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読書感想文

強運の持ち主|瀬尾まいこ

「結局、どんな才能のある人の言葉でも、予言や占いはあてにならない。
自分で確かめてこそ、納得ができるのだ」

人間関係に疲れてOLから占い師に転身した、吉田幸子ことルイーズ吉田。
相談にのることが上手な占い師が、訪れる人の悩みを解決していく短編集です。
元営業職で鍛えた話術を駆使し悩みを持った人の背中を押していく。
暗闇の中で彷徨っているときの占いは道標の1つになるかもしれない。
運勢を動かすのは自分自身で、何かを決めるときに身近な人と関わることできっかけになる。

あのこは貴族|山内マリコ

「ああ、日本は格差社会なんじゃなくて、昔からずっと変わらず、階級社会だったんだ」

東京で生まれ育った、上流階級のお嬢様の華子
地方から上京し、淡々と東京で生きる一般女性の美紀。
異なる2人が、1人の男性をきっかけにして出会うことで、自分の人生を切り開いていく。
生きていると、自分に合った世界を感じとり、違うと感じた世界とは線を引いてしまう。
目には見えないけれど、確実に存在する立場や権利を持った人との違いを感じる境界線。
自分を無視せずに、肯定できる自分でいることが幸せなのかもしれない。

白いしるし|西加奈子

「報われなくてもいいから、と、思った」

友人の瀬田に連れられて行った、画家の個展。画家の名は間島明史という。
とある絵を見た瞬間、香織は間島に強烈な恋心を抱く。
痛々しいほどの失恋を重ねてきた、32歳独身。のめり込まないと構える。
自分を根本から虜にしつつも決して振り向かない相手との出会い。
恋は選べない地獄。どんなに辛くても、好きだと思うことはやめられない。
1つ1つの恋愛は深く、終わったときの傷口は深くなっていく。

傲慢と善良|辻村深月

「軽薄さ、とは言い換えれば、それだけ人生経験があるということの裏返しであるかもしれない」

婚活マッチングアプリをきっかけに出会った架と真実。
結婚を数か月後に控えたある日突然、真実が姿を消した。真実はストーカー被害を訴えていた。
彼女の居場所を探すため架は故郷を訪れ、過去を知ることになる。
「自己主張しないこと」=「謙虚」ではない。
視野の狭さからくる偏見、悪気なく無自覚に持ち合わせていたりする傲慢さ。善良なはずの自分。
自分で自分を評価するとしたら何点ですか?

デートクレンジング|柚木麻子

「環境が似たもの同士じゃなきゃ、女は仲良くできないようになっている」

マネージャーとしてアイドルグループを支え続けた実花は解散をきっかけに婚活宣言をする。
妊活中の佐和子は親友の結婚への執念に戸惑い、次第に2人の間には溝ができていく。
ステージが変わり、自然と話が嚙み合わなくなる女性同士の友情。
女の幸せは結婚ですか?仕事、夢、出産…自分が求めるタイミングで訪れない不安。
自分らしく生きるとはどういうことなのか、女性はこうあるべきという呪縛は解けるのか。


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