大増殖天使のキス (#毎週ショートショートnote 投稿用)
「天使がきたぞぉぉおお!!!」
その声を聞いた人々は一斉に逃げ惑う。
背に翼を生やした人型の生物が、空からふらふらと我々に向かって突っ込んでくる。
「ぐわぁぁあああ!!」
「アナターー!!」
それを避けられず、ひとり、またひとりと天使のキスの餌食になっていく。
キスされた者はそのまま倒れ、身体中を痙攣させながら悶えている。
「あ、アナ、ア」
「ダメだ!! もう助からない。黙って走れ!」
餌食にされた者の妻がその場にへたり込む前に、近くの男性が彼女を担ぎ上げ、そのまま逃げていく。
いつからこんなことになってしまったのだろう。
全ての始まりは、空からあの異形共が降りてきてからだった。
最初は一匹だった。
その一匹がおもむろにキスをした途端、キスをされたものがメキメキと背から翼を生やし、理性を失った――今追いかけているような――怪物へと変貌した。
この世界はもう終わりへと近づいている。
大増殖した天使のキスによって。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画のお題をお借りしました!
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