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平日瞑想旅行記


山口に行ったことがありますか?

と聞かれたら、おそらく山口出身以外の人は、ほとんど「はい」とは答えないのではないだろうか。
失礼な言い方になるが、広島や福岡には行ったことがある人が多くても、山口や佐賀に行ったことがある人は圧倒的に少ないはず。(勝手に決めつけるな、と言われるかも)

ただ、私は山口、大好きなんだよな〜。

以前から、「福岡の人は、隣の山口に癒されに行くといい」と思っていた。


山口は「西の小京都」という別名があるくらい、昔ながらの街並みが残っている場所が多い。
自然も多い。
ただ、交通の便が今ひとつ、という部分は否めないので通常車で行くのだが、今回は電車(新幹線、電車、バス)で行ってみた。

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山口のおすすめエリア

山口で私がお勧めしたいのは、大きく二箇所だ。

一つは、仙崎方面。今は角島が有名だ。
もう一つが、山口市内中心部の瑠璃光寺と雪舟庭だ。

今回は、瑠璃光寺と雪舟庭に加えて、「中原中也記念館」にも行った。

山口は詩人が多い

実は、山口には有名な詩人が複数いる。

一人は、金子みすゞ「みんな違って、みんないい」で有名な詩人だ。
金子 みすゞさんは、仙崎の出身だ。そこには金子 みすゞ記念館があり、私は2度行ったことがある。
記念館に最初に言った時は、彼女のかわいそうな人生を見て、涙が止まらなかった。
一方で、もしかするとその悲しい人生があったから、またはあの仙崎にいたからこそ、あれらのイキイキと景色が見えるような詩が書けたのかもしれない、とも思う。

そして、中原 中也だ。
中原 中也は名前は知っていても、私はあまり知らなかった。
だが、山口に行こうと思い立った時、一度も行っていないところにも行って見たいと思い、探したところ湯田温泉の近くに(山口大学が近くにある)記念館があるではないか。
早速行ってみようと思い立ち、新幹線で新山口まで行き、その後山口線に乗って到着した。

湯田温泉到着

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そこから歩くこと10分ほど。
先に目についたのは、「足湯」
誰もいないし、無料だし、早速足湯に入ってみた。

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少し熱いな、と思ったが数分経つと足首から下が真っ赤になり、足が温まるとなんだか頭に血が上って頭の働きが良くなった気がした。(気がしただけかもしれない)


中原 中也記念館


足湯を上がり、数歩歩くと「狐の足跡」という、カフェが見えた。メニューだけ見て、記念館を探そうと、ふと振り返るとそのカフェの目の前に、立派な建物があり、そこが中原中也記念館だと知った。

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そのお隣にある民家には、表札に「中原」と書いてあり、のちにその方は中原中也の弟さんのお名前であることを知る。

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かなりモダンな建物で、ワクワクした。

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なんでも中原中也の実家は、お医者様だったらしく、地元の名士の家柄だったそうだ。
その長男として生まれ、詩人として生きることを決めたのは、かなり大変なことだったのだろうと想像がついた。

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中に入り、一つ一つ詩を読む。
今日からイベントが始まっていて、「一つのメルヘン」というコーナーが設けられている。中原中也の命日が10月22日ということもあるのか、毎年中也ファンの人たちと一緒に中原家のお墓にお墓参りに行くイベントも、コロナ前までは行っていたらしい。
今年は、「名刺交換会」というのを行うらしく、山口県立大学の学生の皆さんが主催するらしい。


次々に中也の詩を読んでいくうちに、その人生に想いを馳せる、想像する。
時代が違うとは言え、かなり早熟であったようで、17歳で年上の女優と同棲をしているし、30歳の若さで亡くなっている。
彼が早熟になったのは、実家が病院であり、幼い頃から人の生き死にを間近で見て育ち、6人兄弟のうち弟を亡くし、自分の子供も亡くしている。
結局中也の血を引くものは、残っていない、という事実も悲しい。

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記念館のテラス


記念館にいると、なぜか泣ける。
詩を読んでいくたびに、情景が浮かび、その心の琴線に触れたように思い、泣ける。
彼の家族は次々に亡くなっていく。詩集を自費出版で出してもなかなか売れず、恋人を友達の小林秀雄に取られ、その悲しい人生が彼に詩を書かせたのか、と思うほど壮絶な人生だ。

こうした記念館に来ると、私はその作品もだが、その作者自身の人生に関心を持ち、そこからこの詩を見てしまう。
結局全詩集を購入したので、これから毎日読んでいこうと思う。

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大満足の記念館だった。

そして目の前にあるカフェ「狐の足跡」に立ち寄る。
湯田温泉がそもそも白ギツネとゆかりがあるらしく、そのためこの店名になっているようだ。200円を払えば、足湯に浸かりながらお茶が飲める。
私はスイーツを頼んだ。

