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フランスの医療システム:総合病院と救急外来

フランスの医療システムシリ-ズの最後は、総合病院と救急外来についてです。
日本で体調が悪くなったら、一般開業医の先生のところに行ってもいいし、近所の総合病院に行くこともありますよね。
大きな総合病院は、紹介状がないと受け付けていないことが多いですが。

フランスで、総合病院を訪れる際は、救急外来、もしくは、かかりつけ医からの紹介による高度もしくは専門医療受診のどちらかのケースです。
手術や入院を伴うような治療ですね。
日本ではよくある中規模の総合病院を、私はまだみたことがありません。
開業医と検査技師が何人か集まって、共同で大きなキャビネを運営してることはありますが。
最初のステップは、Médecin généralisteという一般開業医のかかりつけ医に行くことは、もう前にお話ししたとおり。
もちろん緊急の際は、日本と同じく、救急車を呼ぶか、救急外来を受診します。

今回の新型コロナウイルスの対応に関しては、かかりつけ医編でも触れましたが、まさにこのシステムに則った対応といえます。
まず、不安があったら、かかりつけ医のリモート診療、そして、まだ治療薬がないので基本的には自宅待機、もし呼吸に問題が起きたら救急車。
あまりの白黒ハッキリした対応に、ちょっと驚きがありました。
「まだ治療薬がないから軽症者は自宅待機」という発想は非常に合理的ですが、東京都が軽症者にホテルを用意しているという対応と比べると、正直ちょっと冷たいなぁという印象も。

良い点は、最初の相談窓口が、リモートとはいえ自分のかかりつけ医に相談できるので、いつも診てもらっているお医者さんであるという安心感、かつ、問い合わせ先が分散されるので窓口の負担も軽くなります。
もちろん、政府の相談窓口もありますが、医学的アドバイスを提供する権限はないので、医師に連絡するように記されています。
日本では、保健所が相談窓口として一括で管理しているので、多くの相談が集中して電話がつながらないという問題があるそうですが…。

では、一般的な医療システムの話に戻ります。
救急外来にいくほどの緊急性はなさそうだけれど、悠長に予約している余裕もない場合はどうするの?という疑問がわきますよね。
例えば、骨が折れているかもしれないとか、こどもが頭をぶつけて心配とか、日本であれば、翌日、念のために病院にいくレベルのもの、といいますか。

実は、これも全部、総合病院の救急外来で診てもらえます。
もちろん、なるべく一般開業医のところへ行くように推奨されていて、やみくもになんでも救急外来に行っていいというわけではありませんが。
例えば骨折の場合などは、町の検査所に行ってレントゲンをとったり、あちこち回らなければなければなりません。
総合病院の救急外来であれば、全て揃っているので、日本の病院のように、一か所で事が済みます。
その代わり、かなりの長時間待たされることを覚悟しなければなりません。

私が、今までフランスの救急外来にお世話になったのは、過去3回ほど。
色々やらかしちゃってます…。

1回目は、運転していた車のエアバッグが誤作動で開いてしまい、その衝撃で胸を強打したとき。
あまりの破裂音で耳もおかしくなりました。
エアバッグが開くときって、シートベルトが高速で巻き取られるんですね。
その摩擦で、首元にシートベルトの跡がガッツリつきました。
車体は全くの無傷なのに、ダッシュボードとハンドルはエアバッグが作動したせいで、裂けて無残な姿に…。
後から車を調べて分かったことは、車のおなか(裏面?)を擦った跡があり、時差で破裂したのだろうとのこと。怖ーい!
念のために、日中に救急外来に行ったところ、そこまで人はいなくてスムーズに診察が終わりました。

