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フランスの保育園に入園!子どもを安心させる秘訣

ある日、仕事中、保育園から私の携帯に電話がかかってきてしまいました。慌てて出ると「ずっと泣き止まずに、ご飯も何も食べないので、早めに迎えに来ていただけないでしょうか」と。あんな食いしん坊の娘が、食べないというのはかなりのストレスだと感じ、慌てて迎えに行くことに。
娘は保育ママのタタさんとお別れをし、9月の新学期から保育園に通い始めました。夏休み前に試しで通っていたときは、全然平気だったのに、休み明けは毎朝号泣。「ほいくえんいやだ。タタさんちいく」と言い続けていました。

子ども扱いせずにキチンと説明

職場で動揺していた私に、同僚のひとりが「なんで、保育ママさんじゃなくて、保育園にいくことになったか、ちゃんと子どもに説明した?」と聞いてきました。「在宅勤務が増えて、家から遠い保育ママさんちへの送り迎えの負担が大きかったこと。そろそろ、たくさんのお友達と一緒に遊ぶようになった方が良いと思ったこと。保育園の方が保育料安くて助かる、っていう話だってしていいと思うよ」というのです。
2歳半の子にそんなことはわからないと思い込み、タタさんちにはもう行かないという話以外は特にしてきませんでした。

保育園に着くと、私の顔をみた途端、ニッコニコ。先生たちは呼び出した手前、この機嫌の良さに気まずさを感じたのか「さっきまでは、本当に大変で…」と。その後、説明の時間をとってくれました。

保育園に一緒に通う「お友達」を忘れた…

実は、この日、私は重大なミスを犯していました。それは娘の「お友達」を家に置いてきてしまったこと。フランスの保育園では、一番お気に入りにのぬいぐるみを「お友達」として連れてくるようにいわれます。娘が選んだ保育園に一緒に通う「お友達」はバイキンマン。

「これはバイキンといって悪者なんですけど、正義のヒーローは、アンコが入ったパンで、このバイキンはパンを腐らせようとする存在なんです」と、保育園初日に私のバイキンマンの説明を熱心にメモをしていた保育園の先生。アンパンマンの説明はアンパンでは通じないので、「brioche aux haricots rouges」と説明しています。日本の菓子パンのような柔らかいパンはbrioche(ブリオッシュ)といい、そこにharicots rouges(小豆)が入っているという説明になります。もちろん、先生はうなずきつつも、不思議そうな顔をしていました。

この日は、その大事なお友達、バイキンマンを家に忘れてきてしまったのです。先生からはそのせいだといわんばかりに注意されてしまいました…。

お母さんの匂いで安心する

先生は、保育園に慣れるまでの期間は特別に、好きなオモチャをなんでも持ってきても良いことと、お母さんの匂いのついたTシャツを持ってくること、という提案をしてくれました。そういえば、産後に赤ちゃんが泣いたときには、お母さんの匂いを嗅がせるために、母子ともに裸で抱き合うpeau à peau(ポー・ア・ポー)という肌と肌のふれあいが奨励されていました。私は真冬の出産ということもあり、面倒臭さが勝ってしまい、ほとんどしませんでしたが、動物みたいだな、と思ったものです。

半信半疑で、出産時に着ていた思い出のTシャツを、私が一晩パジャマ代わりに着て、翌朝、娘に「保育園にもってく? オモチャも好きなの持ってきて良いよ、って先生いってたね」というと、「うんっ!」と力強いお返事。どこからか使ったことのないリュックサックを出してきて、お気に入りのオモチャの荷造りをはじめました。バイキンマン以外、全てバーガーキングのキッズメニューのおまけですが…。

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「保育園の先生にみせにいこうかー?」と聞くと、意気揚々と靴を履き始めるではありませんか。車に乗り込むと「アンパンマンかけて」とのリクエスト。アマゾンプライムのアンパンマンソングプレイリストをかけつつの登園です。同僚にいわれたアドバイスどおり、少し難しい話もしてみました。すると「ほいくえんいく。ママ、おしごとがんばってね」と理解した様子。
保育園に着くと、半べそかきつつではありましたが、ちゃんと自ら先生と一緒にドアを閉めてくれました。Tシャツも効果があったようで、泣いたときに渡すと安心して泣き止み、お昼寝のときにも持って寝ているそうです。働く女性が多く、預けることが一般的になっている国なだけに、そういったアイデアが色々あるものだと感心しました。

