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【読書感想文】「怒りの正体」ハンチバック/市川沙央


「ハンチバック/市川沙央」を読んで。


怒りの感情に際したとき、じぶんの平穏を呼び起こそうと必死に、その正体をさぐろうとするようになって久しい。
怒りが起こった時よりも、怒りをぶつけられた時、特にそうする。
いわゆるアンガーマネージメントの一種なのかな、と思う。他者の問題をじぶんのものとして勘違いしないための手はず、でもある。

怒りの底にあるのは、大抵さびしいとか、かなしいとか、怖いとか、くやしいとかの感情だ。怒りとして表に出てきたのは、それを受け止めきれなかったから。受け止められず、外側の何かのせいにして、じぶんを守ろうとする。

そういう人たちに、私はこれまでずいぶんと当たられてきたので、その過程で先述の方法を取るようになった。正体が見えたとき、やっと、息が戻り、私が戻る。
ああこんなに小さいにんげんに付き合うのはやめよう、と思い、口をつぐむ。あなたとは一緒にいられないの、ごめんあそばせ、とほほえみをたたえながら。

それにしても、すごい熱量だった。はじめからおわりまで、一貫して睨みつけている。

表現のひとつとして、創作物だから、生まれ得た本であることは否めないだろう。作者が当事者でなかったとき、社会はどんな反応をしたのだろう、とも思う。

だからこそ、誰が言うか、はとても重要な要素だ。そしていつ言うか、ということも。

作者の怒りが、水面に落ちた一雫となってはるかまで揺らしますように、と願っている。

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