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【読書感想】傲慢と善良 | 婚活に疲れた人に読んでほしい

☆キーワード

婚活、マッチングアプリ、学歴格差、女のマウント、地域ヒエラルキー、出生コンプレックス

☆ドックイヤー

『婚活で多くの相手を見続けた結果、心が麻痺していた。相手を「人」としては見られなくなっていく。条件のラベルをつけたリストの中から、設定や背景だけを抽出して、無遠慮に品定めするような目で相手を見ていることに自分で気づくと、息苦しくなった。』p87
傲慢と善良 | 辻村深月

主人公の架が自身の婚活を振り返って放つ言葉。
なぜか「その人」をありのままの「その人」として見られない。
それは確かに「その人」を「人」ではなく「商品」として見ているのと同じなのかもしれない。


『目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、"自分がない"ということになってしまう。』p136
傲慢と善良 | 辻村深月

"自分がない"この感覚のひとつの解釈であるこの言葉…。言語化がすぎる、ツライ…!


『ピンとこない、の正体は。その人が自分につけている値段です』p137
傲慢と善良 | 辻村深月

結婚相談所の小野里さんが放ったこのフレーズが一番の衝撃でした。
相手にピンとこないのは、自身が相手に自分以下の値段をつけているから。
みんな自分につけている値段は相当高い。
あーーーもうやめてください。本当にその通りなんです。。

『こんな過去や好みを持った自分を理解してくれる相手、みたいなものを求めすぎて、逆に相手にもそういう物語を持ってるかもしれないってことの方は疎かになる』p176
傲慢と善良 | 辻村深月

主人公の婚約者・真美の姉である希美の言葉。
私もある意味この節がある、、自分のバックグラウンドに自信がなさすぎて、理解してくれるっぽい人に会うと割とチョロい。けど、相手にだって何かしらの物語があるんだよね。そこを置き去りにしっちゃって相手との間にヒエラルキーができちゃったりとか。
私は私の物語を無理に共有する必要はないんだよね。
てかむしろそこを共有しない女性の方がモテる気がする。

『軽薄さ、とは、言い換えれば、それだけ人生経験があるということの裏返しでもあるのかもしれない。』p190
傲慢と善良 | 辻村深月

親の望んだ「いい子」でいることが必ずしも人生で役に立つとは限らない。善良でいることが、恋愛、婚活で障害になるって経験はめちゃくちゃある。
ただ相手の事を大事に思っているだけなのに、それが重いと思われる。善良、いい子でいるだけでは愛してもらえない。
私も友達や知り合いに「優しい人」と言われるのが一番嫌いです。それは善良に生きてきた自分にコンプレックスがあるからだと思います。なので「理央は優しいからーーー」とか言われたらこいつ私のこと分かってないな、と反応しない努力をしている。(そうでもしないと自尊心が保てないw)

『自分の娘だというだけで、私のことを、架の家より"いい"と信じすぎる。相手の家にケチをつけられるほど、どうして自分の娘の価値を過信できるのだろう。』p408
傲慢と善良 | 辻村深月

自分の娘の価値=自分の価値、ということなのかな?私は親ではないからその感覚が分からないけど、常に依存先が人だと、生まれた時は両親、次は恋人、はたまた友達、旦那、そして最終的に子供、、って感じてどんどん依存先を変えていって、最終的にこういう考えになっちゃうのかも?とか思った。

『 だけど、もっとずっとシンプルに、本当は毎回、思うことはひとつだった。』p482
傲慢と善良 | 辻村深月

この後に続く言葉にとても救われたし、結局人間関係の真理ってここなのかなと思いましたが、ラストシーンなのでここは一旦記載を控えます。
ただ備忘録として自分が最後の1ページに心が動かされたことをここに残しておきます。

☆まとめ

20代後半〜30代で、恋活や婚活の経験がある方なら感じたであろう数々のモヤモヤポイントを、驚くほどあっさりと言語化してくれている小説です。

その言語化があまりにも端的に的確なので『そんな現実をぶつけないで〜〜』と辛いシーンも多いですが。。
結局、人間関係の構築で大事なことって時代が変わってもずっと変わらない。そういうことなのかな〜と思いました。

こうして見返すとp200〜480まではドックイヤーが無かったのですが、それは主人公2人の価値観が更新されていく過程で、まだ体験したことない部分だから共感できなかったのかなぁと思いました。私も、自分の中にある「思い込み」という名の呪いを一つでも多く解いていきたいな。

独身アラサーOLさんには途中かなりツライ場面もあるかもですが、結果的にとても前向きになれる小説です。

ちなみにこの小説を読んでる間に放送されていた「silent」というドラマにも「傲慢」と「善良」を感じる部分がたくさんあったなぁ〜。

個人的にあのドラマは全然好きじゃなかったのですが、好きじゃないということは何かしら自分の中に反応があったという事なので、後日また書きたいと思います。


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