子どもが変化を実感するのには時間がかかる

そもそもなぜ、初めの一週間は大丈夫だったのに、その後、難しくなったのかを考えてみました。
まず、夏休み前のクラスにはモロッコ出身の先生がいて、アルジェリア出身のタタさんと雰囲気がとても似ていたのです。二ヶ国語で育つ難しさを自分も経験してきたということで、つきっきりでみてくれていました。町中で、タタさんに似ている人とすれ違うと「タタさんちいきたい…」と呟くほどのタタさんファンの娘です。似ているというだけで安心感があったのでしょう。
また、保育園の先生曰く、子ども自身が保育園にくるのは新しい日常であると実感したときにも、難しい時期を迎えるといっていました。初めてきた一時的に楽しい場所から、毎日来るようになると思うとまた違った感情が湧くのでしょう。このアドバイスをしてくれた先生は、子どもを受け入れる際の順応プロセスに関するスペシャリストだそうです。

保育園の朝晩の申し送りはとてもとても丁寧なもので、10分以上かけてくれることも。そして、コロナ禍の今、教室に入ることができる保護者は最大2人なので、廊下に列ができてしまいます。後に人が待っていても、気にしない、気にしなくても良い、という文化のフランスなので、どの親たちも思い思いに先生に自分の子どもの様子を語ります。新学期ということもあり、親子共々不安に思う気持ちが、申し送りの時間を長くしていきます。でも、その待ち時間に、他の子達がどのように親とお別れをしているのかを観察することができました。

毎朝のお見送りの儀式

「んじゃ、そろそろお母さん行くから、ドア閉めてくれる?」と、母親が子どもに声をかけます。すると子どもはもちろんイヤイヤ。すると先生が「お手伝いいる?」と聞きます。「うん」と返事をした子どもは、先生に抱っこされて、ドアを一緒に閉めるのです。ひとりで閉められる子もいます。その時は、先生たち大絶賛! 「すごいねー!ひとりでドア閉めれたねー!」というように。

ドアといえば、子どものために建てられた施設の細かい工夫に感動してしまいます。ドアノブは子どもが届かない高い位置についていて、ドアのヒンジの部分は手を挟まないようにプラスチックのカバーがついていたり、挟んでも痛くないゴム製になっています。

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オートバイ隊入隊!?

娘の保育園はフランス軍の敷地内にあり、半数の保護者がフランス軍所属です。クラスの名前も、さくら組、ひまわり組といった可愛いものではなく、パイロット隊、騎馬隊というようなカッコいいもの。ちなみに娘はオートバイ隊です。クラスは男の子10人に対して、女の子が4人という逆ハーレム状態。軍関係者は、Y染色体が強いのでしょうか…。女の子達はいつも一緒に仲良く遊んでいるそうです。お友達といえる存在ができたみたいで、嬉しい限り。

通いはじめてここ数日の娘の変化は本当めまぐるしいものです。お迎えにいった直後は、脳が混乱するようで、何語ともつかない言葉を喋り始めるのですが、しばらくするとちゃんとした日本語に切り替わります。
動物の語彙は着々と増えており、ためしに私が絵本を示して「これはフランス語でなんていうの?」と聞くと、娘の知らない単語の場合は、わざわざ先生のところまで絵本を持っていって、教えてもらってくるようになりました。

朝、保育園に行くのを嫌がっているとき「今日も新しい動物の名前を教えてね」とお願いすると、行く気満々に。2歳児にも、ちゃんとした説明は必要だし、お願い事をすれば責任感でやる気を出すものだと知りました。保育ママさんから保育園へ切り替えることに長らく悩んでいましたが、母子共に、新しい環境でのは学びが多く、変化を恐れてはダメだなと実感しているところです。

保育園に通う前の保育ママ、タタさんとのエピソードはこちらにあります。


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