2回目は、妊娠初期に会社に行こうとして、自宅の玄関出たところの階段から落ちて、出血したとき。
階段から落ちた直後はなんともなかったので、普通に会社に行ったのです。
会社では、出勤中のケガは労災になるかも、ということで、上司がフォーマットに記載。
目撃者の有無、落ちた段数や、階段の素材まで聞かれました。
少し納得いかなかったのが、自宅の建物の玄関を出たところであれば労災対象、自宅の玄関を出ていても集合住宅の内階段であれば出勤前とみなされ、労災の対象にならないことでした。
私が落ちたのは、内階段。まぁ、補償の有無に発展するような大事ではなかったので、良いんですけどね。

その後、夜になって、大量の出血が…。
救急外来に行く前に念のため、いくつかの総合病院に電話したところ、軒並みお断り。
妊娠初期の妊婦をみれる救急外来は非常に限られている、とのこと。
やっと診てくれるところを見つけて、到着したのは夜22時。
そこから、診察されるまで薄暗い寒い待合室で待ち続けること8時間…。
朝の6時に診察を終えて、病院を後にしたのでした。
途中で何度も帰ろうとしたのですが、「ちゃんと見てもらわなきゃダメ!」と看護師さんに引き留められ。
結果は、階段から落ちたことは関係なく、「たまたま子宮内のデキモノが取れたんじゃないか」という診断。
胎児には全く問題なく、その子は今元気な2歳児です。
このとき、私は心に決めました。救急外来は、夜間に行くべきではない!
この時の経験が、後々起こる3回目に悪影響を及ぼすことになるのです…。

3回目の救急外来は、飲み会中に牡蠣を開けようとして、手が滑り、ナイフで手をザックリしてしまったとき。
牡蠣に合わせて白ワインを飲んでいたので、血の巡りもよく、なかなかの出血。
日曜の夜に友達と楽しく飲んでいたこともあり、めんどくさいなーという気持ちと、きっと混雑しているであろう、という前回の経験を踏まえ、翌朝行くことに。
救急の受付で、前日に牡蠣を開けようとして手を切った、といったら、最優先で診てもらえました。

まず最初に聞かれたのが、ワクチンを打っているかどうか。
何のワクチンか答えられずにいるうちに、その場で血を抜かれて、抗体があることが判明。
それなら大丈夫ということで、そこから私への優先度が下がったのを感じました。
そういえば、心配性な私はフランスに来る前に、打てるだけのワクチンを打ちまくってから来たのでした。
どんな辺境の地に行くのかというレベルで。
そのとき打ったもののどれかが効いたのでしょう。備えあれば憂いなし!

そういったわけで、牡蠣には感染症のリスクがあるので、手を切ったら6時間以内に救急に来なければならなかったとのこと。
「なぜこんなに遅くに来たのか」と、受付、看護師、医師、検査技師、人が代わる度に何度も聞かれました。
まさか、飲み会中でめんどくさかった、混んでるのを待つのが嫌だったとはいえず…。
「もう時間が経ちすぎているので、本当はもう縫えないんだけど、今回は特別だよ!」と、謎のサービスで二針縫っていただきました。

その後、傷の経過確認と抜糸は、街中にキャビネを構えるフリ-の看護師さんに診ていただきました。
抜糸した後に貼る絆創膏、コットンは薬局で引き取り。
このときの看護師さんへの処置の指示書、絆創膏とコットンは、救急外来で処方されたものです。
この処方箋があれば、どこでも引き続き、治療を受けられるというのは便利でした。

この3つのケース、日本では救急にいくレベルではないですよね?
フランスにおいて「救急」の範囲は、日本より広い印象です。
少なくとも私の経験上、「こんなんで、なんで救急にきたの?」と言われたことはなかったです。
「もっと早く来なさい」とは言われましたが…。

フランスの医療システムとして、かかりつけ医検査所薬局、そして総合病院と救急外来の、4回に分けて書いてみました。
フランスの医療システムシリーズとして、こちらにまとめてあります。
はじめは日本と全く異なるシステムに戸惑うことも多かったのですが、最近になって良い点、興味深い点が見えてきたので、ぜひ多くの方にお伝えしたいと思いました。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

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