「放射性物質は原発外に出ない」に固執する国 福島第一事故の教訓は住民避難に生かされないまま 前滋賀県知事の警告
福島第一原発事故後、国はなにか政策を改めたのだろうか。事故の教訓は生かされているのだろうか。特に、原発周辺に住む住民の避難や居住地の放射能汚染の防止は非常に気になる点だ。そうした「原子力防災」の実際を知るキーパーソンとして、前滋賀県知事の嘉田由紀子氏(在任2006〜2014年。現在はびわこ成蹊スポーツ大学学長)に2015年9月8日、同大学でインタビューした。滋賀県は国の原子力防災のあり方に疑問を提示し、県独自の汚染シミュレーション調査と避難計画を作成した数少ない自治体である。
結論からいうと、国は福島第一原発事故後も原発防災態勢をほとんど改良していない。滋賀県に隣接する福井県は15の原子炉が集中する「原発銀座」であり、もっと近い敦賀原発は滋賀県側から13キロしか離れていない。なのに滋賀県は「『立地自治体』(原発が立っている都道府県)ではないという理由で原発防災や再稼動にタッチすることを許されない。福島第一原発事故の放射性降下物が30〜50キロの範囲を強制避難が必要なほど汚染したことを考えると、その教訓は生かされていない。要点は次の通りである。
1)国は「立地自治体ではない」と滋賀県にSPEEDIのデータを提供することを拒否した。
2)福井県にある大飯原発の再稼働する際、国は「滋賀県の同意はいらない」とした。
3)福井県の原発で事故があると、琵琶湖が汚染され、上水道水源が汚染されるため、京都府や大阪府も巻き込まれる。
4)42キロ圏内の住民の20時間以内の避難は物理的に不可能。ヨウ素剤配布も不可能。
(烏賀陽注:この記事を公開後の2015年9月26日に嘉田氏から文言を修正してほしいとの連絡がありました。発言の撤回や方向転換はなく、細かい字句の修正に留まっていましたので、修正しました)
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