※10: サイシードが開発する「新型コロナウイルスワクチン接種専用予約管理システム」を50以上の自治体が採用、人口約1158万人が対象に,PR TIMES,2021.2.15

※11: ぴあ、コロナワクチン予約システムを提供 自治体向け,日本経済新聞,2021.5.13

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