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そしてここから次の目的地までのバスを、お店の人に聞いた。
すると、最初はよくわからない様子だったが、レジのおばさまがなんとも丁寧に調べてくださり、バス停まで教えてくださった。さらに素敵で繊細なスイーツを作ってくれた男子は長身、イケメンだった。
(あまり私はイケメンって言わないのだけど、なかなかのイケメンだったと思う。イケメン好きのあなた、ぜひ行ってください)


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中原 中也がお気に入りだったマントと帽子に似たものが置いてあり、「なりきり」ができます。

瑠璃光寺へ


お店のおばさまが丁寧に教えてくださったおかげで、無事バスに乗り、県庁前で降り、そこから徒歩10分ほど歩くと、五重塔が見えてきた。


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おそらく5年以上ぶりの、瑠璃光寺。
山口県唯一の国宝らしい。


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ほとんど貸切状態で、よく見える場所に配置されているベンチに座り、ぼーっと五重塔を眺める。
秋の雲がゆっくりと流れていて、その白と、空の青さと五重塔が見事にバランスが取れている。
「世界はいつでも完璧だ」
という言葉を思い出す。
地球は本当に美しい。


雪舟庭へ


そして、最終目的地の雪舟庭に向かう。
正式名称は、常栄寺雪舟庭。
水墨画で有名な画僧雪舟が作ったと言われている日本庭園だ。

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以前はここで抹茶も飲めたのだが(有料)、最近は抹茶はふるまわれていない。
それも、観光客が減っているかららしい。
私は年に2回くらいはいつも訪れていて、その度に瞑想気分を味わっている。
人が少ないのは、経営的には大変だと思うが、個人としては貸切状態でありがたく、特等席で風の音と鳥の鳴き声だけを聞きながら、瞑想ができる。
そして、10月3日からは偶然にもあの坂本龍一氏が監修した「音」を聴きながら、瞑想ができる。(と言っても、私が勝手にやっているだけだが)

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私も管理の人しかいない、庭が一番よく見える席に座り、座禅を組み、目を閉じた。
無になることが大事なのだと思うが、確かに無になった瞬間があった。
そうすると、「わかる」のだ。
頭ではなくて、メッセージが届く感じだ。
詳しくは書かないが、明らかに私は一つの決断ができたし、「自分を信じること」というメッセージをもらったし、決断した直後にフワーっと大きな風が吹いた。


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ずっと風が吹いているわけではない。
私が決断をしたり、私がメッセージを受信したな、と思った時に風が吹く。
ただの偶然だという人もいるかもしれないが、誰もいない、特等席での瞑想ではおそらく私が主人公だったのだろうと、勝手に思っている。

時間にして10分ほどだっただろう。

決めたというより、決まった後、庭を一周した。


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ふと見たチラシに「雪舟庭」への寄付について書かれていた。
「ここがなくなったら困る」
私は咄嗟に思い、帰りに5,000円の寄付をして帰った。
いわば年パスのようなものだ。
入場料は300円だから、相当通わないと元は取れないが、あの瞑想の時間に感謝して、
瞑想セミナーに参加したと思えば、5000円があの庭の役に立つのであれば、と思って喜んで払ってきた。
こんなお金の使い方ができるのも、ありがたい。


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画像24帰りに、駅でお土産を買った。
山口にいかなければなかなか買えないものばかりだ。



平日のプチ旅は、天気を前日にチェックして決めた気まま旅だったけど、思いがけない収穫を得た。
まるで自分が生まれ変わった感じ。

中原中也記念館で彼の詩を最初に読んだ時、
「ああ、私は世俗にまみれてしまっている。もっと振り落とさなきゃ」と瞬時に思ったし、雪舟庭では自分を信じようと思った。

こんな気づきが得られる旅になるなんて全く予想もしていなかったのだけど、やっぱり全ては仕組まれていて、こうなっていたんだな、と今は思う。

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旅好きな人はもちろん、旅があまり好きでは無い人も、一時的にでも環境を変える手っ取り早い方法が旅だ。

環境が変わると、人は感じることが変わるのだから。

山口県の人たちの県民性


そして、違う場所に行くとその土地の人たちの県民性がわかる。
バスに乗っていた時、停留所でバスに乗ってきた老女性の後ろから「このバスは○○には行きますか」と聞いていた別の中年女性がいた。
運転手には聞こえておらず、先に乗った老女性が「多分行くと思うけど、聞いてみるね」と言って、運転手に尋ねると「行きますよ」という返事が返ってきて、その老女性はわざわざ中年女性に伝えに行き、中年女性はお礼を言ってバスに乗り込んだ。

こんなことが、都会であるだろうか。
本当にみんな優しくて、涙が出そうだった。

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癒され
温かさに包まれ
メッセージを受け取り
私のこれからが決まった。

新しい自分と出会うかもしれない旅。

おすすめです。

山口、おすすめです。


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