マガジンのカバー画像

会計学の基礎

77
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

経済は魔物、会社は生き物、会計はカメラ:実践しながら学ぶ

経済は魔物、会社は生き物、会計はカメラ:実践しながら学ぶ

経済は魔物、会社は生き物、会計はカメラ。

経済は魔物。自然災害を含めて予期しないできごとにより変化していきます。そして会社はその中で何とか生き残ろうとしていきます。それを捉えようとするのがカメラである、会計というわけです。

経済に関して言えば、最近はますます予想が出来ない、と強く感じています。

そんなことを言っていたら投資はできない、わけですが、政治や災害、テロなどの突発的なことで容易に変化

もっとみる
親子上場廃止が加速する?:NTTドコモのTOB

親子上場廃止が加速する?:NTTドコモのTOB

えらいことが起きました・・・・。

というと大げさかもしれませんね。

9月28日未明にNTTによるNTTドコモのTOBが発表されました。

NTTはドコモ株の66.2%を保有している。残る約34%の株式をTOBで一般株主から取得する。NTTの6月末の手元資金は約1兆円で、買収資金の多くは負債で調達するとみられる。

【関連記事】
ドコモ社長に井伊基之副社長 4年半ぶり交代へ
完全子会社化により、

もっとみる
実務の結晶である有価証券報告書・四半期報告書への観察・考察力を高めよう

実務の結晶である有価証券報告書・四半期報告書への観察・考察力を高めよう

インゴルドの「学びの狩人」の話、探究だけでは何か足りないのではないか、という今の心にピッタリとくるフレーズです。

インゴルドの分野は文化人類学であり、観察・考察力を培うことが求められる分野です。つまり、自らの観察から得られたもの、データに対してどのような意味付けを与えていくのか。そこに何を見出すのかを考えていかなければなりません。

この考え方を、『会計学の学び』に置き換えて、有価証券報告書・四

もっとみる
感覚を身につける:AIに置き換えられない会計の要素

感覚を身につける:AIに置き換えられない会計の要素

会計学の学びはどこまで定式化できるのでしょうか?

知識、技術として学ぶことが可能な部分とそうでない部分があるはずです。

そうでない部分は、感覚といってもよいかもしれません。

学問を学ぶのに「感覚」の話?

というと怒られるかもしれません。

会計学だけでなく他の学問もそうかもしれませんが、各分野において土地勘、というか定式化されていない部分がある気がします。特に社会科学、人文科学においてはそ

もっとみる
新型コロナ禍における「継続企業の疑義」に注目する

新型コロナ禍における「継続企業の疑義」に注目する

リスクに関連する情報は有価証券報告書内で記載されていますが、一番インパクトあるのは、やはり継続企業の前提に係る情報、ですね。継続企業の疑義!が付くと投資家が一斉に手を引いてしまうことになりかねません。

こちらの記載は、2003年3月期決算より始まりました。翌年度、事業リスク情報の開示も始まりましたので、両年度でリスクに関する情報が一気に充実した訳ですね。

財務諸表は継続企業であることを設計され

もっとみる
モデルに依拠した時価情報が抱えるジレンマ

モデルに依拠した時価情報が抱えるジレンマ

会計情報においても恣意性が高い、裁量が大きい情報がいくつかあります。

例えば、非上場の株式(有価証券)については、一定のモデルを用いて見積もることになります。

株式、有価証券においては市場で取引されている価格で見積もるのが一番推奨されるやり方です。

例えば、株が一株100円なら帳簿上、100円と評価されて、その価格が貸借対照表上に計上されます。

これが値下がりして、価格が80円になれば、2

もっとみる
会計実務の現場で活かせるインプットを提供する:これからの会計研究者に求められること

会計実務の現場で活かせるインプットを提供する:これからの会計研究者に求められること

このところ、公認会計士の方々と勉強する機会を頂きまして、色々と思うところありましたので、書き記しておこうと思います。

これは会計士に限らず、会計実務担当者、つまり、財務諸表作成者として携わる方々も含んだ話です。

現代の企業会計においては、裁量の余地は確実に大きくなっています。ただ、その裁量の余地のほとんどは会計選択ではなく『どのように認識、測定するか』という価値測定そのものに対するものです、

もっとみる
会計の基本的な機能を意識して研究する

会計の基本的な機能を意識して研究する

会計はツールなので、研究していているとその対象にやたら詳しくなってきます。

私の例でいえば、企業年金、退職金、保険ですね。

その対象について知ることでより適正な会計処理が如何にあるべきか、が見えてきます。

陥りがちなのが、会計ではなく、測定対象そのものが研究対象になってしまうこと。

これは実際にあります。私の大先輩で無形資産の会計を研究していた方がいました。本も書き、新進気鋭の研究者として

もっとみる
活版印刷革命と複式簿記の教科書「スンマ」の出版

活版印刷革命と複式簿記の教科書「スンマ」の出版

会計はコミュニケーション・ツールです。ただし、ただのコミュニケーションツールではありません。定量的な情報、つまり貨幣情報が含まれています。

この貨幣情報を伝えるコミュニケーションツールとしての発展に着目する必要があります。

ですから、実は私は非財務情報に対しては懐疑論者です。

つまり、非財務情報は、貨幣情報あって初めてリッチ(豊富)な情報になるのであって、定性的な文字情報だけでは成り立たない

もっとみる