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会計の基本的な機能を意識して研究する

会計はツールなので、研究していているとその対象にやたら詳しくなってきます。

私の例でいえば、企業年金、退職金、保険ですね。

その対象について知ることでより適正な会計処理が如何にあるべきか、が見えてきます。

陥りがちなのが、会計ではなく、測定対象そのものが研究対象になってしまうこと。

これは実際にあります。私の大先輩で無形資産の会計を研究していた方がいました。本も書き、新進気鋭の研究者として有名になりました。もちろん、会計の研究者としても有名で、かつその方面でも有名になりました。

いつの間にか、その方面の研究者になってました。

これは悪いことではなく、よいことであるとも捉えられます。

完全に他分野の研究者になってしまうのは会計の研究者としては残念な気持ちです。

この辺りの使い分けが上手い先生もいらっしゃいます。

かくいう私も、企業年金分野に特化した論文を書くこともあるので、使い分けしているタイプといえるかもしれません。

とはいえ、認識対象の分野に関する研究者になるのも魅力的ですが、せっかくなので両方の分野に詳しいままでいる方がいいかな、と私は思っています。

認識対象と会計基準との間を行ったり来たりする。それが会計の醍醐味ですね。

では、会計の問題とは何でしょうか?私はこのように整理しています。

会計の基本的な機能:情報提供機能、利害調整機能、受託責任機能

の3機能を有しています。これは管理会計でも財務会計でも違いはないと考えています。

そして、事象を

認識、測定、表示、開示に

落とし込んでいくのが会計です。

機能に違いはなくても、ステークホルダーについては管理会計と財務会計では明確に異なります。

管理会計においてはステークホルダーが社内に限定されるのに対して、財務会計においては、社外の関係者も含まれます。一般性、公共性が重視されるのが財務会計です。だからこそ、監査などのプロセスが必要とされるわけです。一方で管理会計は、社内利用目的の情報なので、情報の形式を自由にアレンジ・カスタマイズできるところに強みと面白さがあります。

ポイント:

管理会計はステークホルダーが社内の関係者に限定される。自社の経営の効率化が重視される。⇒情報の形式を自由にアレンジ・カスタマイズできる。

②財務会計はステークホルダーに社外の関係者も含まれる。⇒情報の形式に統一性が求められる。公共性、一般性が重視される。

先ほど示した機能は、情報をどのように使うか、ということに依拠しています。財務会計においては明示的には情報提供機能、すなたち意思決定に有用な情報を提供することが重視されます。ただし、関係者間の利害調整を行う機能や、経営者の経営者責任を問う受託責任機能も、明示的でないにせよ備わっています。

管理会計においてはどうでしょうか?私は本質的には変わらないと捉えています。企業の組織構成によるでしょうが、情報提供機能が一番重視されているかもしれません。各部門のパフォーマンスを測定するためには正確な認識、測定が欠かせません。各部門での報告された結果が何らかの意思決定に使われる場合もあるでしょうし、部門間の利害調整を図る(部門間で不利益を起こさないように、部門間での内部取引価格の設定など)目的で使われることもあるでしょう。部門長の責任を問うために使うこともあるでしょう。

管理会計にせよ、財務会計にせよ、どの機能を重視するかで認識、測定、開示、表示の在り方は変わってきます。

情報提供機能を重視するならば、情報が豊富であることが求められるかもしれません。利害調整機能を重視するならば、利益の実現性、すなわち利益が確実に現金化されるかどうかに注目することになります。受託責任機能は、経営者(責任者)のパフォーマンスを測定することが重視されるでしょう。

会計の研究として、まずどの機能が重視されるべきなのか。そして他の機能との関係性をどのようにとらえるべきなのか。こういう視点は案外見落とされることのような気がします。

つまり、何のための会計なのか?

認識、測定、表示、開示を考えてく前の出発点として必要でしょうね。


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