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「ザ・ゴール」と制約理論を実践して制作課で生産性を上げた話

生産が間に合わない制作課

Webサイト制作をする制作課の管理者をし始めたとき、当時はデザインとコーティングは同じ人が行うのが基本でした。そのときの工数(作業時間)がデザイン1日、コーティング2~3日でした。つまり1サイトできあがるのに4日かかります。

実際は、お客様の確認に数日かかりますしライティングの原稿待ちもあるので実際にサイトが出来上がるのは2ヶ月くらいかかります。

お客様の待ち時間などを無視したとしてサイト制作には4日かかるので1人で作れる量は1カ月に5サイトが限界でした。20営業日換算。

当時は受注が多くて1人が月に5サイト制作しても間に合わない状態でした。徹夜したり休日出勤したりしないと間に合いませんでした

負のループ....

無理をして制作を続けるから当然クオリティも下がります。デザインのリテイクは増えるしコーティングでもミスが増えます。やり直しがおきて、余計な工数がかかりさらに生産性は下がり、さらに徹夜したり納期遅延によるトラブルが発生することになります。

働くスタッフのモチベーションも下がります。辞める人も出てきます。辞められると困るのでなんとか面談で引き止めたりします。面談の時間は制作してないので生産性はさらに下がります。

面談しても結局は人が辞めていきます。人が足りないので採用します。面接に時間をとられます。通常業務が減るわけではないし人は減ってる状態なのでむしろ増えてるところに、面接時間がプラスされます。激務です。地獄のような日々でした。

そして、採用したら教育しないといけない。教える時間が発生して生産性がさらに下がり先輩スタッフに負担が増えます。結果としてまた人が辞めたりします。

負のループです。

努力しても評価が下がっていく

会社としては納品しないいけないため、社内の制作で間に合わないのであれば、外注化します。
外注化することで制作課の負担は減りますが、制作課の存在価値も減ります。存在価値が無ければお給料も増えないし、面白い仕事も依頼されなくなります。

あれだけ激務に耐えて擦り減って頑張ってきたのに、結果として価値がないと思われたら報われなさすぎです。

このときに、全てを放棄して辞めてもようと思った。
ただ、それだと、本当にいままでの頑張りの意味がなくなってしまう気がしたので、どうにかならないかを考えました。正直、何度も辞めようと思った。

ビジネス小説「ザ・ゴール」と制約理論(TOC theory of constraints)

その時に読んだ本が「ザ・ゴール」。生産性を上げるのに必要な制約理論(TOC theory of constraints)という概念を小説で学べる本です。この内容がまさに、自分が置かれてる状況と同じでした。

本を参考にしてボトルネックとなっているところはどこか?スループットを改善するためにどうすればいいのか?を考えました。

結論として作業時間が3日必要なコーティングだけ外注化することにしました。

制作課のスタッフは、デザインのみ作業すればよいので工数は1日だけです。つまり月間20営業日あれば20サイト分のデザインができます。同時作業で外注がコーディングしてくれるので月間で最大20サイト分の生産性になりました。

それまでが5サイトだったので、単純計算で最大で4倍に生産性が上がりました。※実際はもう少し下がりますが。

デザインよりコーディングのほうが作業時間が長いという理由以外にもコーディングを外注化した理由があと2つあります。

①コーディングは日本人でなくてもできる

デザインは日本人の色彩感覚など微妙なニュアンスをつかむ必要があるので、お客様と近いスタッフが対応したほうが品質がよいです。しかし、コーディングはどこの国でも対応できる。だから海外の制作会社に依頼することにしました。しかも海外にコーディング依頼することで日本の制作会社に依頼するよりコストダウンも実現できました。

②コーディングの品質で文句は言われない

制作者以外の人はコーティングの品質はわからないです。受注してきた営業や、当時のディレクターは、ソースコードの良し悪しは分からないけど、デザインには意見をしてきます。つまりデザインの品質を上げるほうが、制作課の存在価値をあげるにはわかりやすかった。
そして当時の制作課はデザインをするほうが好きな人が多かった。デザインに集中させることで制作者のモチベーションも上がるし、品質も上がっていった。結果として外注へ依頼するよりも社内の制作者に依頼したいという声が多くなりました。

コーディングの品質はガイドラインを明確に作って一定の品質は担保しておきました。品質の良くないコーディングは運用時の修正のときに困るので整備しておくことは後々楽になる。

正のループ

4倍に生産性を上げる必要もなかったので、今まで1日で作業していたデザインを2日にしました。結果的にデザインの品質も上がりました。
デザインは時間をかければいいものができるわけではないですが、短すぎた制作時間を正常に戻した。その結果、品質は上がりました。デザイン以外にも新しい技術を学ぶ余裕もできて、制作者たちも自主的に色々なスキルを身につけていってくれました。そのスキルを売りにして新しい仕事を受けたりと健全な正のループに入ることができた。

余裕がでてきてスタッフの多くが健全な働き方ができるようになれた。個人的にもだいぶ達成感はありました。

まとめ

生産性を上げて売上を作ることで本来の制作課の価値を出す。
デザインの品質を上げて市場優位性を保つ(外の制作会社に勝てる品質を出す)。
デザインに集中できる環境にすることで、デザインをやりたかった制作者のニーズに応える(従業員満足度向上)。

制約理論を活用することで制作課の組織を改善できました。生産管理業務をしている人にはいつも「ザ・ゴール」はおススメするようにしてます。

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