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今月書いた短編を軽く振り返る【5月編】
バイト帰りの奇妙な出来事
《あらすじ》まだ冷たさが残る3月の夜、大学生の僕はバイト帰りの道を自転車で走っていた。
すると、前方から子供たちのはしゃぎ声が聞こえる。こんな時間、こんな季節に、川遊びをしているらしい。
彼らの傍まで近寄って、自転車のライトで照らしてみると、見てはいけない光景がそこには広がっていた。彼らは生きた人間ではなかったのだ。
ジャンルとしては、いわゆる怪奇に該当する作品。
大学生のバイト帰りというのは基本的に遅い時間帯であり、帰り道に何か得体の知れない存在と遭遇する可能性がある時間帯でもあるかもしれない。
自分自身、実際にバイト帰りの夜に、ふと太鼓の音が聞こえたことがあった。
そんな奇妙な実体験を基に、この作品は書かれているのだろう。
そして夜に太鼓の音を聞いたという経験は、『テスト前夜の調査』という短編作品に生かされることになる。
猫と人間
《あらすじ》午後二時半、町を歩いていると、突然猫に話しかけられた。
「猫になる呪いをかけられたの」と彼女は言った。
彼女はかつて人間で、アンティークショップの〈貴婦人〉によって猫の姿に変えられてしまったらしい。
どうして〈貴婦人〉は彼女に呪いをかけたのか? どうやら彼女は何かを隠しているようだ。言いたくない過去があるのだろうか。
僕と彼女は『猫になる呪い』を解いてもらうために、江ノ島電鉄に乗って、由比ヶ浜にいる〈貴婦人〉に会いにいく。
普段から自転車を走らせていると、必ずと言っていいほど道端で野良猫を見かける。
自分は猫の中でも特に、人に飼われていない『野良猫』が好きで、そんな野良猫にまつわる話を書きたいと思った。
そして江ノ電も好きで、登場人物をそれに乗車させたいと思ったので、舞台は自然と鎌倉に決まった。
きっと、猫と一緒に電車に乗るというシーンは『耳をすませば』から影響を受けていて、人間が猫になるという設定は『猫の恩返し』から着想を得ていると思う。
そう考えると、この作品はジブリから色濃く影響されているようだ。
ちなみに、自分が一番好きなジブリ作品は『魔女の宅急便』である。
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テスト前夜の調査
《あらすじ》高校生の八木は、明日から始まる期末テストに向けて徹夜で勉強をしていた。
すると、窓の外から祭囃子が聞こえていることに気づいた。
時刻は真夜中だ。こんな時間にそんな演奏が聞こえてくるのは、どう考えても不自然だ。
近所に住むクラスメイトの田中も同じことを考えたようで、八木に電話をかけてきた。
こうして、八木と田中は祭囃子の正体を探るべく、夜の町に繰り出すことになる。
夜の海辺の町を舞台に、2人の男子高校生が謎を突き止めるために調査に出かけるというストーリー。
翌日に期末テストを控えているという設定が、ある種の焦燥感を演出していて、個人的に気に入っている。
大事な試験勉強をすっぽかしてでも、謎を説き明かしたいという彼らの切実さが滲み出ているのではないだろうか。
問題の祭囃子は、すぐ近くの山の中から聞こえている。
時間は真夜中。直感的に、絶対に行くべきではないとわかるはず。でも、2人は好奇心が勝って行ってしまう。
坂道がどれだけ長く、どれだけ急勾配でも、彼らの足は止まらないのだ。
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夜のハイウェイ
《あらすじ》午後9時半過ぎ、俺はアウディに乗って、真夏の夜の高速道路を走っていた。
明日から始まる盆休み。会社終わりの前日に、東京から地元の神戸に向かっているのだ。
そして、道中でまさかの心霊現象に遭遇することになる。
オレンジの照明の下、路側帯に白いワンピースの女が立っているのだ。その光景を、俺は1時間で合計14回目撃した。
パーキングエリアに車を停め、車内で缶コーヒーを飲んでいると、公衆トイレからあのワンピースの女が出てきた。
それも1人ではない。何人もの同じ女が、続々とトイレから姿を現している。
俺は急いで車を発進させ、やがて一般道へと降りた。
夜の高速道路を舞台に、何か怪談っぽい話を書きたいと思い、このようなストーリーが思いついた。
小学生の頃から『ほん怖』のような心霊番組が好きで、怖いながらもよく観ていたので、自然と恐怖感を演出するような設定や場面が思い浮かびやすくなっているのかもしれない。
心霊現象に遭っている際中の主人公が、気を紛らわすためにラジオのスイッチを入れた時、ちょうど怪談特集の番組が放送されていたというシーンが結構気に入っている。
恐怖と笑いというのは基本的には相容れないとは思うけど、このシーンは作品内で唯一のコミカルな感じに仕上がっている。
少年たちの秘密基地
《あらすじ》夏休み直前の7月、僕らは放課後の秘密基地で、今日実行したばかりの『計画』について感想を言い合っていた。
その名も『プリン計画』だ。僕ら5年2組の給食にだけ、こっそりとプッチンプリンを配膳するのだ。計画は見事に成功を収め、完全犯罪を成し遂げた-そう思っていた。
同じクラスの掛布美宇が、基地の外から僕らの会話を盗み聞きしていたのだ。
僕らに突如を訪れた危機。僕らはプリン計画のことを誰にも話さないことを条件に、掛布を仲間に迎え入れる。
そして僕は、密かに掛布に対して淡い恋心を抱いていた。
兵庫県加古川市の町に住む小学生たちが主人公の青春もの。
以前から、氷丘小学校の前にある『学校前』という店名の駄菓子屋を知っていて、2年前にボールペンで絵(この作品のサムネイルに使った)にも描いていた。
昭和っぽい懐かしい雰囲気の外観と、一風変わった店名に惹かれたんだと思う。
そして、この駄菓子屋を舞台にした小説を書いてみたいとも思った。
つまり、タイトルは『秘密基地』とあるものの、出発点は駄菓子屋なのだ。
時代は現代、令和4年の夏。登場人物はみんな関西弁で、阪神ファン。
自分自身、関西弁とは縁もゆかりもなくて、関西に住んでいる知り合いがいるわけでもなかった。
だから、台詞をいかに本物の関西弁っぽく書くかということにはかなり気を使ったし、よく使われる言葉や定型文をインターネットで調べたりもした。
関西の方はいわゆる『エセ関西弁』にはそれなりに嫌悪感を抱くらしいので、その辺りの言語的表現をいい加減にするわけにはいかなかったのだ。
しかし、実際に関西の方からすれば、間違いを指摘したくなるような台詞はきっとあるとは思うんだけど。
自分自身、YouTubeで習慣的に芸人のネタを観ていて、日頃から関西弁をリスニングしてはいた。
関西弁が出てくる漫画や小説、ドラマや映画を観たこともあった。
これまで受動的に触れてきた関西弁の知識を総動員して書いたのが、この作品である。
それにしても、関西弁の魔力というのは凄い。
標準語では表現できないコミカルな雰囲気が、関西弁では表現することができる。
会話が活き活きと弾み、登場人物の存在感がグッと強調される。
自然と、ボケとツッコミが成立するのだ。
舞台が兵庫じゃなかったら、全然違う種類の作品になっていたと思う。
それくらい、言語とは思考や行動に強い影響を与える要素を持っているのではないだろうか。
そう思わずにはいられない。
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